バカになる
「『吸血コウモリ』……夜行性のモンスターが活動するようになってきたんだ」
「……」
「それだけ夜に近づいたということだ、兄さん、構わず行ってくれ」
「……」
一は構わず、燃えている吸血コウモリを見ていた。
「兄さん?」
「……こちらから探すのは無理でも、相手に見つけてもらえばいいんじゃないか?」
「えっ?」
「もちろん、向こうが動ける状態って前提ですが、
目立つ行動を起こせば、助けを求めにこちらに向かってくるかも知れません」
「目立つ行動って、何を……」
「日が落ちたのなら、逆に明るくすれば目立つ……」
と、一は掌を上に向けて『ファイアボール』を作った。
「つまりは、火です」
ーーーー
「『ファイアボール』!『ファイアボール』!!『ファイアボール』!!!」
「お、おお……」
一の無尽蔵にあるMPが役に立った。
木の枝を松明にし、モンスターを『ファイアボール』だけで処理し、時には空に向けて撃ってみたりして、痕跡を残しながら森を進んだ。
他の同業者なら、まずやらない馬鹿みたいな方法だと一は思っていた。
しかし、馬鹿みたいなMPを持つ一にとっては結構いい方法だとも思っていた。