入学式
気長に読んで行って下さい。
王都にある騎士養成学校に一人の少年が浮き浮きとしながら歩いている。
髪は黒と銀が混ざった髪を短髪をしており、背は十六歳にしてはやや高めで、体は服の上からでも分かるぐらい鍛え抜かれている体つきをしている。
瞳は右目が孔雀緑色で、左目が青藍色をしたオッドアイをした少年。
ティアロスト・アストロ。
とある剣豪の弟子の一人。皆からは良く「ティア」と呼ばれている。
ティアはここに居ると思われる同じ様に育った幼馴染を探し来たのだ。
去年ここに入学して多分、合格してここに居ると思うんだけど………。
さっきから学校内を探し回ってるのに全然見当たらない。
セシア………何処だ?
気配も感じとれないから消してるんだと思う、それか寝てるのか。
寝ていたら気配が無いのは当たり前なのだが、セシアは鍛練のため朝には起きるのでそれは無い、それともわざと気配を消してる………なんのために?
「………………………………………そうか、セシア」
何かが分かったティアは前に歩きだした。
セシアは、きっと。
「ここに居る私を見つけてみなさい!」
そう言いたいのだろう。
だから、俺はセシアを探しに行く!
ティアの思考はどうかしてるが、あながち間違いでも無さそうな………………。
「やっっと見つけた………ティア!!」
後ろから女性の声がして、とても懐かしい声そう思い後ろを振り返ると。
道着を着たご老人がいた。
髪は老けて白くなっておりそれを一つに縛っている。
背はティアのお腹辺りまでの背で、鋭い眼力でティアを睨み付けている。
「あ………師匠?」
そこには数年前に何も言わず手紙だけ置いて行った師匠、バーバス・アストロが居た。
俺は久しぶりに会えた嬉しいさで師匠に抱きついた。
「師匠! 師匠! 久しぶり!」
「お、おう………………はぁ。変わらんな、お前は」
呆れてはいるがバーバスは嬉しいそうな顔しながらティアを抱き締めた。
暫く続けると二人共離れ。
「まぁ、良い。さっさと行くぞ」
「セシアのところ?」
「お前にはセシアしか頭に無いのか! 入学式だ! お前は首席だろ!」
「………………何かあったけ?」
師匠は大きな溜め息をつく。
首席って何かあったっけ? 何も無いよな………。
「お前なぁ、説明するより、もうついてこい」
そうして師匠について行くと。
とある会場に綺麗に並んだ騎士学校の上級生達、前の方に椅子に座る新入生達、その後ろにある舞台の上に何人か立っている。
「さぁ、お前も舞台に上がれ」
師匠に急かされながら舞台に無理矢理上がらされ。
(………あ、セシアだ)
舞台の上から下を見渡すとセシアの顔が見え、セシアは目が合うと口パクでとあることを伝えて来て、笑顔を向けてくれた。
可愛い。
それしかでない笑顔だ。
そして、また口パクで、「いまは式に集中して」と言われたので、師匠は並べと言っていたので取り敢えず後ろの方に並んだ。
「あの、君は前だよ?」
「前?………………」
隣に居る奴にそう言われ、何処に並ぼうが一緒なので前の方に大人しく並んだ。
「おい、あれが今回の首席だってよ」
「さっき、なんか妙に嬉しいそうな顔をこっちに向けていたよな」
ここは三年通って騎士見習いにある者が集まる。近年は騎士にならず冒険者になって行く者も多いが。
上級生達は今回の首席について話してるみたいだ。
「今回の首席の流派は何処だろうな」
「前回が、雪花流なら、次はやっぱり! 王覇流じゃね?」
「王覇流って、王族の流派じゃん、あいつが王子なんて聞いたこと無いぞ?」
王覇流と雪花流は相対する流派で、どちらの師範も仲が悪いと言われている。
「では、首席のティアロスト・アストロさん、流派と簡単な自己紹介をお願いします」
声拡張魔法を付与された魔道具で先生がそう言い。
首席ってのも分からんし、と言うか何で自己紹介しないと駄目なの?
