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僕は、ダンジョンに入る  作者: Rapu
第一章
18/38

18 7月 買取り強化期間のはずが……


 あの後、二人がかりで説得された。僕は、7月の第1土曜日に30階のワープを取りに行く事になったのか? 『はい』とは、返事していないのに来週待っていると言われてしまった。はあ……



 週明けの昼休み、不安なのが顔に出ていたのか、田中先輩が聞いて来た。


「東山~、どうした? 珍しく沈んだ顔をしているじゃないか? 太田みたいだぞ?」


 田中先輩、それは太田さんに失礼ですよ……


「田中先輩……僕の身に何かあったら、部屋の冷蔵庫に入れてあるオーク肉を上げます。食べて下さいね……」

「東山? マジで何があったんだ? 先輩に言って見ろ、少しは楽になるぞ」

「そうだぞ! 俺たちが聞いてやる」

「珍しいね、東山君……」


 3人とも、心配そうに声を掛けてくれる。有難いな……


「はぁ……そうですね……」


 どこから話せばいいんだろう……


「えっと、簡単に言うと……JDAの人と知り合いになったんです。それで、その人とその同僚の勧めで? 強引な説得で?30階のワープを取りに……連れて行かれる事になったんです」

「「「ええー!!!」」」


 驚きますよね。いきなり30階なんて、僕には無理だって分かっているんですよ……


「勿論、断ったんですよ! 僕は弱いから無理だって言ったんですけど。2人がかりで説得されて……」

「何故、JDAが一般ダイバーの東山に関わって来るんだ~?」

「東山、お前まだ19階だって言っていたよな?」

「僕のオーク狩りより大変そうだね……」


 はい……みなさんのおっしゃる通りです。


「はぁ。『はい』って、返事していないんですけど、『土曜日に待っている』って、言われました。行かないとダメですよね……?」


 みんなが、憐れんだ目で僕を見る。のんびりとダンジョンに入っていたのに、僕はどこで間違えた……? 毒消し……?


「しかし、何で東山を連れて行きたがるんだ?」


 仕事が終わって、田中先輩が部屋まで様子を見に来てくれた。


「田中先輩……僕は少しだけドロップが良かったりするんです。それを知っているJDAの知り合いが……その人は欲しい物があるそうで、数か月狙っているけど出ないらしくて、一緒に30階で狩りをして欲しいって言われたんですよ」


 田中先輩には、話してしまおう。迷惑をかけてしまうかもしれないからな……


「何だそれ、自分の欲しい物の為にお前を連れて行くのか? 無茶だよな~」

「そう、無茶なんです! 田中先輩、僕は何度も断ったんですよ。でもその人、この前の東京恵比寿の攻略にも参加していて、頑張っている人なんですよ……」

「うお! JDAトップの攻略メンバーなのか!?」


 そうです……僕もトップのJDAダイバーと知り合いになるとは、思ってもいなかった。


「はい。その人が欲しがっている物は、僕が自分の為に取って来るオーク肉とは違うんですよ……戦闘で使う『スキル書』って、いう物らしいんです」


 ダンジョンの攻略に使う物なら手伝って上げたいとは思う。けど、僕が取って来られるポーションとか毒消しにして欲しい。


「そうか、戦闘に必要な物なのか……でも、東山が行って出る物なのか?」

「そうなんですよ! 僕がついて行って、出るとは限らないんですよ……」


 田中先輩の言う通りだ。僕が行っても出るとは限らない。後藤さんが何か月も入って出ないのに……うん? 後藤さんの幸運値が低いのか?


「だよな~、ドロップなんて()次第だよな~。まあ、出なくても東山のせいじゃなから、考え込まずにのんびり構えればいいんじゃないか? トップJDAダイバーなら、守って貰えるんだろ?」

「はい、そうみたいです」


 田中先輩に話して、少し気が楽になった。仕方ない、ポーションと毒消しを全部持って行こう。


◇◇

 第1土曜日、重い足取りでダンジョンに向かった。


 DWA支部に入ると、既に後藤さんと神田さんが待ち構えていた。


「東山君、おはよう!」

「おはよう。東山君、待っていた。」

「……おはようございます。お二人とも早いですね。僕、着替えて来ますね」


 受付の白石さんが可哀想にと言う顔をしながら、そっと、25階~30階の地図を差し出してくれた……。白石さん、止める様に二人を説得してくれても良いんですよ?


 装備に着替えてダンジョンに向かうと、2人が僕を前後に挟む様に歩く。僕が逃げない様にか……?


