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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第3章 ミラ、学校生活の始まり
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おじさんとミラのお小遣い戦争 その1

 今日の夜はいつも以上に騒がしい。

 すべてはあの一言から始まった。


 「ねえトモユキ」


 夕食中にミラが話を切り出してきた。


 「なんだ?」

 「『お小遣い』ちょうだい」

 「ウオッ!?ゲホッゲホッ!!」


 あまりに唐突すぎて思わず咽た。


 「ちょっ!?汚いんだけど!」


 咽たときに唾が飛んだらしくオズに怒られてしまった。

 申し訳ない。


 「で、なんで小遣いが欲しいんだ?」


 まずは理由を聞かなければ。

いきなり否定するのは流石に大人気ないし。


 「えっとね、学校終わってからお友達と遊びに行きたいの」


 なるほど。

 学校に行くようになったし、友達もできてミラもそういうことをしたい年頃なんだな。 

 俺がガキの頃は貰った小遣い何に使ってたっけ……


 「なるほどな。で、いくら欲しいんだ?」

 「千ルート!」


 思わず目を見開いた。


 「まさか一日で使うんじゃないよな?」

 「えっ、何か変?」


 変どころじゃねえよ俺たちの一週間の食費の半分ぐらいの額だぞ。


 「どうやれば一日でそんなに消費できるのか逆に聞きたいわ」

 「本を買ってー、服も買ってー、それからそれからー…」


 まずい、素直に要求を飲んだら確実に遊び惚けるぞ。

 なんとかいい着地点へ導かねば…

  

 「小遣いはやってもいいが千は多すぎる。少し額を減らせ」

 「えー、トモユキは一回の買い物で二千以上は使うのに?」

 「あれは一週間分の買い物だし俺たち全員が使うものだからいいんだよ」

 「本だって皆が読めるよ?」


 すごく返答に困ることを言うじゃねえか。


 「……」


 何もいい返しが浮かばない。


 「千がいい千がいい千ルートがいいのー!」


 とうとう駄々をこね始めたぞ。

 これぐらいのガキに癇癪を起されるととても耳に悪い。

 おまけにミラは一度こうなるとまるで言うことを聞かなくなる。


 「おいオズ、ちょっとミラを黙らせられないか」


 俺はやりとりを放置して一人で晩酌をしていたオズに救援を求めた。


 「とりあえず沈黙状態にしとけばいい?」

 「なんでもいい、早く頼む」

 「はいはい」


 俺からの返事をわかっていたように答えるとオズは指を鳴らした。


 「      」


 すげえ、ミラが何か言ってるみたいだけど何も聞こえねえ。

 これが沈黙状態か。

 少しばかり気の毒だが説得を聞いてもらうには今しかない。

 俺はミラの両肩に手を置き、視線の高さを合わせた。


 「いいかミラ、落ち着いて聞いてくれ」


 自分の声が届いていないことを理解したミラは落ち着きをある程度取り戻したらしく、大人しくこっちを見てきた。


 「俺たち大人は仕事をして自分で稼いだ金を使ってんだ。それはわかるか?」


 ミラは首を小さく縦に振った。

 話がわかる奴で本当によかった。


 「オズだってたくさん金を使うけどそのほとんどは自分の金だ。でも小遣いはミラが自分で稼いだものじゃねえだろ?だから俺たちが使うみたいに一度にたくさんはあげられねえんだ」


 俺はミラに対して持論を語った。

 それが正しいのかどうかはともかくとして今は考える時間を稼ぎたい。


 「小遣いをやるのは約束する。だからちょっとだけ考える時間をくれないか?」


 ミラはもう一度首を小さく縦に振った。


 「よし、いい子だ」


 頃合いを見計らったのかオズがもう一度指を鳴らした。

 それによってミラの沈黙状態が解ける。


 「本当に、約束だからね?」


 ふくれっ面で少し納得のいかないような目で俺を見てからミラは駆け足で自分の部屋へと戻っていった。


 「別にいいじゃん小遣いぐらい。アンタ高給取りなんだし」


 グラスでこの前買ったワインを煽りながらオズが口を挟んできた。


 「俺の給料の問題じゃねえんだよなぁ」

 「じゃあ何の問題?」

 「ミラはこれから金銭感覚を身に着けてくっていう年頃だぞ、そんな時期にお前が使うような額をポンポン渡したらどうなると思う」

 「別にどうもしないでしょ」


 まさかコイツ、自分の金遣いの荒さを自覚していないのか。

 ちょうどいい、ここで過去の惨状を突きつけてやるか。


 「お前がうちの金を勝手に使ってた頃はかなりヤバいところまで追い詰められてたんだぞ。ミラの金銭感覚がお前みたいになったら間違いなく我が家は破滅だ」

 「えっ……そうだったの……?」


 マジで自覚してなかったみたいだ。

 これを機に少しぐらい反省してくれねえかな。


 「でも約束しちまった以上は渡さねえといけないんだよ……いくら渡せば納得してくれるだろう」

 「アンタがミラの立場だったらどれぐらい貰えれば納得できる?」


 俺がミラの立場だったらか……

 要求は千ルートだ。

 一度高すぎると突っぱねられて、提示されてギリギリ納得できるのは七から八百ぐらいだろうか。

 難しい問題だ。


 「答えは出ねえな。人間ってのはいざ貰う立場になるといくら貰っても『もっと欲しい』って考えちまうもんだからさ」

 「わかる。アタシも同じこと考えるだろうし」


 やはりこの感覚はどんな世界の人間でも共通のものなのか。


 一日で使う額として考えると千ルートは子供には多すぎる。

 かといって減らしすぎるとさっきみたいにまた愚図るに違いない。

 全国の親たちも子供のお小遣いについてこんな風に悩んだりしてるんだろうか。

 教えてくれ、こんな時はどうすればいいんだ。


 とりあえず明日の朝に七百ルート手渡して様子見するか……


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