ショウキ
「!?」
瘴気は何かを模っていくーー
一の脳内に警報が鳴り響いた。
アレは碌でもないモノだ。
すぐに逃げるべきだ。
そうやって、本能が告げている。
なのに、目を離せない。
まるで魅入られているように、一たち二人をその場に縫い止めていた。
「あっ……ああっ!?」
そして、先に何かに気づいたのは蘭堂だった。
「り、稟!?」
「え……」
瘴気は確かに人の形へと変わっていた。
しかし、元は瘴気だ。
一には輪郭さえぼやけて見えていた。
「くっ……やっぱり……やっぱり、お前がっ!」
蘭堂は弓矢を抜き、前進した。
「!?馬鹿っ!アーチャーが前に出るなっ!」
一は、一さえ飛び越して前へ出ようとする蘭堂の首根っこを捕まえた。
「アイツが……アイツが、稟を……!」
一は瘴気に注視する。
だんだんと輪郭がはっきりしてきた。
なんとなくだが、一にも女性の影のようにも見えてきた。
(くそっ……何で、見入っていた?
……奴は無防備に見えていた……逃げるなり、仕掛けるなり出来たはずだ。
それに、アーチャーの正気を失っているかの行動……あの瘴気……見ているだけで、人を惑わす何かがあるのかも知れない)
「……だとしても、正気に戻れっ!
どんなに似ていても、アレは妹さんそのものじゃないだろっ!」