プロローグ:危険な儲け話
「ええ、そうですよ」
ミダスの森は上級ダンジョン”一般”の推奨レベルは65以上を目安としている。
もちろん、これはあくまで目安であり、成長タイプによっては低いレベルでも対応できるため、
そこに制限はかかっていない。
要は入るだけなら、レベル1の一にも可能だということだ。
(ミダスの森に入るなんて、自殺行為だ……
でも、自生している草を採るだけなら、モンスターと戦う必要はない)
「これ、いくらで買取るんですか?」
「……?」
女店員は完全に疑い目を向けていた。
当然と言えば、当然だ。
初級ダンジョンの素材ばかりを売ってくる人間が上級ダンジョンの情報を聞いてくるのだから。
しかし、だからと言って、彼女は答えない訳にもいかなかった。
今までがそうであっても、彼女は一の実力を知らないのだから、
一が無謀なことを言っていたのだとしても、それを証明する方法はなく、
また、それを言わないことで、あとあと不都合が降りかかる可能性はあるが、
言ったところで、一が無謀なことをして死んだとしても、そこに彼女の責任はない。
だから、女店員は正直に答えた。
「今のパンテナ草の相場は1キロ当たり10万円です。
ただ、買取強化でそれに上乗せしてうちは12万円出します」