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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第6章 ミラを巡る戦い
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プロローグ 泥沼の予感

今回から六章が始まります。

六章のテーマは『家族の絆』と『過去との決別』です。


 今日から俺は職場復帰だ。

 三十日の出勤停止も今思えば短いものだったな。


 「どうも、この前は迷惑かけました」

 「おう。おかげで俺はお前の尻拭いで始末書書かされたんだからな」


 復帰早々にグレイさんに怒られてしまった。

 俺の知らないところでさらに迷惑をかけてしまっていたらしい。

 この分は仕事で取り戻そう。


 そういえば、今日は巡回中に出会う人々がやたらと俺のことを見てくるような気がする。

 気のせいじゃない、確かに視線を感じる。


 「お前、まさか心当たりねえのか?」


 一緒に巡回していたアレンに諫められた。

 心当たり……か。

 

 「もうお前の名前はそこら中に知れ渡ってるぞ。『オズ家の女の心を射止めたクルセイダー』ってな」

 

 マジか。

 知らないうちに俺が有名人になってたのか。


 「そういえば、マーリン家の娘ってどうしてるんだ?」

 「ミラのことか?ミラなら家で元気にやってるぞ」

 「そうか、ならいい」


 アレンは意味深なことを口走った。

 なにかミラに関する出来事でもあったのだろうか。


 「なんかあったのか?」

 「あくまで噂で耳にした程度なんだけどな、近々レオナルドの奴が争いを起こすらしい」


 あのレオナルドさんが戦う?

 マーリン家は直接戦争に関わらないんじゃ……


 「戦うって、誰と?」

 「なんでも相手は自分の妻だってよ。しかも向こうから吹っ掛けられたって話だ」


 マーリン家同士の戦いか。

 しかも夫婦間で争うということは、その目的は……


 「まさか……」

 「察するに『親権争奪戦』だろうなぁ」


 やはりそうか。

 まだあくまで噂だがそうだとすれば大変なことだ。

 早くレオナルドさんに真相を確かめなければ。


 「おう、そういえばお前に言っておかなければならないことがあったな」

 「なんだ急に」

 「今年はドラゴンの進路が変わってギルドを正面から通過することはないんだってよ」

 「つまり?」

 「今年は無理に迎撃する必要がないってことだ」


 そうか。

 あのハードワークを今年はやらなくてもいいという喜びとボーナスが出ないという悲しみが入り混じってなんともいえない気分になる。


 久々の職場はいろいろな情報を聞き出すことができた。

 中でも特に気がかりなのはやはりレオナルドさんのことだ。


 あの人のことだ、きっと図書館にいることだろう。

 俺は帰りに図書館によって行くことにした。


 「申し訳ありません。レオナルド様は現在都合によってこちらを空けております」

 「そうですか……」

 

 図書館の三階にいた司書代理の人から衝撃的なことを告げられた。

 レオナルドさんが、めったなことでは図書館から出てこないあのレオナルドさんが図書館に不在だという。


 「どこへ行ったかまで分かりますか?」

 「いえ、我々には知らされておりません」


 いよいよ噂が現実味を帯びてきたぞ。

 まさか本当に親権争奪戦が始まるんじゃないよな。


 こんな時、レオナルドさんの行きそうな場所がわかる奴と言えば……


 「えぇ!?お父さんが図書館にいないの?」

 

 ここはミラに尋ねるしかない。

 

 「そうなんだ。レオナルドさんが図書館からいなくなるほどのことがあるとしたら、どこへ行くと思う?」

 「うーん……お父さんが図書館を空けてまで行く場所……」


 ミラの表情が曇り始めた。

 やはりなにかよくないことが起こったんじゃ…


 「心当たりはあるか?」

 「たぶん、ミラたちの故郷……」


 そうか、故郷か。

 ……故郷?


 「何々?ミラの故郷の話?」


 ちょうどいいところにオズがやってきた。

 話を聞いてみることにしよう。

 地理に関することはオズに聞くのが一番だ。


 「ミラの故郷?」

 「知ってることを教えてくれ」

 

 「ミラたちマーリン家の故郷は『キャメロット王国』っていう国よ」

 「王国?」


 この世界にも王国があったのか。

 

 「そう。周囲を強固な城壁に守られた格式高い王国、それがキャメロット。そこにレオナルドが向かったということは……」


 ということはなんだ……?


 「なにかよくないことが起こったのね。もしかすると、これから先ミラに辛い思いをさせることになるかもしれないわ」


 神妙な面持ちでオズが告げた。

 その表情はまるでこれから起こることが分かっているかのようだった。

 

 「ミラは俺が守る。だから彼女だけに辛い思いはさせない」

 

 そうだ、俺がやるべきことはミラを守ることだ。

 それが肉体的なものであれ精神的なものであれ、彼女に降りかかる災厄は俺が払う。


 「そう。ならいいけど」


 なんだか不穏な空気が立ち込めてきたぞ。


 そしてそれは、俺たちにとって過去最大級の試練の始まりだった。

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