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高次元世界で生きていく  作者: エポレジ
第1章 入学前
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5話 才能なし

 どんよりとした曇り空の下、広大な校舎を歩いてゆく。


 校舎の内部は全て繋がっているらしいが、迷うから外から行けと地図に書かれているのだ。迷宮かな?


「あった、この入り口だ」


 大きな扉を開け、地図に書かれていた入口から入る。

 廊下も広く、本当にお城みたいだ。


 午前10時半、教室にて試験スタート。

 必死に勉強を教えてくれた爺やさんに申し訳ないが、どれもさっぱり分からなかった。


 正午、爺やさんの持たせてくれたお弁当を食べて昼休憩。


 午後も残りの科目を消化し、学術試験が終わると今度は不思議なアンケートが配られた。その内容は『以下から好きな模様を選んでください』とか、『これらの動物はなんと言っているでしょうか』など、まるで心理テストだった。


 さらに40分の長い休憩を挟み、最後は面接。

 教室で自分が呼ばれるのを待つ。


「次、受験番号0810、九重糸さん」


「はい」


 別室へ連れて行かれる。

 面接官は凄そうなオーラをまとった男性だった。


「こんにちは」


「こんにちは……」


(……この子からはマナが見えない。マナは次元に通じるためのパワー、見えないということは圧倒的才能なしということか。学術試験の結果も壊滅的、心理テストの回答を見ても能力者として成長を見込めない。こんなクズを松蔭家からの推薦で入学させなければならないとはな)


「お疲れ様。以上で面接、および全ての試験は終わりです」


 男は笑顔で面接の終了を告げた。


「えっ、まだ何もしていませんが……」


「十分です。こちらをどうぞ」


 赤いカードが渡された。


「学生証兼、寮の部屋のカードキーです。九重くんの寮は南区域にある赤砂寮(あかずなりょう)です」


「ありがとうございます」


「入学式まではお休みです。また後日、寮に日程等の詳細を張り出しますので随時ご確認ください」


「分かりました」


 試験が終わり寮がある南区域へ向かっていると、正門で青髪ロングの少女が立っているのが目に入った。


「雪夜! もしかして俺を待っててくれたのか!?」


「別に。渡し忘れていたものがあっただけですわ」


 雪夜は俺に1万円を渡した。


「それでは」


「ちょ、ちょっと待ってくれよ!!」


 背を向けようとした雪夜を引き留めた。


「お金を貰えるのは感謝してるんだけどさ、さすがに1万円じゃ1カ月だって生活できねえよ!」


 本来、俺には半年は生きられるくらいのお小遣いが渡されているはずだった。


「貴方如きの人間が、何を贅沢言っていますの」


 それだけ言うと、雪夜はスタスタと南区域へ歩き始める。

 それについていき必死にお願いしたが、最後まで無視を貫かれた。


 そして、雪夜は青月館(せいげつかん)と書かれた高級ホテルのような寮の自動ドアを学生証で開け、中に入った。

 俺も一緒に中に入ろうとしたが……


 バシッ!! ドンッ!!!


 入り口の自動ドアの前で体を突き倒された。


 ウィーン


 自動ドアが閉まり、雪夜と隔たれる。

 雪夜は床に尻がついた俺を冷たい目で見下し、寮の中へと姿を消した。


「……俺も寮に帰ろう」


 どうしようもないので、俺はトボトボと赤砂寮へと歩き始めた。




 青月館からさらに南へ進むと、次は黄色い建物が見えてきた。


「『黄泉荘(よみそう)』……。赤砂寮じゃないな」


 ただ、その黄泉荘は少し青月館と比べると見劣りするというか、普通な印象だった。爺やさんは寮に階級があると言っていたが……まさかそんなに違うはずはないよな。


 黄泉荘からさらに南へ進むと、今度はたくさんのお店がある場所へ出た。


「スーパーがある。ちょっと寄っていこう……」


 俺はスーパーに寄り、半額のシールが貼られたおにぎりを1つ買い、さらに南へ向かった。


 今度は自然豊かな田舎道。建物の気配はなく、ひたすら草原が広がっている。その田舎道をずっと進んでいくと、最終的に道は森で行き止まりとなった。


 そしてそこにあったのは……


「え……」


 ボロボロの宿舎と、赤砂寮と書かれた腐りかけた木製の看板だった。


「いや……さすがに青月館と違いすぎないか……?」


 入り口は一応カードキー式の自動ドア。

 しかし、少し回り込めば鍵なしでも普通に入れる。


「セキュリティゆるゆるかよ!」


 もちろんエレベーターなどなく、上へあがる手段は階段のみ。

 しかも、俺の部屋は711号室。


「はあ……はあ……。毎日この階段を7階まで上り下りしなきゃいけないのか……」


 通路は屋外で、蜘蛛の巣やガの群れがちらほら見られた。

 704、705、706……あった、711号室。


 カチャ


 部屋の中にあったのは、小さいベッドと、今にも壊れそうなちゃぶだい。キッチンも狭く、風呂場には『お湯を使いすぎると水になります』の張り紙。


「これからここで過ごすなんて嘘だろ……。児童養護施設の方がよっぽどマシじゃないか!」


 嘆いていると、壁にドアがついているのに気付いた。


「良かった、流石にもうひと部屋あるか」


 ガチャ


 そこにあった……いや、いたのは……


「ぐすん……ぐすん……」


 泣いている赤髪の女の子だった。


「……あれ?」


「だっ、誰よアンタ、ここは私の部屋よ!! ぐすっ……」


「えっ! だって部屋の中に扉が……」


「そんな……この部屋はプライバシーも確保されてないわけ!? もう最悪!!」


 後に確認すると、どうやら工事の設計ミスで作られた扉がそのまま残っていただけらしい。


 つまり、俺の部屋はお隣さんと扉で繋がってしまっている。


「なあ、青月館ってとこはこんなんじゃなかったんだ。成績順で寮が決まるってのは聞いてたけど、どうしてここまでの格差があるんだ……? ここでは勉強がそんなに大事なのか……?」


「……勉強だけじゃないわ。成績っていうのは能力者適正も含まれるの。アンケートと最後の面接で私達の能力者適正が見極められたわ。そしてその結果、私達は最底の評価を受けた。私はお兄ちゃんみたいな超能力者になりたかったのに……青月館に行きたかったのに……私には才能無いんだ……うわあああああああん!!」


 まずい、本格的に泣いてしまった。

 俺はなんとか慰めようとする。


「元気出そう。決まっちゃったものはしょうがない!」


「うるさいわね! アンタに何が分かるのよ! 早く出て行って死ね!!」


 バタンッ!


 追い出されてしまった。


「はあ……やっぱり俺には才能が無いんだな」


 子供用のような小さなベッドにコロンと寝転がる。


「いかん、俺は何へこたれてんだ! 元気を出せ! 楽しけりゃ才能なんかいらねえだろ。折角の学園生活だ、彼女でも作って幸せになってやるぜ!」


 パシンッ!!


 俺は両手で頬を叩き、半額のおにぎりにかぶりついて切り替えた。

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