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爆弾
攻めあぐねる一。
しかし、意外なところから、その勝機を手繰り寄せることになる。
「よし!しゃがんで、兄さん!」
「……!」
声に反応し、姿勢を低くすると"矢"が怪物の眼球を打ち抜いた。
「!?ーーーー」
「よし、狙い通り!」
それは矢というには粗末な、周辺の枝を削って作った即席の細い杭だった。
しかし、ピンポイントで眼を打ち抜いたのだ。
その痛みからか、怪物は叫んだ。
(!今……か!)
一は跳躍し、その開いた口に右手を叩き込んだ。
「『ファイアボール』ッッッ!!」
その喉奥へと押し込まれる火球。
「『ファイアボール』!『ファイアボール』!!『ファイアボール』!!!」
一は容赦なく連続して撃ち込んだ。
「ーー…………」
一は不穏なものを感じ、咄嗟に飛び退いた。
そして、次の瞬間、怪物は爆ぜた。
『?????を倒した!』
「やった……?」
怪物はその原型を留められず、黒い肉塊へと変貌していた。
「し、仕留めた!あの怪物を!」
「……」
思わず自らの右手を見る一、火の粉で煤けた掌が勲章のようだった。