乙女ゲームの脇役です。~神の使徒になりました。~
主人公は前髪で顔を半分隠している地味な人です。
神様は突然俺の前に出現した。そして、
「ねぇ、君。僕の使徒にならない?」
と、聞いてきた。俺がどういう事だ。と、聞くと、
「ある少女の前世の記憶を再来年の4月に、高校の入学式に思い出させて欲しい。」
と、答えた。もう少し詳しい説明を求めると、使徒にならなくては教えられないと言われた。だから俺は、神の使徒になった。神様は俺の頭に手をかざした。これで俺は神の使徒になったらしい。神様は詳しく色々と教えてくれた。まとめると、
・この学園(桜庭学園)に通う『霧崎 紫音』の前世の記憶を再来年の4月の高校入学のときに思い出させて欲しい。
・この世界は彼女の好きだった乙女ゲームの世界で神様が彼女のために創った。
・彼女の立場は乙女ゲームでいうとヒロインの親友だが、この世界は彼女の幸せのためにある。
・二年前に俺に言ったのは、来年記憶を思い出した彼女の力になれるように少しでも仲良くなれる期間を作るため。
こんな感じのことを話して、神様は消えた。
俺は1ヶ月位、霧崎を観察していた。そのあと、どう接触するか悩んでいると、霧崎が上から降ってきた。俺は、彼女をキャッチすると彼女は手の中に猫を抱いていた。俺は取り合えず、彼女をおろした。
「受け止めてくれて、ありがとうございます。」
と、言った。猫は、助けてもらったのに彼女の手から一目散に逃げていった。彼女に保健室に行くかと聞いたら
「あの、ごめんなさい。少し立ち上がるの手伝って貰えませんか?落ちた恐怖で立てなくなってしまって…」
と、いっていたので俺がおんぶして保健室に連れていった。
それからは彼女とよく話すようになった。彼女は、凄く作り笑顔がうまい。そんな事が分かった。
ある日、屋上で夕日を見ていたら彼女が来た。そして、綺麗と一言言って笑った。それは、作った笑顔じゃなく、本当の笑顔だった。俺はそんな彼女に一瞬で恋に落ちた。前から気になってはいたから本当に一瞬だった。
ある日、彼女に聞いてみた。あだ名で呼んで良いかと。彼女はあだ名によると言った。だから俺は、霧崎と紫の『サキ』と、言った。彼女はとても喜んで良いよと、言ってくれた。
高校入学前の3月という頃に神様はまた突然現れた。神様は
「彼女と仲良くなれた?」
と、聞いてきた。その言葉に俺は、サキの記憶を思い出させる事を思い出した。俺は、はいと答えた。神様は満足したような顔をして消えた。ただ俺は、あることが気になり始めた。記憶を思い出させると、サキの性格などは変わるのだろうか、と…。
4月になり、サキの記憶を思い出させる日になった。俺はあの事が気になってとうとう告白できなかった。サキに記憶を思い出させるために俺はサキに手を向けた。後は神様が俺の体を使って力を使うらしい。
突然記憶を思い出したサキは戸惑った様子で周りを見渡していた。そんなさきに一人の女の子が声をかけた。その女の子とサキは少し話して体育館に向かっていった。
その日の夜、俺はサキを女子寮の入り口の階段の下に呼び出して、説明した。俺の知っていることを全部、教えた。その代わりに、作り笑顔が上手い理由を教えてもらった。
理由は前世ではいつ死ぬか分からない病気にかかっていて、痛かったりもしたんだけど、心配かけないために作り笑顔を磨いたらしい。
そんなことを悲しい顔をして言うものだから俺は思わずいってしまった。サキの心の底から笑った顔はとっても光って見えるよ、と。言ってしまった俺は恥ずかしくなり、逃げるように自分の部屋へ帰ってしまった。
その日からは、サキと直接顔を合わせて会話することが少なくなった。何故なら、サキと友達になったヒロイン『木ノ下 乙葉』が早速、生徒会の女好きと言われる『門崎 昴』に絡まれてサキは巻き添えをくらって生徒会の面々に絡まれるようになったらしく、サキとヒロインは、生徒会の5人とよく一緒にいることになったからだ。
俺はその事に嫉妬を覚えた。俺はサキにたいして何にもやってないのにな。
ある日、サキと夜に寮のロビーで会った。偶然だった。俺は誰もいないと思っていたからコンタクトを外して眼鏡だった。ついでに眼鏡をかけると前髪が邪魔なので横にどけていた。サキは俺を見てビックリした様子だったけど、まず最初に話したのは、
「ねぇ、皆の前で眼鏡着けない方がいいよ。前髪もどけない方が…」
