詰め将棋 後編
ずぶずぶと突き進む左足。
貫通してしまうのでは、と一が思った瞬間、ギリギリのところで進行は止まった。
「ーー」
ギギギと、影は反撃を試みようと一に手を伸ばした。
「っ!」
(違う!人間なら、こんなことにはならないはずだ。
こいつはーー人外だ)
「うらぁあああっ!」
突き刺さった左足を支点に右足を振り抜く。
放った右の蹴りは影の頭を叩き、その場に叩きつけた。
「!ーー!?」
影はその軟体を利用して、跳ねながら距離を取ろうとした。
しかし、その後退を一が先程放っていた『ファイアボール』が燃え広がり、壁のようにして立ち塞がった。
逃げれない影の頭に一は指を突きつけた。
「『アクアバレット』」
水の弾丸を撃ち込まれた影はその場に崩れ、のたうち回るようにしていた。
「……やっぱりな。
そのスライムみたいな身体……不純物として水を中に打ち込んでやれば、構成を維持出来なくなったか」
今なら、簡単にトドメがさせる。
「……」
だけど、一はそれをしなかった。出来なかった。
人間でない確信を得ながらも、その確信を本当に信じていいのか、万が一その確信が誤りであったら、取り返しがつかないと思ったからだ。