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プロローグ:矜持など持てやしない
ともかく一には、保護具のバンテージが多少ボロボロになった程度で買いかえるつもりはない。
それでも……
「今日の分は使い道が決まっているので、また今度お願いします」
一は再びの愛想として、そう返した。
「そう」
女店員に一の真意が伝わったかどうかはわからないが、そこで営業トークは切りあげられた。
一はプライドとしては真意は伝わってほしくはなかったが、
伝わっていないならいないで、同じ会話をまた繰り返すのも嫌だなと感じた。
嫌な気持ちを抱いたまま、ギルドを出ようとした時、
出入り口近くの張り紙が目にとまった。
『急募・パンテナ草高価買取します』
子供の頃の一はダンジョンに潜ることを夢見ていた。
だから、当時あった資料を眺めながら、まだ見ぬ冒険を夢見ていた時期もあった。
その幼少の頃の記憶にパンテナ草の情報があった。
だが、何より高価買取の文字が頭から離れなかったのが正直なところだった。
思わず、振り返って、よそを向いていた女店員に声をかけた。
「あ、あの!パンテナ草って、ミダスの森に自生してる草ですよね!?」