そんなことより、セシアと話したい………。
そんなことを考えてる間に声拡張魔道具が俺に回ってきて。
仕方ない、さっさと終わらせてセシアに会いに行こう。
「えっと、何言えば良いの?」
「はぁ。あんたの流派と名前言っときな!」
大きな声で師匠から言われ、何故か頭に手を当て溜め息をついてる。
疲れが溜まってるのかな、後で肩たたきでもしてあげよっと。
「ティアロスト・アストロ。雪花流一の太刀が流派だ」
「はあ?! 雪花流?!」
「いやいや、そりゃあ無いでしょ!」
「そうだよな、雪花流って女しか継げない流派だろ?」
ざわざわと騒ぎだす上級生と新入生達。
雪花流は確かに女性が継いできた流派だ、それを男である俺が使うのは駄目だったはずだが師匠は。
誰も男が使ってはいけないとは言ってないと言い、強引さはあるが、教えて貰えるならそれで構わないと思い、俺も師匠もそれで納得している。
ざわざわ上級生達が騒いでる間に師匠が舞台まで登って来て声拡張魔道具を俺から取り上げ。
「あんた達静かにしなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
声拡張魔道具で更に大きな声が重なり、会場に師匠の声が隅々まで響き渡り、上級生達は静かになった。
隣で聞いてた俺は鼓膜が破けるかと思ったわ。
師匠は叫び終わると、大きく深呼吸してからまた話し出した。
「ティアは確かに雪花流を使うが、言っとくけどね、雪花流は男が使えんとは一言も言ってないからね?、だからと言ってあたしゃこれ以上弟子を取る気なんてさらさら無いがね」
言い終わると魔道具を違う人に渡し舞台から降りて行こうとしたので俺はその後を追い掛けて行った。
「師匠、フォローありがとうね」
「ふん。あたしゃ何もしとらん」
素直じゃないところは昔とは変わらない、少しほっとした。
「そうだね。でも、ありがとう師匠!」
そっと後ろから師匠を少しだけ抱きしめた。
それが後に変な噂となってティアの耳に届くとはまだ本人は知らなかった。
「あんたねぇ、気安く女性に抱きつくもんじゃないよ?」
「えへへ! 師匠だからやるんだよ!」
尊敬の人で、恩人で、大好きな人だもん、撫でても欲しいし、抱きつきたい、優しい師匠だから俺は好きなんだもん。
あ、セシアにもあとでしたいな~、許してくれるかな?
「まぁ、いいさね。あんたはまだ式があるんだから戻りな」
「え、まだあるの?」
もう終わったかと思ったのに………。
俺はまた舞台の方に戻り。
それから俺以外の奴が自分の名前と流派を言って行き。
「アルシェ・イン・ロンシール、流派は王覇流です」
炎が燃え上がる様に綺麗な赤色の髪を腰まで伸ばしていて。瞳は同じ様に赤く澄んだ色をしている。
肌は白く、中肉中背といった感じで、学校の制服では無く騎士の格好をしている。
またしてもざわざわと上級生も新入生も騒ぎだす。
王覇流………さっき聞こえたので行くと、師匠の流派と相対する流派か。
まぁ、どうでも良いけど。
「………?」
一瞬、睨まれた………よな。
多分、俺にだけ向けたから他の人は気づいてない、殺意が混ざった視線だったから注意だけはしておこう。
「では、新入生五位の生徒達の挨拶が終わったところで、新入生諸君に言っておこう!」
なんか、体がゴツい白髪のおっさんが出てきた。
「私は知っての通り、この学校の校長、デモニ・アドバンスだ、今から言うことは新入生諸君の中に知ってる者も居るとは思うが、多分知らない者の方が多いだろう」
「去年から設けていることだ、二人一組を同じ学年で作って貰う、以上持って入学式は終わりとする!」
強引に終わらせた感はあるけど、どうでも良い。
だって、セシアに会えるんだもん、こんな式に出る必要すら無かった気もするけどセシアも居たし、会う場所も聞いたから結果おおらいだな。
誤字、脱字報告をしてくださると幸いです。
まぁ、まだいちゃつきませんが多分これからはイチャイチャさせるつもりなのでそれが楽しみな人はまだ待ってて下さい。