だった。俺は不思議に思い何故かと聞くと、何でも!と返ってきた。謎だ…。
夏休みに入った後、ロビーがバタバタしているようで気になって見に行ってみた。すると、生徒会の面々と乙葉が寮長に何かを話しているところだった。(ちなみに大抵の学生は里帰りをしていて寮にはいない。)気になって俺は下に降りていった。階段を降りていると、俺を見つけたサキが手を振ってきた。…何かサキの様子がいつもと違う。そんなことを思っているとサキの手を振った事に気づいた人達が俺の方見てきた。
「紫音を一年前から知ってる?仲良かった?」
と、矢継ぎ早に乙葉が聞いてきた。俺は、まぁ、知ってる。と答えたが、知り合い程度だと言うとサキが否定してきた。一番私の事を知っている人だ、と。正直、メチャクチャ嬉しかった。ただ、周りにいた生徒会の面々は、こんな奴が!?と驚いていた。乙葉はサキの言葉に安心したのか、そっと息を吐き出し、話し出した。
「えっとね、遊びに行ってて信号渡ってたら車が突っ込んできて私を助けたときに頭打っちゃって…そのときに、記憶を失っちゃった!」
は?記憶がなくなるとかあんの?…いや、神様とか、前世の記憶とかあるからあるか。
「それで、私たちの事も覚えてなくて。誰か信頼できる人いるかって聞いたら、ここの生徒にいるっていうから、今から探そうと思ってたの。でも、紫音の反応から見たら貴方だよね?」
たぶん、そうだね。と答えたが、俺はサキから信用されていたのかと分かってビックリした。
取り合えず俺は、何処まで覚えてる?と、聞いた。
「高校入学する前日まで。」と、返ってきた。じゃあ、前世の記憶は?と聞くと、ビックリしたようにこちらを見てきた。
「何で前世の記憶があることを知ってるの?」
「あ!紫音、私も知ってるよ!」
「そうなの?じゃあ、仲良かったんだね。」
「言ったでしょ、親友だ!って。」
二人は俺を無視して話始める。
「ねぇねぇ、紫音ちゃんの記憶の件はどうなったの?」
二人を止めたのは『門崎 昴』だった。素直に凄いと思った。あの話に入っていくのは俺は無理だ。
「とりあえずサキ、俺が何でサキと言うのかは覚えてるんだよな?」
「あ、紫音。それ教えて!サキって何?」
「私のあだ名だよ。たしか由来は霧崎と紫の『サキ』だったよね?」
「そうだよ。」
「へぇ~、よく考えられたあだ名だね。私も呼んで良い?」
「…ダメかな。」
乙葉はそれを聞いてニヤリと笑った。
「とりあえず、記憶が戻るまで協力してもらうかもしれないからよろしくね。」
そう言って、乙葉たちは俺の前から去っていった。
それから数日たっても、サキの記憶は戻らないままだ。
そして、何故か俺と一緒にいることが増えた。何故か?と聞くと、
「乙葉ちゃんたちが知っている私は高校生になってからの私で、今の私はその乙葉ちゃんたちが知っている私じゃないからさ、少し気まずいんだよ。
今の私を知っているのは君でしょ?だから、君の隣は私の居て良い場所って分かってるから安心するんだ。」
そんなことを言われると、俺は何も言えなくなる。
…やっぱり、俺はサキが好きだ。
「ねぇ、私の記憶を戻す手伝いをしてくれない?」
急にどうしたのだろうか。まぁ、良いやと思い承諾すると、
「じゃあ、高校生になったあとの君との会話など、何でも良いから教えて。」
そう言うもんだから、俺はこの世界の説明をした。サキはこの話を覚えていなかったので、すごくビックリしていた。
他には?と聞くので、俺は話す機会が少なかったからあんまり話すことがない。強いて言うなら俺の素顔を見たことかな。と言った。
「何それ!気になる!」
その言葉に反応して、サキはすごくテンションが上がった。
そんなに見たい?と聞くと、見たい!と返ってきたから、休日なら良いよ。と言った。
「なら、次の休日は遊びに行こうよ!」
「誰と?」
「君と私の二人で!…ダメかな?」
「良いよ。」
素直に二人で遊びに行けることが嬉しいので俺は了承した。
次の休日になった。俺はメガネをかけて外に出ることはめったに無いので違和感があった。
何故か、正門の前で待ち合わせになった俺はサキを待っていた。
「お待たせ。…本当に君だよね?」
「俺は俺だが…。」
どうしたのだろうか?俺の顔がどうかしたのか?
「変わりすぎ…。…んん?前にもこんなことが…。」
「あったぞ。…記憶が戻ったのか?」
「…少しだけ。前に君と話したことと、素顔を見たことを思い出したよ。」
…俺の顔はそんなに衝撃的なのか?
