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高次元世界で生きていく  作者: エポレジ
第1章 入学前
3/43

3話 なんか冷たくない?

 ゴトンゴトン


 電車の窓に映るのは暗闇だけ。

 俺たちは今、どうやら高次元世界というところに向かっているらしい。


 あたりを見回すと車両内には同じ年くらいの人がいる。俺達と同じようにチューベローズへ向かう人達かもしれない。


 見知らぬ場所へ向かう不安はあったが、俺は電車の中で生まれて初めて手にしたスマホを興味津々に触ったり、むにゃむにゃと寝たりしていた。

 

 その様子を、雪夜は呆れるような冷たい目で見ていた。



 ◇◇◇



「これは一体……。目がおかしくなったのでしょうか」


 電車を乗って1時間ほど経ったとき、雪夜の様子が変わった。


「雪夜、大丈夫?」


「貴方に心配される筋合いはありませんわ」


「でも、目が……!」


 雪夜の目は、黒色からみるみる青色へと変わっていった。次第に髪色も青くなっていった。


 高次元世界に近づくことで環境のようなものが変わりつつあるのだろうか。いや、もしかするとすでに高次元世界に入っているのかもしれない。


 そんな雪夜が心配になり、寄り添おうと近づくと……


 パシッ!!


 俺の手が振り払われた。


「近づかないでくださいますか?」


 車内が静まり返る。


「ゆ……雪夜。俺……何か嫌われることしたのか?」


「さあ。とりあえず私は貴方に興味がありません。友達になっていただかなくて結構です」


「そんな……。お前が俺を買ったんだろ? さすがに酷くないか!」


「私は必要ないと言いました。それでも貴方が学校に通うことでお父様が安心できるそうですので、勝手に通っていただければそれで十分ですわ」


「理由を教えてくれ。なんでそんな酷いことを言うんだ!」


「百歩譲って勉強ができないのは仕方ありません。貴方の過去に何があったのかは知りませんので。ですが、できないと分かっていながら努力をしない。今日が試験だというのに車の中でノートを見返すわけもなく、電車の中で必死に教科書を読むわけでもない。使命に向かって人事を尽くせない廃れた精神の持ち主に、私は敬意を抱けません」


 ……何だよ。なにも言い返せないじゃないか。


 はっきりと人格否定された俺は涙目になりながらノートを見返す。だが、相変わらず勉強の内容は全く分からない。ああ、無邪気にガキどもとドッジボールをしてた頃に戻りたい……。


『まもなく、水仙道、水仙道。お忘れ物の無いようお降りください』


 プシューーーーーッ


 目的地に到着した頃、雪夜の髪はすっかり深い青色に染まっていた。瞳もまるでサファイアのように青くなっている。


 学生らしき人が次々と降りていくのに続くと、そこは行きと同じような地下鉄のホームだった。


 人の流れに身を任せ、ランタンで灯された暗い道を歩き、先にあったエレベーターに乗る。


 ガーーーーーーーー


 エレベーターだと分かってしまえば、すごい速さで上昇しているのを明らかに感じた。一体どれだけ地下深くに潜っていたのだろう。


 ガタン!!


 エレベーターを出た先は行きと同じような役所の中。

 そして、役所の外へ。




 外の風が吹き抜ける。


 目の前には都会が広がっているが、街並みが外の世界とまるで異なっている。近未来的でありながら、西洋風の骨董とした建物も並んでいた。


「おおっ、すご……!」


 初めて外国に来た気分。

 しかし、雪夜は立ち止まって呆然としていた。


「黒い……。なんですの……この感覚は……」


「え?」


 やはり、雪夜の体調不良はただの乗り物酔いではなかったようだ。

 『高次元世界は感覚の鋭い人には不思議な世界に見える』って言ってたし、もしかすると雪夜は常人より感覚が鋭くて、高次元世界の何かを感じ取っているのかもしれない。


 俺は全く何も感じないけども。


「雪夜……具合悪いなら荷物持とうか……?」


「結構です」


「はい……」


 俺と雪夜は会話を交わすことなく、地図を見てバス停へと歩き始めた。




 少し歩くと地図の通りにバス停へ到着。試験当日ということもあってか、受験生らしき人達で混んでいる。


 プシューーーーー


 バスには乗れたものの満席。……のはずが、雪夜は空席を見つけたかのように人込みをかき分けて奥へと進んでいく。するとなんと後部の窓をすり抜け、たくさんの空席がある空間に出た。


「窓をすり抜けた!? 一体どうなってるんだ……」


 外から見たバスの形からは考えられない広さだ。

 間違いなく道路にはみ出してるぞ。


「ふぇっふぇっふぇ。教えてやろうかの?」


「あ、あなたは?」


「ただのじじいじゃよ」


 突然、席に座り松葉杖をついた激しい髭のおじいさんに話しかけられた。

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