12/146
プロローグ:運命の決断は容易く行われた
「キロ単価で12万……」
とは言うものの、草の重さと採れる量を考えると1キロなんてとてもじゃないが、無理だろう。
「それをベースに量り売りで対応しますよ」
つまり、100グラムで1万2千円……植物の生えるスピードを考えると大量に採取するのは困難に思えるが、逆にそこはゲーム的なダンジョンだ。
時間経過で有用な素材は簡単に復活する。
(上手くいけば、大きく稼げる。余裕が生まれる……
いや、装備さえ揃えれば、初心者用ダンジョンの少し上でも活動出来るんじゃないか?
もしくは防具を買って生存率を上げれば、同じ方法で暫く稼げるかも知れない。
最初さえどうにか乗り越えられたなら……)
時として、人は危険なギャンブルに挑む。
一の心境はまさにそれであった。
上級ダンジョンなど、今の一には死ににいくようなものだ。
それでも、イチかバチかパンテナ草を回収して戻れれば、大きなリターンが待っている。
「……教えていただき、ありがとうございます」
「あ、はい」
一は笑顔を作っていた。
それが、死にに行く者の笑みだということを、知っているのは彼だけだった。