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ダブル
しかし、ヒントはある。
蘭堂の妹をトレースしたその影はナイフを装備している以上、近接型のいずれかであることが予想出来る。
(最も……必ずしも妹さんと同じ戦い方をするとは限らないが……)
「……」
一は一呼吸して、視線を外さないよう注視しながら、両手に意識を向ける。
両手にそれぞれ生成される火の玉。
片手毎に魔法を生成すること自体は不可能なことではない。
一には余り関係ない難点として、その分余計にMPを消費するのと、
一に関係ある難点として、同時並行で魔法を行使する分、
コントロールが難しいことが挙げられる。
初めてやることではあったが、なんとか一はコントロール出来ていた。
相手の出方がわからない以上、すぐに使える手数は多い方がいい。
「……どうした、来ないのか?」
一は効果があるのかわからないまま挑発をふっかける。
それで、影が自分から仕掛けてくれたら、すぐに迎撃に魔法を放てたが、影は一の方を向いたまま、固まっていた。
「……なら、こっちから行くぞ!」
一は右手を振りかぶった。