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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第7章 狼おじさんと猫の少女
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猫の兄弟

 というわけで、俺たちは休日を使ってグレイさんと一緒にアルの兄弟の世話を焼きに来た。

 

 「あの猫さんの兄弟ってどんな子なのかな?」

 「歳はお前に近いんだってよ。仲良くなれるといいな」

 「うん!」


 まだ見ぬ人物との出会いにミラはワクワクしているようだ。

 

 「なんでアタシまで?」

 「お前ひとりで家にいてもやることねえだろ」

 「そりゃそうだけどさ……」

 「だったらいいじゃん」


 こういうときにオズがいるといろいろと助かるので連れてきた。

 本人も暇つぶしぐらいに思っているだろう。


 「さあ着いたぞ。ここが猫の家だ……」

 

 グレイさんがある家の前で立ち止まった。

 なぜか表情が妙に緊迫している。


 「へえー、ギルドの中に建ってるんスね」

 「街の中に家がある方が何かと都合がいいだろうからな。俺も気楽に立ち寄れるし」


 アルの家は改築する前の俺の家より少し小さいぐらいの一軒家だ。

 なんだか懐かしい気持ちになるな。


 「覚悟を決めろよ……」


 グレイさんが俺たちに警告を促しながら家の扉をノックした。

 そんな大げさな…


 「狼か!よく来たな!ちょっと待ってろよな」


 アルが玄関を開け、こちらの様子を覗くと嬉しそうに表情を変えて家の中へ戻って行った。

 きっと中にいるのであろう弟たちにこのことを伝えに行ったに違いない。


 「さあ来るぞ、心してかかれ」


 どうしてグレイさんはそんなに警戒しているのだろう。

 と思っていた矢先……


 「狼さんだー!いらっしゃーい!」

 「狼さん!遊んで遊んでー!」


 玄関から飛び出してきた二人の猫の獣人がグレイさんのところへ突っ込んでいった。

 あれがアルの弟たちか。


 「こら!まずは挨拶をしろってお姉ちゃんいつも言ってるだろ!」

 

 慌てて出てきたアルが弟たちに注意をした。

 それを耳にした彼らはじゃれつくのをやめて俺たちの前に並んだ。


 「こんにちは!」

 「初めまして!」


 なんだこの生き物は。

 小さい、かわいい。

 恐らく白い方が弟で黒い方が妹だろう。


 「あー超かわいい!この子たちはアンタの兄弟?」


 オズが夢中になってアルの弟たちにすり寄っている。

 彼女にとってもあの子たちは可愛く見えているようだ。


 「白い方が弟のルイで黒い方が妹のリリー。ウチの自慢の弟たちだぞ」


 アル曰く、二人の名前はルイとリリーというらしい。

 前に聞いた話ではルイ君は八つ、リリーちゃんは五つだったな。

 ミラとは年齢が近いとは思えないぐらいに身長差がある。

 ざっと目測でも十センチぐらいは違う。


 「貴方たちはだあれ?」


 ルイ君とリリーちゃんは二人同時に俺たちに尋ねてきた。 

 一挙一動が小動物らしくてとても愛らしい。


 「アタシはクラリス・オズ。オズ家の第十四代当主よ」

 「なっ……!?オズ家の当主様!?」


 アルはミラの正体を知った時のように驚いている。

 獣人は魔法使いに関する知識が浅い傾向があるとはグレイさんの談だがさすがにオズ家やマーリン家ほどともなるとその名が知れ渡っているらしい


 「おじさんはタカノ・トモユキ。お姉ちゃんのお仕事の先輩だ」

 「ミラはミラ・マーリンっていうの」


 俺たちが一通り自己紹介を終えたところでアルがミラの元へ駆け寄ってきた。


 「えーっと……ウチのこと覚えてる?」

 「覚えてるよ。元盗賊の猫さんでしょ?」

 「アハハ点…あの時はありがとな」


 アルはミラに対して照れ臭そうにお礼をした。

 意外と律儀なところもあるんだな。

 

 「どういたしまして。あれから足は大丈夫?」

 「もちろん。おかげで今は元気に仕事ができてるぞ!」


 対するミラもアルのことはちゃんと覚えていたようだ。


 「ミラはお姉ちゃんのお友達?」

 「うん、お姉ちゃんの怪我を治してあげたの」

 「すごーい!ミラはお医者さんなの!?」

 

 ルイ君とリリーちゃんの興味の的がミラに集中している。

 姉と顔見知りの関係となればそれも当然のことか。


 「ミラは将来は立派なお医者さんを目指してるの。今は普通の魔法使いだよ」

 「へえー」

 

 ミラは普通を自称しているが事情を知っている俺たちから見れば明らかに普通ではない。

 

 「ねえねえ、一緒に遊ぼー?」

 「遊ぼー?」


 ルイ君がミラの袖を掴んでアピールしてきた。

 リリーちゃんも後を追うようにミラに近づいていく。

 二人は遊びたい盛りのようだ。


 「何して遊びたい?」

 「鬼ごっこ!」

 「かくれんぼがいい!」


 ルイ君とリリーちゃんとの間で意見が割れた。

 直後に二人は対立するように顔を合わせる。


 「この前はかくれんぼしただろ?だから今日はリリーが我慢して鬼ごっこだ」


 アルが二人の間に仲介に入った。

 想像以上にお姉ちゃんしている。


 「じゃあルイが鬼やるー!十数えるからその間にみんなは街の中に逃げてねー」


 なにそれ逃げる範囲の規模が広くない?

 猫の獣人だし、こうでもないと物足りないのだろうか。


 「ウチはやらないぞ。何かあったときに困るからな」

 「俺もやめとくわ。アルといろいろ話したいことあるし」


 よし、なんだか凄絶なことになりそうな鬼ごっこに参加するのを回避するのに成功したぞ。

 

 「ごー!ろーく!」


 ルイ君は結構数え進んでいた。

 ミラたちは普通の鬼ごっこだと思っているであろう中でただ一人、グレイさんだけはマジな表情で全力疾走している。


 「きゅー!じゅー!」


 十数え切ったルイ君はさっきまでのあどけない表情から一変し、狩りをする獣の表情になった。

 勢いよく地面をけり飛ばし、ミラたちを追いかけてすっ飛んで行った。


 「ウチの弟たちは足が速えんだ。普通の人間じゃ簡単に追いつかれちまうだろうな」

 

 状況を傍観しながらアルが言った。

 なんとなくそんな気はしていた。


 「ところで、お前はこの間何をするんだ?」

 「弟たちの昼ご飯でも準備するかなー」


 コイツ、びっくりするぐらいまともなお姉ちゃんしてるな。

 というか料理できるのは意外だったな。


 「料理とかできたのか?」 

 「手の込んだものは作れねえよ。できてせいぜい丸焼きとごった煮ぐらいだ」


 訂正、やはり料理はできなかったようだ。

 

 「俺が手伝うから今日ぐらいはいいものを食わせてやろうか」

 「お前って料理できるのか?」

 「何言ってんだ?ミラたちの飯はいつも俺が作ってるんだぞ」 

 

 時々オズにやってもらったりするが基本は俺がやっている。

 たぶんアルに教えられる程度の腕はある。


 「なに作ってくれるんだ?」

 「そうだな……もう冬だし、身体の温まるものでも作るか」


 外で子供たちとオズ、そしてグレイさんが走り回っている間は俺とアルは料理教室だ。

 果たしてうまくいくのだろうか。


 

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