表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第14章 二人娘の成長
234/521

一緒にトレーニング

 ミラと一緒にランニングをした翌日。

 季節は廻り、夏が始まった。

 昨日までの穏やかな陽気はどこへやら、灼熱を帯びた強烈な日差しが容赦なく照り付けてくる。

 

 休日の暇つぶしも兼ねて俺はミラの様子を見ることにした。

 たぶん今頃筋肉痛にうなされていることだろう。


 「うーーーーーん……」


 案の定というかなんというか。

 ミラの部屋から彼女の呻き声が聞こえてくる。

 

 「入るぞー」


 事前にひと声をかけ、俺はミラの部屋を覗いた。

 ミラはというと寝巻姿のままベッドの上ではいつくばっていた。

 

 「あ、おはようトモユキ……」


 おはようとは言っているがもう十一時なんだよなぁ。

 元々早起きが苦手な子だけどまたそれが悪化したか?


 「身体の方はどうよ」

 「足と脇腹が痛い……」


 見事に運動始めた人あるあるな筋肉痛を起こしているな。

 初めて筋肉痛を経験する分、キツいだろう。


 「やっぱ運動不足だったみたいだな」

 「むぅ……」


 俺におちょくられたのか気にくわなかったのか、ミラは頬を膨らませた。

 つっついてみたいがやったら怒りそうだからやめておこう。


 「これから解消していきゃいいんだよ。まあ、無理に動かしすぎるなよ」

 「どれぐらいで治る?」

 「明日にはまた走れるようになるだろ」

 

 ミラはまだまだ若いし、よほどひどくない限り筋肉痛は一日あれば治る。

 早ければ夕方ごろにはもう楽になっているぐらいだろう。


 「トモユキはどうしてそんなに運動できるの?」


 ミラはふと俺に疑問を投げてきた。

 俺が運動できる理由か、そうだな……


 「そうだな……ちょっと昔話でもしてやろうか」

 「うん」


 俺はミラの隣に腰を下ろした。


 「俺がちょうど今のミラと同じぐらいの時だったっかな。俺、昔からあんまり勉強得意じゃなくてさ」

 「うん。なんとなくそんな気がしてた」


 言うようになったじゃねえか。

 

 「でも周りより体力だけはあってさ、身体動かすのが好きだったからいろいろスポーツやってたんだ」 

 「スポーツって?」


 あー『スポーツ』っていう単語がないのか。

 どうやって言い換えればいいかな。


 「あー、所謂『競技』だ。徒競走とか水泳とかな」

 「だから運動ができるんだね」

 「そういうことよ」


 いろいろやったなぁ。

 短距離、長距離にハードル、走る競技は一通りやってみたっけ。


 「筋肉痛にはならなかったの?」

 「新しい競技に挑戦したときは練習の後に必ず筋肉痛を起こしたもんだ。それにな、運動に慣れていてもやりすぎれば筋肉痛にはなる」


 今だって時々筋肉痛を起こすことがある。

 不必要に心配されたくないから隠してはいるんだが。


 「ミラ。運動において大事なことが一つある」

 「なに?」

 「運動っていうのはただひたすら量をこなせばいいってわけじゃない。無理しすぎない程度の強度で適度に続けていくのが大事なんだ」


 健康のためにやっている運動で身体を壊してしまっては元も子もない。

 それにミラは一度のめりこむと我を忘れて無茶をしがちだ。

 だからそうなる前に先立って教えておかなければ。


 さて、それはそれとして……


 「筋肉痛なのは足と脇腹だったよな」

 「うん」

 「よし、じゃあ今日は上半身のトレーニングをしてみるか」


 筋トレに励んでた学生時代の記憶が蘇ってきた。

 昔のことだから今は正しいかどうかわからないけど、培った知識が役に立ちそうだ。


 「腹筋やってみるか」

 「どういう運動なの?」

 「こうやって、仰向けになった状態から上半身だけを起こすんだ。こんな風にな」


 床に仰向けになって実演してみせた。

 ミラは興味深そうに上から覗き込んでいる。


 「どんな効果があるの?」

 「腹が引き締まる。ウエストがすっきりして大人っぽく見えるかもな」

 「やる!」


 『大人っぽい』という単語にホイホイ釣られるな。

 扱いやすいんだが他所でそういうのに引っかからないか心配だ。


 「はいまず仰向けに寝転がって、足を曲げて……よーし準備オッケーだ」


 これで準備完了だ。

 さて、目標回数を設定するか。


 「じゃあ十回ずつを三セット行くぞ。コツは勢いを付けずにゆっくりとやることだ。俺が数えとくからやってみろ」


 クルセイダーの基礎訓練では五十回を三セットだが、ただでさえ運動不足のミラにそんなことをやらせたらどうなるかは目に見えている。 

 強度的にはこれぐらいが妥当か。


 「いーち、にー、さーん」

 「んっ……!ふぅ……!」


 ミラは俺の教えたとおりに数をこなしている。

 四回目を過ぎたあたりから呼吸が荒くなってきた。

 これは目標を二セットにしたほうがいいかもしれないな。


 「しーち、あと三回だぞー」

 「うっ……!んん……!」


 なんというかその、ミラの吐息がちょっと色っぽい。

 これが魔性か……


 「きゅー、十!よし、いったん休憩だ。呼吸を整えたらもう一回だ」

 「はぁ……はぁ……」


 たったの十回でバテたのか。

 昨夜に運動不足なのは確認できたがまさかここまで深刻だったとは。


 「三セットって言ったけど、二セットにするか?」

 「いや、三セットやる……」


 相変わらず変なところで頑固なんだよなぁ。

 こうなると何も効かなくなるし、本人の要望通りに三セットいくか。


 一セット終わるごとにインターバルを挟み、ミラは腹筋を二セット目まではやり遂げた。

 そして今三セット目なんだが……


 「んうっ……!ふうぅ……!」

 「さーん、しー……」


 完全にミラの息が上がっている。

 もう意志の力だけで身体を動かしているような状態だ。

 良くも悪くもこの子らしいんだが。


 「頑張れ、あと五回だぞ」

 「うぅ……も、もうダメ……」

 「あと五回、お前がやるって言ったんだろ?」


 音を上げそうになったミラに檄を飛ばして最後まで続行を試みる。

 

 「ろーく……しーち」

 「あうぅ……」


 あと三回だ。

 もう時々漏れるミラの吐息が完全に喘ぎ声にしか聞こえないから勘違いされたりしないか心配だ。

 特に……


 「何してるのー?そろそろお昼にしようと思うんだけど」


 恐れていたことが起こった。

 偶然にもオズが覗き込んできたのだ。


 「……」

 「……」


 気まずい空気が流れる。

 仰向けに寝転がり、顔を紅潮させて呼吸を荒げるミラ、そしてそんな彼女の両足を抑えて固定している俺。

 構図が非常によくない。


 「……最低」 

 「いやっ、違う!これはだな……おい待てって!」


 オズは俺にボソッと冷たい言葉を吐き捨てるとドアを閉めて足早に去ってしまった。

 前にも似たようなことあったな。

 またしても不可抗力というかなんというか。


 なんでこう、俺はこういうイベントに遭遇しやすいのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