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騒がしい夜
幸いにも、もはや『ミダスの森』のモンスターは一が万全ならば負けることはない相手だ。
蘭堂達がエンカウントした謎のモンスターは気になるが、それ以外の相手なら問題ない。
だからーー
「もっと、騒がしくてもいい」
「え?」
「蘭堂さん、妹さんの名前を呼んでください」
「!」
ダンジョンで不用意にモンスターを呼ぶのは自殺行為だ。
いくら格下の相手と言えど、数の暴力で押し潰される可能性はある。
だからこそ、今、一がやってるのは普通なら有り得ない行動だ。
しかし、一は現にほぼ1発でモンスターを沈めているから、波のようにモンスターが押し寄せない限りは押し潰されることはないだろう。
捜索と言う観点で見ても、名前を呼ぶのは効果的だろう。
蘭堂には、常識からの逸脱が求められていた。
「……」
蘭堂は思いつめた顔をしたかと思うと、ゆっくりと頷いた。
「稟ーっ!ここだーっ!ここにいるぞーっ!」
それで、蘭堂も吹っ切れたのか馬鹿になった。
ただ、そのまま何もしないより、ずっとマシだった。