良かったね。と、言ったあとにちゃんと今日の服装を褒めておいた。
その後はショッピングモールに行き、買い物をしたり、ゲームセンターで遊んだりした。
ゲームセンターではUFOキャッチャーで俺が商品を取り巻くってサキがビックリしていた。とった中のぬいぐるみをサキにプレゼントした。
帰りにバスに乗っていると前の窓に車がこっちに向かってものすごいスピードで走ってきた。
それを見た俺はサキを自分の腕の中に囲いこんだ。
その少し前にその事に気がついたサキは
「こんなような光景前に…」
と、呟いていた。
ドカンッ!
その音を聞いて俺は意識を失った。
目を開けると真っ白い天井が見えた。
ここはどこだ?体も痛い。
「あ!目が覚めたの?」
「サ…キ?」
「少し待っててね、看護師を呼ぶから。」
暫くすると、看護師が来て、医師に検査された。
10日間位入院だそうだ。
サキにあのあとの話を聞くと、
「突っ込んできた車の運転手は酒を飲んで酔っぱらっていたらしいよ。大きな事故になったけど私は守られてたから怪我がなくてすんだけど、君は大怪我をして2日間寝てたんだよ。」
それを聞きながら、俺はサキを守れて良かったと思っていた。
サキはときどき俺の病室にきた。コンタクトレンズをつけられないので俺は常にメガネをかけていた。サキは最初のほうは俺の顔を見るたび少し固まっていたが、最後のほうは慣れたようで固まることもなくなった。
入院中サキと一つの約束をした。それは、退院後サキと俺が始めてあったときの木の下で話そうと言うことだ。
俺は予定通りに退院した。俺はすぐに部屋に戻り荷物を置いてからあの木の下に向かった。すでにサキは来ていた。
「待たせたか?」
「ううん。」
「サキ、記憶は戻ってるんだな?」
「…うん。まだ、乙葉や生徒会の人達に言ってないんだよね。」
「何で言ってないんだ?」
「中学生の私が言い忘れてたことがあるからかな。」
「それを言ってから高校生のサキに戻りたいってことか?」
「うん。私はずっと言いたかったんだよ。決意が固まらなくてずっと言えなかった。だけど、事故にあって終わりがあるということを身に染みて分かったから中学生の私が言いたかったことを記憶をなくしてまた中学生になった私が言おうと思って。」
「言いたいこと、か。…俺もあるな。」
「そうなの?まぁ、私から言わせてもらうよ。
私はずっと木から落ちた私を助けてくれた時から、君を好きになりました。」
「くくっ!俺も同じことを言いたかった。
俺はサキの本当の笑顔を見たときから好きになりました。
俺と付き合ってください。」
「…喜んで。
最後の言葉、私が言いたかったのに。」
「男からそういうのは言った方が良いんだよ。…少し位はカッコつけさせろ。」
「いつもカッコいいよ。」
「でも、良いのか?俺で。この世界はサキのためのものだ。元々乙女ゲームの世界なんだ。もっとイケメンのやつもいるだろう?」
「ふふっ!君も攻略対象の一人だよ。」
「は?」
「隠し攻略対象だよ。君の場合は前髪で髪が隠れてるけどメガネをかけて前髪をどけると凄くイケメンなんだよ。」
「…だから、夜合った時に『ねぇ、皆の前で眼鏡着けない方がいいよ。前髪もどけない方が…』って言ってたのか。」
「うん。画面で見たときよりずっとイケメンだったから。」
思わず俺は顔を赤くする。
「…ありがと。」
「君はもう私の彼氏だよね?」
「ああ、そうだが。どうした?」
「ん、幸せすぎて確認したくなっただけ。」
「俺も幸せすぎて少し怖いな。」
木の下で俺とサキは抱き合いながら笑う。
「「ずっと一緒にいようね。」」
後日。
「サキ~!彼氏出来たって、本当!?」
乙葉がバタバタとサキに近づいてくる。その後ろには生徒会の人達もいる。
「本当だよ。」
「前から好きな人がいるって言ってたけどその人?」
「うん!」
…前から好きだった、か。嬉しいな。
「?もしかして、この隣の人?」
「そうだよ。」
「誰?」
俺はサキの希望で日常的にメガネをかけることにした。だから、乙葉が俺を分からないのも無理はないだろう。…ただ、ここまで分からないという顔をされると精神的に辛いものが…。
「一応、サキが記憶を失った時に会ったことがあるんだが。」
「えっ!……う~ん………あ!もしかして、あの地味な人!?」
「…まぁ、地味な人かな?」
「変わりすぎでしょ!」
そこまで変わったのか?余り自覚はないんだけどな。
「まぁ、これからよろしくな。」
「うん!よろしくね!紫音ちゃんを幸せにしよう!」
「くくっ!そうだな!」
乙葉とも仲良くなれそうだ。
これはサキのための世界だ。だから、俺はサキの幸せにするために生きるとしよう。
「紫音ちゃんが幸せになってくれて良かったよ。その為に僕はこの世界を造ったのだから。…御幸せにね。」