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限界点
一は影に背を向け、怪物の方に向き直った。
「っ!」
今まさに、抑えきれなかった蘭堂が怪物に接近を許し、襲われようとしていた。
「『ファイアボール』!」
その怪物の背に火球を叩き込んだ。
「ーーーー!?」
よろつく、怪物。
その間に蘭堂は距離を取った。
怪物は不機嫌そうに一の方に振り向いた。
「『突拳』っ!!」
その鼻っ柱に拳を叩き込んだ。
怪物の巨体が地面に倒れた。
「随分と余裕じゃないか!悪いが、こっちは徹底的にいくぞ」
一は火球を生成しながら、蘭堂を見た。
「集中砲火だ!起き上がらせるな!」
「あ……ああ!」
蘭堂の返答を皮切りに、火球と矢で何度も怪物を責め立てた。
「『ファイアボール』!『ファイアボール』!」
「うああああっ!」
怪物が起き上がらせないための猛攻。
しかし、限界はすぐき来た。
「……駄目だ!矢のストックがもうない!」
「っ!」
一はそれでも、手を止めなかった。
しかし、焦りがあった。
一の無尽蔵にも思えるMPであっても、いつかは尽きる有限。
これまでの活動で、消耗した分を考えれば、弾切れの時はそう遠くはなかった。