時間事情
故にダンジョン攻略にはシンプルな腕時計が好まれる。
それも、なるべく安価なものが、だ。
何故なら、いくら高価で頑丈な腕時計であっても、モンスターとの戦闘になれば簡単に壊れてしまうからだ。
一部、自分の財力や自分はモンスターと戦っても時計を壊されない自信がある者達がアピールのためにつけていることもおるが、基本的にはある程度動いても大丈夫なレベルの腕時計を壊れるたびに買い換える、というのが『世界と繋がった者』のやり方だった。
一はその事を知った上で、腕時計を買い替えるコストを節約するために、ダンジョン内で時間を確認することを諦めていた。
しかし、超極貧生活を脱出した今は、腕時計を買うのもアリだなと、蘭堂の時計を見ながら思い始めていた。
と、話が本題から逸れてしまった。
今、問題なのは日が落ちるとまずいと言うことだ。
暗いというのはそれだけ視界が狭くなる。
仮に蘭堂の妹が負傷を負うなどして、低い姿勢で身を潜めていたら、それだけで発見は困難になる。
まさか、モンスターのいるダンジョンで名前を呼びながら探せる訳もなく、近くにいても見落としてしまう危険性が出てくるのだ。