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高次元世界で生きていく  作者: エポレジ
第4章 真実を探す旅 -時限の使命-
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42話 夜の池にて。残り3日16時間。

 日が沈み星が見え始めたころ、俺と時谷さんはチューベローズに到着した。


「ふう……長旅で疲れたね」


「ずっと運転してもらってすみません……。今日はどこで休みますか?」


「そうだね、九重の家とかどう? 赤砂寮だったらセキュリティゆるゆるだから、鍵が無くても入れるでしょ」


「えっ!? ダメですよ、この時代の俺に会ったら大変だって言ってたじゃないですか!」


「大丈夫、今はまだ入学試験前。九重はまだ高次元世界に来ていなくて、空き部屋のはず」


「なるほど」


 というわけで、懐かしの赤砂寮へ向かった。


挿絵(By みてみん)


「あ、この池! 時谷さん、俺はこの池で『次元の杖』を拾ったんですよ」


 赤砂寮に入る前に、俺は赤砂寮の近くにある思い出の池を紹介した。


「ああ、この池は高次元世界で一番長い川から繋がっている有名な池だね。でも、やっぱり信じられない、どうしてこの池に『次元の杖』が沈んでいたんだろう。『次元の杖』みたいな大切なもの、間違っても川や池に落とさないと思うけど……」


「あの、『次元の杖』の持ち主は時谷さんの他に誰がいるんですか?」


「そうだね……九重は知っておくべきかな」


 時谷さんは池のほとりの岩に腰を掛け、アメジストのような綺麗な瞳で星空を眺めながら話してくれた。


「そもそも『次元の杖』を作ったのは高次元世界のボスなの。どうやって作ったのかは知らないけど。作られた3つの『次元の杖』のうち1つは、当然ボスが持っている。また1つはボスの奥さんに、最後の1つは理事長に渡った。理事長は自分で持ち主とはならず、学園の主席だった私を持ち主にさせた」


「理事長はどうして自分で持ち主にならなかったんですか?」


「理事長は特別な力を持っているけど、能力者ではないんだよ。九重みたいにね。『次元の杖』の効果はマナが強大なほど強力だから、超能力者である私に託したのだと思う。でも、渡された時こう言われた。『これを受け取るという事は、君はこれから私に、そして高次元世界に全てを懸けて尽くさなければならない。君はこの世界を護る責任と使命を負う必要がある』ってね」


「どうしてそんな重いものを引き受けちゃったんですか!」


「もちろん最初は断った。すると『君はその大きな能力を自分のためだけに使うつもりかい? 強者が弱者のために力を使うのは至極当たり前のことだ。君は生まれた瞬間からこの世界に身を捧げる義務があるのだ』って。嫌だったけど、そのまま押し切られてしまったの」


 時谷さんは後悔をあらわにするように下を向いた。時谷さんが大きすぎる責任の重圧にずっと悩まされていることは、出会って間もない俺にもよくわかった。


「これが、私が『次元の杖』を持った経緯。そしてさっきも言ったように、残りはボスとボスの奥さんが持っている。でも、この冬にボスの奥さんが亡くなったらしい。噂によると、ボスの奥さんの杖は誰かに受け継がれたんだって」


「つまり、今の杖の所有者は時谷さん、高次元世界のボス、そしてその誰かさんというわけですか」


「うん。九重がボスの奥さんから受け継がれたっていうなら辻褄が合うけど、池から拾ったっていうのはよく分からない」


「確かに……俺も謎になってきました。あの杖は一体なんなんだ……?」


「……でもこんな杖、生きたまま引き継げるならすぐにでも誰かに引き継ぐのにね」


 時谷さんは疲れ切った表情で苦笑いをした。そこには杖を持つ者としての苦労が滲み出ていた。皮肉な話だ。ずっと誰かに渡したいと思っている杖を、今は必死に取り返そうとしているのだから。


「ごめん、もう真っ暗だね。赤砂寮に入ろう」


 俺に何かできないだろうか。時谷さんの心を救う何かを……。


「……時谷さん! どういう経緯かは分かりませんが、一応俺も杖の持ち主です。だから、一緒に頑張らせてください! 頼りないですが、俺にも時谷さんの使命と責任を少しだけ背負わせてください! もう一人で抱え込まないでください……!」


「九重……。……ごめんね、後輩に気を遣わせちゃった」


 ポン。


 時谷さんはそっと俺の頭に手を置いた。


「ありがとう。その言葉、すごく嬉しい。でも杖を持っているという事は、九重には九重の使命があるのだと思う。今はその使命を全うすることに集中して。もしいつか九重が強くなって自分の使命に余裕ができたら、お願いしてもいいかな」


「……分かりました」


 そっか……俺はまだ時谷さんの足元にも及んでいないんだ。

 

 俺の力は認められていないんだ……。



 ◇◇◇



「初めて入ったけど、赤砂寮って思った以上に狭いね。足を伸ばして床に座ることすらできないよ」


「学園主席の時谷さんは青月館ですもんね」


 成績下位組が住まう赤砂寮に対して、青月館は成績上位陣の寮だ。雪夜の一件で入ったことがあるが、部屋もなにもかもが高級ホテル並みのクオリティ。青月館の1部屋でも赤砂寮を丸ごと買えそうなほどの豪華さだった。


「窮屈だけど、二人でベッドに寝るしかないよね。通路側は寝てる時にベッドから落ちてしまいそうだから、九重が壁側に寝ていいよ」


「え!? いいですよ、俺はベッドの下か台所で寝ますから」


「風邪をひかれる方が困る。明日からも大変だし、睡眠は大切」


「で……ですが……」


「消灯。おやすみ」


 カチッ


 いつも寒かった薄い布団も、今日は良い香りと温もりで包まれた。

 しかし流石に二人で寝るには小さすぎて、夜中に通路側で寝ている時谷さんを2回もベッドから蹴り落としてしまった。


 タイムリミットまで残り3日と16時間。

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