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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第4章 おじさんと魔法戦争
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オズと戦局の変化

今回は三人称視点の話です

 開戦から三十日。

 戦局はオズ家に傾いているように見えた。

 エルリック家の防御網をクラリスが直々に破り、崩れた陣を立て直させる間もなくオズ家のゴーレム軍団が攻めている状態だ。


 「……」


 クラリスの表情がかなり歪んでいる。

 それもそのはず、今の彼女はあることに関して相当に苛立ちを募らせているのだ。


 「……ねぇ」


 クラリスが廊下で通りすがった部下の若い男に声をかけた。

 声のトーンがいつもよりも低く、募る苛立ちを隠しきれていない。


 「はいっ!?なんでしょうか!?」


 声をかけられた部下は飛び上がらんばかりに驚いて立ち止まり、すぐにクラリスの後ろについた。


 「今の戦況はどうなってる?」

 「エルリック家が防戦に特化した動きに変化した上にこちらの攻勢の効果が薄く、膠着した状態が続いているものかと……」

 「なるほどね」


 その一報はクラリスを大いに悩ませた。

 自分が出れば状況は一変できるかもしれないが味方を巻き込みかねず、それでは戦場を切り開く意味がない。


 「ぐぬぬぬぬぬ……!」

 「ク、クラリス様?」


 唸り声を上げ始めたクラリスを部下が不安気に気遣う。


 「招集よ招集!屋敷にいる奴は全員大広間に集合!」


 いよいよ考えに行き詰ったクラリスは部下たちに招集をかけた。

 彼女の声を聞きつけた魔法使いたちが大慌てで屋敷の大広間へとすっ飛んでいく。


 屋敷中の人間を大広間へと招集すると、クラリスは一人で大勢の前へと立った。


 「今回、アタシから話したいことがあるわ」


 クラリスの一言に魔法使いたちは固唾を飲んだ。

 何を言い出すかまるで予想がつかないからだ。


 「今、アタシたちオズ派の軍勢はエルリック派の奴らに対する有効打に欠けた状態が続いているわ。そこで!今回はそんな状態を脱却するために皆からアイデアを集めようと思うの」


 「ちなみにアタシはアタシ自身が出て行ってパパっと片付けるのがいいと思ってるんだけど他に何か意見はない?」


 クラリスの提案に対して一人の男が手を上げた。

 バートだった。


 「バート。何かしら?」

 「私はクラリスお嬢様が直々に出るというのには賛同いたしかねますな」

 「どうして?」

 「私にはエルリック派の動向がまるで『クラリスお嬢様が出てくるのを待っている』ように見えるのです」

 「アタシが来るのを?」

 「ええ、おそらくですが」


 バートの進言に乗じてさらにもう一人の魔法使いの女性が手を上げた。


 「今度は何?」

 「バート様の意見に補足を加えさせていただきます。私、エルリック派のゴーレムの配置が敵陣の中央に集中していたのを思い出したんです」

 「それがどうかした?」

 「いや、まるで『クラリス様の手で焼き払ってくれ』と誘っているように思えたので……」


 それを皮切りにオズ派の魔法使いたちは口を揃えてエルリック派の行動が『クラリス自身が来るのを待っている』ようだと主張した。


 「どうされますかなクラリスお嬢様。相手の罠だと承知のうえで出陣なされますかな?」


 それらの意見を集った上でバートは改めてクラリスに提言した。

 表面上は是非を問うているがその表情は『行くな』と強く止めにかかっているように見える。


 「皆がそこまで言うならアタシは出ないわ。何か別の作戦を考えましょう」


 クラリスは苦虫を噛み潰したような表情をしながら決定を下した。

 彼女の決定にオズ派の魔法使いたちは安堵した。

 それと同時により一層緊張が高まっていく。


 「確かゴーレムが敵陣の中央に集中してるって言ってたわね。そこをどう崩すかが問題ね。何か意見がある者はどんどん言いなさい」


 そして会議が始まってから約一時間後……


 「よし、じゃあその作戦で行くわよ!すぐに準備なさい!」


 新たに作戦を決定し、オズ派の魔法使いたちはすぐに各々の戦闘態勢に入っていった。

 同時にクラリスも礼装のローブを纏い、帽子を被る。


 「クラリスお嬢様。もしや貴女様も出陣なさろうとしているのでは?」


 その様子を見たバートが不安気に尋ねた。


 「観察よ観察。アタシは戦況を自分の目で確認するだけ」

 「私はお嬢様のことが心配でなりません。僭越ながら私も同行させてはもらえませんでしょうか」

 「……」


 同行を提案したバートに対してクラリスはわずかに口角を上げた。


 「構わないわ。ついてらっしゃい」

 「恐縮でございます。このバート、誠心誠意お嬢様をお守りいたします」


 一方その頃、レイジをはじめとしたエルリック派の魔法使いたちはゴーレムたちを固唾を飲んで見守っていた。


 「レイジ様。本当にこれでオズ家の当主を誘い出せるのでしょうか」

 「案ずるな。中央に集中的にこれだけゴーレムを配置して周囲にはあえて何も配置していない。ここまで無防備に見せればクラリスは必ずやって来る」


 レイジは足を組んで余裕そうに答えた。

 現時点でエルリック派はクラリスの強襲によっていくらかの魔法使いたちを失っている。

 だがレイジは決して余裕を崩そうとはしない。


 「遠方よりゴーレムの接近を確認!」


 エルリック派の魔法使いの一人がレイジに報告を入れた。


 「来たか。規模はどうだ?」

 「ゴーレムが数十体。魔法使いと見られる人影が数名」


 レイジはニヤリと笑みを浮かべた。

 ここまでは想定通りに事が運んでいるからだ。


 「女の人影はいくつだ」

 「推定、一名」


 その報告を受けたレイジは腰を上げた。


 「これより対オズ派迎撃に本腰を入れていく。総員出撃態勢に入れ!」


 レイジの号令を受け、エルリック派の魔法使いたちも一斉に戦闘態勢に入っていった。


 中央に密集したエルリック派のゴーレムたちに対してオズ派の率いる少数のゴーレムが迫る。

 いよいよ戦争が激化を始めようとしていた。

 果たしてその戦いの行方は……

 



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