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笑顔
「なんなんだ、アレ……
いや、そもそもコイツはなんだ?」
一が距離を取るにつれて、怪物は巨躯をゆっくりと起き上がらせた。
(ダメージ表記がないから、効いてるのかも、わからない。
出てきた時にメッセージウインドウが出たってことはモンスターなんだろうけど……)
「兄さんよ!隙をみて逃げたほうがいい!
あんだけやって、ダメージが通ってるかもわからん。
なら、倒せるって確証もないんだ、だから……」
「まぁ、そうだろうな……」
と、一は適度に距離を取ると怪物を見据えた。
目が合った。
怪物の口が動く。
不気味だった。
まるで、笑っているように見えた。
「……」
(笑うってのは高度な感情表現だと聞いたことがある。
それこそ、人間特有のモノなのかも知れない……
だが、奴は笑った……?
アレに似た熊が笑うなんて見たことがない。
モンスターが笑うのか?
……いや、そもそも、笑うとしたら何故笑う?」
一の疑問、その答えなのか怪物は右腕を突き出した。
まるで手のひらを突き出すようにーー
すると、その手のひらから黒い瘴気が溢れ出した。