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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第14章 二人娘の成長
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お見舞いに来た

 ミラが熱を出したその日の夕暮れ時。

 アリスはリビングを気ままに歩き回っている。

 オズがソファの上に腰掛けてその様子を見守っている。


 そして俺はというと、久々にクロの身体を洗ってやっていた。

 夏場に水を受けるのが心地よいのか、クロはゴロゴロと喉を鳴らしている。

 犬みたいな性格してる癖してたまに猫みたいな仕草をするんだよなコイツ。


 「こんばんはー」


 クロのボディケアをしていると、聞きなれた声が俺の耳に届いた。

 声のする方へ振り向くと、そこにはユキノちゃんの姿があった。


 「こんばんは。今日はどうしたの?」

 「学校にミラちゃんの気配がなかったので病気でもしちゃったんじゃないかって心配になっちゃって……」


 第三のお母さん現る。

 ユキノちゃんは何かとミラのことを気にかけてくれるが、まさか自由登校期間中に一日来なかっただけでここまで推測してくるとは。

 末恐ろしい子だ。


 「ミラちゃんは大丈夫ですか?」

 「自分の部屋にいるよ。体調崩してるからあんまり騒がないでやってくれ」

 「わかりました。お邪魔します」


 俺と軽いやり取りを交わしたユキノちゃんは玄関を通ってミラの部屋へと向かっていった。

 何も教えてないのにお見舞いに来るとは誰が予想できただろうか。


 ユキノちゃんが来てからさらに数分後、我が家に久々に顔を見る来客が訪れてきた。


 「あの……お久しぶりです」


 金色の毛の狐の獣人、イズナ君だ。

 ちょっと見ない間に背が伸びたなぁ。


 「久しぶり。今日は何かの用事?」

 「久しぶりにミラちゃんと顔を合わせようと思ったんですけど、熱を出したって聞いたのでお見舞いに来ました」


 お母さんその四かな?

 というかどこからその情報を手に入れた。

 元々この狐の獣人一家はすさまじい情報網を持ってるけどこんなことまで知られているとは。


 「ははっ、よく知ってるね……」


 思わず乾いた笑いが出た。


 さて、この瞬間俺はあることに気が付いた。

 イズナ君の声が前よりも低くなっているのだ。

 ということはこの子はやっぱり……


 「ねえ、ちょっと声変わった?」

 「わかりますか?最近声が変わり始めたんです」

 「じゃあ君は男の……」

 「それ以上は言わなくても大丈夫です」


 イズナ君は俺の口元に指をあて、その後に続く言葉を封じ込めてきた。

 なんというかその、目元とかの色気がすごい。

 信じられるか?

 これでミラと同い年なんだぞ。


 「ミラは自分の部屋にいるから。後は好きにしていいよ」

 「ではお言葉に甘えて。失礼します」


 イズナ君も玄関を抜けて行った。

 はぁ……ちょっとドキドキさせられたんだが。

 流石は狐の獣人、魔性は母親譲りか。


 さて、ほぼ同じタイミングで二人の友人がお見舞いにやってきたわけだがどうしているのだろう。

 俺はクロの身体を拭き、その背に乗って屋根の上へと移って上から聞き耳を立てることにした。


 「ミラちゃん!大丈夫!?」


 この声はユキノちゃんか。

 相変わらずミラのことになると必要以上に心配しているな。


 「大丈夫。ちょっと疲れが溜まっちゃっただけだから」

 「そうなの。具合悪くなったら言ってね。私ができることなら何でもしてあげるから。あ、これ今日の授業の板書だよ」


 歳の近いオカンじゃねえか。

 ここまで甲斐甲斐しく尽くしてくれる友人もそうそういないな。


 「ミラちゃん、久しぶり」

 「イズナ……?久しぶりだね」

 「うん、ミラちゃんが中等部に入ってから全然話してなかったもんね」


 そうだったんだ。

 まあ中等部と初等部に別れちゃったわけだし、そうなるのは仕方ないことだ。


 「えーっと、誰?」

 「イズナだよ。ミラが初等部にいたときからの友達」

 「へー……」


 あれ?

 ちょっとユキノちゃんの声のトーンが下がった気がするんだが。

 これってもしかして……


 「ミラちゃん、この子は誰?」

 「ユキノって言ってね、中等部でできたお友達だよ」

 「うん、そうなんだ」


 一方でイズナ君もちょっとテンションが落ちているような。

 

 「ミラちゃんにお見舞いを持ってきたんだよ」

 「ありがとう。でもなんで知ってるの?」

 「薬屋のお婆さんから聞いたの」


 なぜ薬屋に行く用事があったのかはともかくとして、情報源はそこか。

 変に尾行とかされてたんじゃないかって考えてたからちょっと安心した。


 「そっか。ありがとね」

 「ゴメン……私何も用意できなくて……」

 「ううん、ユキノも来てくれただけでうれしいよ」


 病人にフォローを入れさせるなよ。

 

 「あんまり長くいるのも悪いし、ボクはそろそろ帰るね」

 「ありがとう。今度いっしょに遊ぼうね」


 イズナ君が切り上げを言い渡した。

 やっぱりそういうところの礼節をちゃんとわきまえてるいい子だな。


 「じゃあ私もそろそろ帰ろうかな」

 「うん、二人とも帰り道には気を付けてね」


 二人の来客がお見舞いから切り上げ、我が家の玄関を出ていくのを俺は屋根の上から見守った。

 そしてその道中……


 「私の方がミラちゃんと仲良しなんだから!」

 「ボ、ボクだって君より前からミラちゃんと友達だったよ……?」


 ユキノちゃんとイズナ君、ミラの友人二人によるキャットファイトが展開されていた。

 部屋の中でも睨みあっていたのだろうか。


 「二人とも仲良しさんなのかな?」


 ミラのぼやきが聞こえてくる。

 熱で思考がぶっ飛んでいるな、普通じゃそんな風には見えんぞ。


 あの二人、ミラがいない場所で対面させちゃダメだな。

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