パラドックス↗
『パラドックス↗』 作 ピーチワイン
ずっと前から
何かを求めていた気がしたけれど
それが何なのかが僕にはわからなかったから
そんな僕のために、詩があるんだ。
ホームに降り立った僕は
やっぱり君の歩調に合わせることができなくて
それでもほんの少しの間だけ肩を並べられて
僕の声が、君に届いたのに
君の笑顔が、僕に届いたのに
心の距離を縮めることができなくて
君を追い越して、背を向けて
トキメキを冷たさで覆って、満足して
いっそ出会わなければ良かった、なんて思ってしまう僕を見ないために
最低を最低限に塗り替えて
今日も振り返らずにエスカレーターに乗る。