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許してはいけない失言
「くっ……だけど、アイツが!」
「アイツが……なんだ?"アンタが何を言うつもり"なんだ!」
「……!」
一は活を入れた。
そのままなら、蘭堂は妹を殺したから、瘴気が妹の形をしている、だとか、
アレは妹の成れの果てだとか、口走っていたかも知れない。
そうではないと、行動をしてきた一達にとって、
その言葉は完全に士気を下げる致命傷にもなりかねなかった。
「嫌な想像が浮かぶのはわからないでもないが……
"まだ何も決定的な何か"ではないだろ!」
「あ……ああ!」
蘭堂の目に光が戻った。
一はぐいっと、本来のポジションである後方に蘭堂を押し込むと、怪物と瘴気に対峙した。
瘴気は完全に実体を持っていた。
ナイフを持った軽装の女……そんな影に見えた。
怪物は合図を送るように右手をブンと振った。
「来る……!」
瘴気は指示に従うように、こちらへと迫ってきた。
(あの化け物と2対2で戦わないといけないのか!?
……せめて、元の1対2に……あの影を消さないと!)
「アーチャー!どうにか、弓矢の牽制であの化け物を抑えてくれ!
俺は……コイツをどうにかする!」