「さて、東山君。20階に飛ぶよ」

「はい。後藤さん、神田さん、よろしくお願いします……」

「東山君は、自分のHPに気を付けてね。ポーションは持っているわよね?」

「はい、持っています」


 格上のエリアだから、ケチらずにポーションは早めに飲もう。それと、毒も気を付けないとな……21階からは新しくポイズンスネイクが出て来る。この前、田中先輩に話した後、20階~30階で出て来る魔物をDWA支部に調べに行った。知らないで30階まで行くのは怖すぎるからね。


「東山君は、カエルだけ初めに叩いてくれるか? 毒消しは何個あってもいいからな。後は、俺と神田が狩るからよろしくな!」

「東山君、よろしくね」

「はい……」


 後藤さんが僕の前を進み、神田さんが後ろで僕を挟む様にあるく。あれ、逃げない様にじゃなかったんだ……僕を守る歩き方なのか。


 21階から出て来るカエルは、19階のより少し強いと書いてあった。火魔法を撃つ方が安全だよな。


 後藤さんも神田さんも、攻略部隊だけあって強い。凄いな! シルバーウルフもオークも一太刀で倒してしまう。これじゃあ、カエルも一太刀で倒してしまうんだろうな。だから、『初めに殴れ』って言うのか。それにしても強いよ!


「凄い!! 二人とも強いですね!」

「おう!」

「ふふふ。東山君、素直な感想をありがとう」


 前方の十字路から、大きなカエルが顔を出した。


「東山君、カエルだ。一発殴ったら後は俺たちが倒す!」

「はい、攻撃すればいいんですよね。分かりました」


 後藤さんの横に並び、左手をカエルに向けて火魔法を撃つ。


 ボワッ、ヒュュ――バァ――ン!!


「何!!」

「えっ! 魔法ですって!」


 火魔法を撃った後、後藤さんが素早くカエルを倒した。


「東山君! どういう事だ?」

「何故、魔法が使えるの!?」


 えっ? 2人の反応がおかしい……


「えっ? 初心者講習で、稀に魔法書が出るって教えてもらいましたけど? でも、講習では使い方まで教えてくれなかったので、困りましたよ」

「いや、そうじゃなくて!」


 後藤さんは、ビックリした顔をしている。


「ねえ、東山君。魔法書は何処で手に入れたの?」


 ああ、そういう意味か。


「10階のワープを取る時に、魔法を使うゴブリンが落としましたよ」

「なんだって――! 10階……ありえん……」

「東山君、ないわ~」


 後藤さんも神田さんも、なぜか呆れた顔をしている。


 二人が言うには、魔法書は深い階層の魔法を使う魔物が落とすらしく、浅い層のゴブリンが魔法書を出した記録はないらしい。


「そう言われても、嘘じゃないですよ……」

「だよな~。東山君、すまんな。ビックリしたんだよ。JDAでも、魔法を使える奴なんて数えるほどだからな~」


 みんな言わないだけじゃないのかな。


「それじゃぁ、隠した方が良さそうですね……」

「東山君、隠さなくても良いよ。ダイバーが増えたから、その内使える人も出て来るだろうし、私達がビックリしただけだからね」


 魔法の使える人が少ないのなら、なるべく人前では使わない様にしようか。


 二人がサクサク狩って行くので、26階への階段まで2時間も掛からなかった。


「東山君、ここで少し休憩するよ。各自、水分補給をしておいてくれ」

「了解」

「はい。分かりました」


 二人が魔物を狩るので僕がドロップ品を回収しているが、二人が3~4体倒すと、1個何かをドロップする感じだ。あれ?ドロップ品が少ないな……僕は、2体倒すと1~2個出るんだけどな。


 カエルが2つ出した毒消しを、1個ずつ後藤さんと神田さんに手渡した。


「さすが、『幸運の東山君』だ! 毒消しが2個も出るとは……」

「本当ね。東山君、凄いわ……」

「他の人のドロップとか分からないから、凄いと言われても変な感じです」


 今回で、僕のドロップ率が良い事が分かったけどね。


 26階への階段まですんなりと着いた。ここからが、初めましての魔物が増える。全てランクCかC+の魔物で、ポイズンスパイダー・ポイズンスネイク・手長猿・ハイオーク。そう、ハイオークが二人のお目当ての魔物だ。


 お目当ての『スキル書』、僕が要らないと言ったから、1つ目は後藤さんが覚えるらしい。そして、2つ目が神田さん。そんなにうまく出るわけがないのに……


 ここで、HPの確認をしておこう。『ステータス・オープン』と意識した。


名前  東山 智明

年齢   21歳

HP  168/173

MP  80/115



 うん、HPは大丈夫だな。





誤字報告ありがとうございます。

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