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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第14章 二人娘の成長
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両手に花

今回も三人称視点の話です。

 「ミラちゃん、もうすぐギルドに着くよ」

 「うーん……」


 ユキノに声をかけられ、ミラは生気の薄い返事を返した。

 起床して数十分は経過したはずだが、どうにも寝ぼけて調子が上がらないようだ。

 さっきから目が半開きだ。


 「着いたよ。さあ服屋に行こう!」

 「うーん……うん?」


 寝ぼけていたミラが徐々にその目を見開き始めた。

 ようやくいつもの調子に戻り始めたのだ。


 「ようやく起きた?おはよう」

 「おはよう!」


 声をかけたイズナに対してミラは普段と変わらない明るい挨拶を返した。

 ようやく本調子になったミラに対してイズナとユキノは小さくため息をつく。


 「どうしたの?早く服を見に行こ!」


 あまりにも違う普段と寝起きのギャップに二人はただただ困惑させられた。

 そんな二人の心境はいざ知らず、ミラは二人を引っ張って服屋へと足を進めていった。


 「ミラちゃんはどんな服が気になる?」

 「んっとね、ズボンを履いてみたい」


 予想外の返答にユキノは思わず困ってしまった。

 彼女はこれまでズボンを履いたことがなかったのだ。

 経験のないものに対してリードをすることはできない。

 

 一方、それとは対照的にイズナはこれ見よがしと目を輝かせた。

 彼は男性の衣服にも女性の衣服にも精通している。

 ファッションのリードは得意分野なのだ。


 「どんなズボンを履いてみたい?」

 「丈が膝ぐらいのやつ!」

 「じゃあ一緒に見てあげるよ」


 イズナはワクワクしながら希望を語るミラの手を引いた。

 そして嘲笑するかのようにユキノを流し目でちらりと覗き込む。


 「ぐぬぬ……」


 自分の手が出せない分野に精通しているイズナを認めざるを得なかったユキノはそっぽを向いて下唇を噛みしめた。


 「丈はこれぐらい?」

 「うーん、もうちょっと長めの奴がいいかな」

 「じゃあこれとか?」


 ミラの好みに合った衣服をイズナは甲斐甲斐しく探しては持ってくる。

 その姿を見てユキノは焦りを覚えた。

 このままでは彼女の意識が完全にイズナに傾いてしまう。

 ミラの心の中を読み取り、ユキノは形勢逆転の一手に出た。

 彼女の中で興味があり、自分にリードできそうなものは……


 「ねえねえミラちゃん」

 「何?」

 「『化粧品』興味あるでしょ」

 「ある!」


 一瞬でミラは興味を惹かれた。

 彼女はつい最近からクラリスに化粧を教えてもらっている。

 つまり最も自分で手を出したい事象なのだ。


 「あとで一緒に見に行かない?」

 「行く行く!」


 ユキノの誘いにミラは目を輝かせた。

 衣服に関して趣が深い一方で化粧に疎いイズナはさっきまでとは打って変わって悔しそうにユキノを睨む。


 新しい服を購入した一行は予定を少し変更して化粧品店を訪れた。

 初めて訪れる店を前にしてミラはワクワクが収まらないようだ。


 「ここ、よくお母さんと一緒に来るの」

 「へぇー」


 ユキノの紹介にミラは純粋な相槌を打った。


 「ミラちゃんはどんなお化粧に興味がある?」

 「えっとね、目の下にする化粧かな」

 「もしかしてクマ隠しかな」

 「当たり!」


 女の子同士の会話についていけずイズナはやきもきとさせられた。

 『せめて簡単なメイクさえ理解できれば』そう考えずにはいられない。

 ならば今の自分にできることは……


 「ボクがミラちゃんになってあげるから、似合うかどうか確かめてみてよ」

 

 そういうとイズナは変身魔法を発動し、ミラとそっくりそのまま同じ姿を写し取った。

 自らが化粧の叩き台になること、それが今のミラに対して最も貢献できることだと考えたのだ。


 初めて目にするイズナの能力にユキノは目を丸くした。

 変身魔法はイズナが最も得意とする魔法であり、その精度はミラをもはるかに上回る。


 「あとでお化粧落とさなくても大丈夫?」

 「大丈夫。変身を解けば全部元通りになるから」

 「ありがとう!店員さん呼んでくるね!」


 瀬戸際での巻き返しにユキノは再び下唇を噛んだ。



 それから経過すること数十分。

 化粧品店を出たミラは満足げな表情をしていた。

 その一方、ミラを巡って水面下で一進一退の攻防を繰り広げているイズナとユキノは互いをキッと睨みつける。


 「ユキノもイズナもありがとう!」


 ミラからの嬉しそうな一言に二人はハッとさせられた。

 今日は元々ミラに楽しんでもらうために一緒に出掛けたのだ。

 決して小競り合いをするためではない。


 「まあ、ミラちゃんが嬉しそうだし、これでよかったのかな?」

 「そうだね」


 二人は顔を見合わせるとクスリと笑った。

 

 「じゃあ図書館に行こっ!二人は何を勉強したい?」

 「ボクは魔法陣研究がいいな」

 「私は人物史」

 「わかった。じゃあどっちも教えてあげるね」


 二人にリードされて終始ご機嫌だったミラは二人の手を引き、図書館へと向かっていくだった。

 

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