第1話
初めての文章で、かなり短めにしました。高校生の作文感覚で読んでください。
松本とは高校に入ってから会った。僕の名前が松山であいつが松本。四月のクラスの席が前後ろだったのをきっかけにして、喋るようになった。正直あんまり同じ中学のやつがいない僕としては少し嬉しかった。それからいろんなやつと喋るようになったけど、一番話すのは多分松本だろう。
これは松本と僕のいくつもあったバカ話を紹介する話だ。
松本ってのは嫌なやつで、バスケ部に所属していてかなり運動ができる。そして、それを自慢するために、美術部の僕を踏み台にする。それを知ったのがこの時だった。
高一の梅雨が明けて、じめじめした空気が消え始めた頃だった。僕らは体育で野球していた。あいつはキャッチボールの相手に僕を選んだ。あいつの球は速いというか重いというか、とにかく僕はキャッチすることがほとんどできなかった。一方で僕の投げる球はふわふわとした山なりのボールで、あいつは
「もっと力入れていい球投げろよ。」
と、言ってくる。ったく、誰が僕とキャッチボールしたいって言い出したんだか。
「もっとうまいやつとやりゃいいだろ。」
そう僕が言うと、あいつはニヤニヤ笑いながら言ったんだ。
「俺が松山の相手してやらなきゃ、松山と組むやつが可哀想だろう。よし、お前にボールの投げ方ってのを教えてやるよ。日曜に中央公園で練習するぞ。」
「僕は別に野球がうまくなくたっていい。ボールなんか投げなくたって、大学には行けるしね。」
そんなやりとりを何回かした後、他のやつから、
「お前ら言葉のキャッチボールぐらい上手くやれよ。」
と言われ、みんなに笑い者にされた。これも松本のせいだ。
でも、高校に入って初めて誰かと遊びに行くんだし楽しむかな。そう思っていたんだ。待ち合わせ場所に行くまで。
「なんでお前そんな格好してんの。スポーツするんだから、スポーツウェアとか着てこいよ。」
公園に着くなり、松本から叱られた。確かに上はともかく、下はジーパンってのは運動に向いていない。やらかしたな。少し反省していると、目の前にさわやかな風の匂いのする何かが僕の顔を覆った。
「仕方ないから、俺の貸してやるよ。」
笑いながら、松本は自分の替えのジャージを僕に貸してくれた。
「ありがとう。お前女にモテるだろ。」
僕が冗談交じりでこう言うと、あいつは
「俺、バレンタインにチョコ必ずもらうんだぜ。」
という謎の自慢をしてきた。
そこから三時間ぐらい松本と体を動かしたわけだけど、誰かと休日を過ごした時の時間の早さにかなり驚いた。そのあとは適当に過ごして終わった。こんな風に過ごすのも悪くわない。それに松本のおかげでだいぶ投げ方のコツがわかってきた。あいつには感謝しなきゃな。今度の体育の実技テストの結果が良かったら、ありがとうって言うか。
体育の実技テストってのは運動ができないやつにとっては憂鬱なものである。男子、女子の全員の目の前で先生とキャッチボールしなきゃならない。そつなくこなす者、ミスしてみんなからクスクス笑われる者。僕はずっと後者だった。でも、今回は多少いいんじゃないかな。だって、あいつに教えてもらったんだし。
目の前で先生とキャッチボールを軽くこなしている松本を見て、僕はやる気のギアを入れる。次は僕だ。
テストの内容は一分間に何回キャッチボールできたかと言う単純なものだ。先生のサポートをしている体育委員が笛を鳴らす。
「ビュッ、・・・パン」
始まった。最初の一球は難なくクリア。よし、この調子ならいける。
「ビュッ、・・・バシッ、ボス」
しまった、せっかくうまくいってたの落としてしまった。みんなが頑張れって言う声が聞こえる。
昔からこの「頑張れ」は嫌いだった。僕のことを対して知らない人たちが僕のなにを知ってこの言葉をかけているのか。結局彼らは、「運動苦手な人を応援できる自分かっこよくね。」という自己アピールをしているに過ぎず、僕を利用して自分自身の評価を高めているに過ぎない。信頼のない期待の言葉をかけられたものがどう言う心情になるかなんてわからないんだろうな。恥ずかしくて、悔しくて、ただ苦笑いすることしかできなくなる立場なんて彼らは知るよしもない。
「さっさとボール拾えよ。俺のジャージが無駄になるだろ。体の真ん中で取るんだよ。」
いつものように無気力になりかけていた僕に、聞き慣れた怒鳴り声が聞こえた。
そうだ。他のやつらの自己アピールとは違う。心の底からの言葉だと感じた。くそ、体育の実技テストに向けて対策した真面目君扱いされるじゃないかよ。ていうか、みんなに実技テストのためだけにわざわざキャッチボールの練習したってばれるのか、だったら、せめて多少はやらなきゃな。本当の運動音痴と思われてしまう。
ギリギリ評定5を取れる結果を出して実技テストは終わった。
「ありがとう。松本のおかげで一応合格できた。」
「だったら、今度学食奢れよ。今月金欠だからさ、俺。」
ったく、恩着せがましいやつだ。まぁでも、うどんぐらいなら奢るかな。こいつの応援は多分本当に僕のためだけの応援。こいつはきっと僕の高校最初の友達になるのかな。
「わかっ・・・、あれ?」
いつのまにか松本は目の前から消えていた。どこ行ったんだろう。と周りを見ると、少しの人だかりがあった。
「俺はな、あいつがこのままじゃみんなの笑い者にされるってわかったからよ、友達として少し鍛えてやろうと思ったわけよ。」
「松本君って意外と優しいね。」
「当たり前よ。なのに松山のやろう途中で諦めかけただろう。だから、友達としてなにができるか、そう思ってたらあの言葉が出てきたんだよな。」
「それは嘘くさいけど、友達思いなんだね。」
松本のやつ、結局、僕のことを自分のアピールに使っただけだったんだ。やっぱ人ってそういうもんだよな。あいつは嫌なやつだよ。まぁ、なにも知らないで勝手に応援するやつより、多少僕のことを知ってるわけだし、少しはまともかな。ともかく、学食は無しだな。
拙い作品を読んでくださってありがとうございました。自分自身のいろんな経験をもとに書いたので、わかりづらいところもあったかもしれないです。一応頑張って今後もこのシリーズ作っていきたいです。