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非常識な相手
「来ないのか?なら……」
一は右手に火球を生成する。
未知の相手だ。
牽制の意味でも接近するより、まずは魔法から入るというのが一の判断だ。
「『ファイアボール』っ!」
火球は真っ直ぐにソレの額を打ち抜かんとした寸前に突如現れたツタによって防がれた。
「!」
そのツタは熊のようなソレの背中から、急に生えてきていた。
表面を少し焦がした程度で、ソレが操るだけの機能は充分に生きているように見えた。
「……おいおい、草木が火に弱いってのは常識じゃないのか?」
(いや、それよりもダメージ表記がない!?防がれたからダメージにもならないってことか?それとも……)
「ーー!」
ソレの声、咆哮だったのだろうか?
何か音を発したソレは、一に迫って来た。
(速い!しかし、これくらいなら!)
一はソレが振り抜いた右手の爪をバックステップで避けようとした。
「フェイントだ!それはっ!!」
「!」
飛び退こうとした後方へと、ツタが薙ぎ払わんとしなった。
逃げ場はない。
「っーー野郎ぉっ!」
故に、一は右足で強引に逆方向へと蹴ることで、正面からソレに突っ込んでいった。