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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第7章 狼おじさんと猫の少女
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大事件のニオイ?

 ここ最近、俺たちは妙な事件を追っている。

 

 事の発端は今からおよそ四日前に遡る。

 その日は雪が止み、ほんの僅かだが寒さが和らいだように感じる冬にしては穏やかな日だった。

 俺はアルから一つの噂を聞いたことから事は始まった。


 「なあオッサン知ってるか?この頃変わった薬売りがここに来てるらしいぞ」


 アルが何気なく俺に話を振ってきた。

 その呼び方だと機動隊のみならずクルセイダーはおっさんばかりだから俺のことを指していると分かりにくい。

 

 「薬売り?」

 「ああ、それを飲むとよく眠れるとかいう噂だ」


 胡散臭い、怪しさに満ち溢れている。


 その時はあくまでただそういう薬があって、そういう薬を売る行商人がいるのかぐらいにしか考えていなかった。

 だが、それは今に続く事件のほんの幕開けに過ぎないとは当時の俺たちは考える由もなかった。


 「どうなっちまってんだよ……」


 いつも季節を問わず活気にあふれている商店街が臨時休業の嵐だ。

 三軒に一軒は店が閉まっていると考えてもいいだろう。

 なぜこんなことになってしまったんだ。


 「どこもかしこも店の主人が体調を崩しちまってるみたいだな」

 「いくら冬とはいってもこんなに一斉に身体を悪くするこたぁねえだろう」


 俺とアレンは同時に首を傾げた。

 冬は風邪を引いたりして体調を崩しやすい季節とはいえあまりにもタイミングが合いすぎている。

 確か昨日あたりからクルセイダーにも欠勤者が続出している。

 これはギルドからも何かしらの警告が出るだろう。


 そういえば、変わった薬売りがここに来ているとアルが話していたな。

 あれと何か関係があるんだろうか。

 

 「薬売りが怪しいって?」

 「なんかさ、薬売りの噂が流れ始めたのと同じぐらいの頃からこの街で体調不良が続出してるような気がしてさ」

 「偶然だと思うけどなぁ」

 

 「ところがどっこい、それが偶然だとは思えねえんだよなぁ」


 俺たちが話しているところへグレイさんが入り込んできた。


 「どうしてそう思うんだ?」


 アルがその理由を尋ねた。


 「俺、さっきまで体調不良になった奴らがどんな症状を訴えてるのか調べてきたんだ」

 「それで、どうだったんだ?」

 「一部の輩はただの風邪だったんだが半数以上が身体の痺れを訴えていた」

 「身体の痺れ?」

 「そう、しかもその症状の原因までわかったぞ」


 グレイさんが知っているってどういうことなんだろう。


 「その痺れの原因を知ってるのか?」

 「ああ、アシオリギクの毒にやられたものだ」

 「アシオリギク?」


 初めて聞く単語だ。

 キクということは植物なんだろうか。


 「秋に咲く花なんだけどな、根っこに動物の感覚を奪う強烈な毒があって害獣駆除の時に道具に塗り込んで使ったりするんだ」

  

 なるほど、ハンター時代に使った経験があるから知っていたのか。

 

 「なんで毒が原因だってわかったんですか?」

 「ニオイがしたんだ。アシオリギクの汁は独特の甘ったるいニオイがするからな」


 流石は狼の獣人、鼻が利く。


 「なんでそんな物騒なものがここに?」

 「わからん。誰かが薬かなにかだと偽って飲ませたと考えるしかない」


 確かアルから聞いた話ではよく眠れる薬だとか言って売ってたんだっけ。

 物騒な植物にそんな効能があるとは考えにくいが。

 

 「そのアシオリギクっていう花、催眠効果はあるんですか?」

 「ごく微量なら軽い脱力感程度で済むから安眠ぐらいには使えるだろうな」

 「だがアシオリギクは手練れのハンターですら使用に細心の注意を払うぐらいの代物だ。油断すれば使う側も足を折られかねん」


 そんなに危険なものなのか。

 いったい何の目的で売りさばいたんだろう。


 「俺、ちょっと街の薬売りのところに聞き込みに行ってきます」

 「おう、気を付けろよ」


 というわけで俺は街の薬売りのところまでやってきた。

 現地にはアルも同行している。


 「この街に薬売りの行商人が来ているという話を聞いたことはありますか?」

 「いや、聞いたことはないね」

 

 薬売りの婆さんはそっけなく答えた。


 「本当に?同じ薬売りなのに知らなかったのか?」

 「本当さ。本来ならこのギルドでは私以外が薬売りをすることは認められていないからね」


 マジかよ。

 自分しかいないはずの薬売りがどこからともなくもう一人現れたとなればそれは知らなくても当然だな。

 これでは行商人に関する情報は得られそうにない、もう一つの質問をしよう。


 「アシオリギクの解毒をする方法ってありますか?」

 

 俺の質問を聞いた婆さんは顔をしかめた。


 「まさかアシオリギクの毒を受けた人間がいるのかい?」

 「いるんです。しかも何人も」


 婆さんはさらに顔をしかめた。


 「面倒なことになったねえ……」

 「で、あるのか?ないのか?」


 独り言をぼやく婆さんに対してアルが食い気味にかかった。


 「あるにはある。だが時間がかかる」

 「と、言いますと?」

 「アシオリギクの毒は強烈だから一度に解毒することができんのさ。だから解毒剤を複数回処方して数日かけて身体から抜いていくしかないね」


 なんて面倒なんだ。

 恐るべきアシオリギク。


 「解毒剤を大量に調合してくれませんか?お代はギルドマスターのツケで」

 「まぁやってみるさ。大量ともなると作るのに時間はかかりそうだけれどもね」

 「ありがとう婆さん!」

 

 勝手にギルドマスターの爺さんのツケ払いにしたが今回はギルド全体に関わる問題だ、きっと応じてくれるだろう。

 

 しかしなんで季節外れの植物の中毒症状がここで流行しているのか、噂の行商人が何の目的をもって毒薬をばらまいているのかがまったくわからない。

 いったい何の目的で……

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