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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第4章 おじさんと魔法戦争
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おじさんとギルドの変化

 あれからさらに二日後。

 ギルドはオズ家とエルリック家が戦争を起こすという噂を受けてすっかり静まり返ってしまった。

 この情報は俺の口からは語っておらず、いつの間にか風の噂でやって来たものだ。

 流石は商人たちの国、情報が伝わってくるのが早い。


 俺たちクルセイダーは通常の業務である警備巡回を一時的に撤廃し、対暴徒の迎撃及び鎮圧の訓練を受けることになった。

 それに伴い、俺たちには全身を覆い隠せるほどの大盾が支給された。

 昔テレビで見たことがあるような機動隊のあの大盾とよく似ている。

 まさか自分が装備することになるとは思いもしなかった。


 「いいかァ!盾は相手の攻撃を正面から受け止めるもんじゃねえ、衝撃を受け流すためのもんだ」


 クルセイダーたちが一堂に会し、グレイさんによる講義が開かれた。

 全員が私語?どころか独り言すら零さず真剣に講義を聞いている。


 「今から俺とアレンで実演する。アレン!」

 「おう!」


 グレイさんに呼びだされ、アレンが前に出る。

 その手にはいつものハンマーが握られている。


 「まずは馬鹿正直に真正面から受け止めた場合だ」


 そういうとグレイさんは大盾を構え、その向こうに身を隠した。

 それに対してアレンはハンマーを構える。


 「ウオオオオオオ!!」


 鬼気迫る掛け声と共にアレンはハンマーを振りかぶり、盾の中心に勢いよく叩きつけた。


 「ッ!」


 アレンの一撃を正面から受け止めたグレイさんは反動で大きく仰け反り、地に足を着けたまま後退る。

 アレンのハンマーの一振りを正面に受けても壊れない辺り、この盾は相当に頑丈だと見た。

 

 「馬鹿正直に受けた場合は受けた衝撃がそのまま自分に来てこの通りよ。次に受け流す場合だ」


 そういうとグレイさんは再び盾を構えた。

 そして再びアレンがそこへハンマーを打ちつける。


 次の瞬間だった。

 グレイさんはアレンの一撃を受けた瞬間に、盾を使って右側へと打ち払った。


 「うおっ!?」


 勢い余ってアレンの体勢が前のめりになる。

 そしてその矢先に流れるような動きでグレイさんは盾を突き出し、姿勢の崩れたアレンをはね飛ばした。

 はね飛ばされたアレンは大きくよろめき、そのまま尻もちをついた。


 「おお!」


 その光景を見て俺は思わず感嘆の声を漏らした。

 直後に周囲からの視線が向き、慌てて冷静であるかのように取り繕う。


 「受け止めるか受け流すかでは対応速度にこんな具合に差が出る。だがこれはあくまで一対一を想定した動きだ。多数対多数が迎撃戦の基本、要は全員がこの動きをできれば余程のことでもない限りは暴徒どもはまず抑え込める」


 確かにその通りだ。

 同じ動きで徹底的に守れば易々と崩れることはない。

 

 「今日は一日盾を使って使って受け流す訓練だ。いいなァ!」


 俺たちは盾を構え、攻撃を受け流すための動きをひたすら訓練することとなった。

 グレイさんが教官、そして俺に対する暴徒役はアレンだ。


 アレンの一撃はすさまじく重い。

 盾の向こうからでも衝撃が伝わって腕が痺れる。


 「……ッ!」


 自分では受け流しているつもりだが衝撃を流しきれずに身体がよろめく。

 グレイさんですら正面から受けたら後ろに下がるほどだ、俺だったら吹き飛ばされていただろう。


 「おいタカノォ!なんだそのへっぴり腰はァ!」


 俺を目にしたグレイさんが凄まじい剣幕で怒鳴りこんできた。

 国の防衛がかかっているんだ、いつも以上に真剣で手厳しい。


 「重要なのはしっかりと足腰を構えることだ。そして攻撃を受け流す時は余計な力を加えず相手の力を利用するのをイメージしてみろ、多分マシになるだろう」


 でも、同時にアドバイスもくれた。

 なるほど、『相手の力を利用する』か。


 「ウオラァ!」


 再びアレンからの一撃が飛んでくる。

 教えられた通りにどっしりと足腰を構え、攻撃に備える。


 (来たッ!)


 大盾で攻撃を受ける。


 (相手の力を…)


 右腕で振った攻撃なら俺から見て右側に流せばいいはずだ。

 そのまま力を抜き、盾を右に払った。

 ……よし、なんかうまくいったぞ。


 「そうだ、その調子だ。力抜きすぎて盾を落とさねえようにな」


 グレイさんから褒めてもらえた。

 コツは掴めたし、あとはこれをものにしていこう。


 「今日の訓練はここまでだ。明日も引き続き鎮圧訓練を行う。解散!」


 グレイさんによって解散が言い渡された。

 すなわち退勤だ。


 昨日までとはうって変わって厳重に警備された門を抜け、俺は帰路に就いた。

 これからしばらくは用もなく夜間にギルドを通ることは許されないだろう。


 「ただいまー」


 そんなこんなで家に帰って来た。

 ミラからの返事はない。

 今日は何をしているんだろうか。


 ミラの部屋を覗いたが彼女の姿はない。

 まさかこんな時間に外に出かけたのか。


 いや、そんな心配は杞憂だった。

 ミラはオズの部屋でクロと寄り添うようにして眠っていた。

 一人でいるのが寂しくて仕方がなかったのだろう。


 オズがいない今、再び昼間はミラが一人になってしまっていた。

 また近所の兄ちゃんの世話になるだろうか。


 そんな中、俺の中にある思いが沸々と込み上げてきた。


 『オズに会いたい』


 おそらくオズは今は自分の屋敷にいるはずだ。

 屋敷に訪れたことはあるがあの時はオズの召喚魔法で直接飛んだから肝心の道程がわからない。

 果たして知り合いにオズの屋敷の場所を知っている人間が…


 いた。

 一人、確実に知っているであろう人物が。

 彼に頼ればオズの屋敷にたどり着くことができるかもしれない。


 明日は図書館へ行こう。

 そこにいる彼なら、もしかすれば……


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