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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第14章 二人娘の成長
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おじさんの誕生日?

 それはとある休日、ミラと一緒にギルドへ買い出しに来ている最中のことだった。

 

 「ねえトモユキ」

 「なんだ」

 「トモユキの誕生日っていつなの?」


 ミラが初めて俺の誕生日に関して踏み込んできた。

 そういえば俺はミラたちのことをいろいろと知っているが逆にミラたちは俺のことをあまり知らないんだよな。

 元いた世界の情報を与えると混乱するかもと思って俺が意図的に教えなかったというのもあるが聞かれたからには教えよう。


 「俺の誕生日……十月十一日だ」


 初めて俺の誕生日を聞いたミラはエラーを起こしたかのように表情が固まって首を傾げた。

 こうなるのも当然だ。

 そもそも俺のいた世界とこの世界じゃ暦が違うんだから。


 「帰ったら詳しく教えてやるよ」

 「うん、お願い」


 というわけで、買い出しを終えた俺はミラに元いた世界の暦について教えることにした。


 「ミラ、俺がこの世界の人間じゃないってことは覚えてるよな」

 「もちろん」


 よかった。

 日本に旅行に行ったのはもうかなり前になるけど覚えていてくれたみたいだ。


 「じゃああっちの世界の暦について説明するぞ。だいたいこんな感じになってる」


 俺は紙と筆記用具を取り出し、カレンダーを書き起こした。

 このタイプのカレンダーを見るのも懐かしいな。


 「えーっ!?一月が三十日で区切れないの!?」

 「その通り。しかもきっちり九十日で季節が移り変わらない」

 「ほえー」


 ミラはじっとカレンダーを眺めている。

 異世界の文化に触れることなんてないからなおさら興味を惹かれるのだろう。

 

 「しかも面倒くさいことにあっちの世界には曜日というものが存在してな」

 「曜日?」

 「そう。日、月、火、水、木、金、土、七つもあるんだ。このカレンダーは一月一日が日曜日だった場合の奴だから翌年は暦が少しずれる」

 「なんでずれるの?」

 「一年が三百六十五日だからだ」


 すっかりこっちの暦に慣れてしまったもんだから曜日がずれるという感覚がイマイチ思い出せなくなっていた。

  

 「三百六十日にすれば数えやすいのにね」

 

 本当それな。


 「うーん……こっちの世界だといつの何日になるのかな」


 ミラはカレンダーを睨みながら考え事をしている。

 ズレが微妙すぎて計算するのが難しい。


 「一月一日が春の一日目だとすると……十月十一日は冬になるのかな?」

 「あー、あっちの世界だと一月一日は冬だ」

 「えっ!?」


 旧暦だと春なんだが新暦だと冬だ。

 ただでさえ複雑な暦が何種類もあるもんだからもう考えるのを放棄したくなる。


 「三月から五月が春、六月から八月が夏、九月から十一月が秋、十二月から二月が冬だ」


 一応、暦上ではそういうことになっている。

 三月が肌寒かったり九月がクソ暑かったりするから体感では全然そうは思わないが。


 「じゃあ、九月の一日が秋の一日目だから十月の十一日は秋の四十一日目になるよね。あれ?でも春も夏も九十日で終わらないからちょっとズレる?あれ?あれぇ?」


 暦のズレに気づいたミラが逆算しようとして頭をパンクさせてしまった。

 

 「何してるの?」


 ミラの珍しい声を聞きつけたオズがアリスを連れて二階から降りてきた。

 

 「ちょっと俺の誕生日の話をしててな」

 「あー。そういえばアタシ、アンタの誕生日知らない」

 

 まあ、教えてないからな。


 「もう結婚して三年になるのに夫の誕生日知らなかったなんてダメな奴だアタシ……」


 なぜかオズが滅茶苦茶落ち込んでしまった。

 そんなに気を落とすことだろうか。

 

 「で、俺のいた世界の暦をミラに教えたんだが」

 「こっちの世界だといつになるのかなーって」


 そう言いながらミラはカレンダーをオズに見せた。

 オズはそれを数秒ほど見つめ、すっとミラに送り返した。


 「一週間が七日あって、一月一日はまだ冬で春が三月一日から始まって、それからそれから……」

 「うん、さっぱりわからないわ」


 俺からの受け売りの説明をミラから受けたオズはあっさりとさじを投げた。

 だろうな。

 俺もなぜ理解できていたのかわからない。


 「で、アンタの誕生日がこっちだといつになるのかって話だったわよね」

 「そうだな」

 「小難しく考えなくてもこの辺でいいんじゃない?」


 そういうとオズはこっちの世界のカレンダーのとある場所をビシッと指さした。

 指された日付は秋の四十日。

 ミラが見当を付けた場所とだいたい同じだ。


 「まあいくら計算しても正確な日時は出ないだろうし、俺もこの辺でいいと思う」

 「じゃあ決定!アンタの誕生日はこっちでは『秋の四十日』よ」


 そんなこんなで俺の誕生日が『秋の四十日』になった。

 生きているうちに誕生日が全く違う日に変わるなんて誰が想像しようか。

 

 「しかし、どうして急に俺の誕生日が気になったりしたんだ?」


 俺はミラに動機を尋ねてみた。

 今まで何も気にしてなかったのにどうして今更聞いてきたのだろう。


 「トモユキはミラやお姉ちゃんの誕生日を絶対にお祝いしてくれるでしょ。でも自分の誕生日には何もしてないなーって思ったから何かお祝いがしたくて」


 ええ子やなぁ。

 ほんまええ子や……


 「別にいいんだよ。俺のことを気にしなくても」

 「いやよくない。アタシたちがそうしたいの」


 オズが食い下がってきた。

 そこまで言うのなら止めることはできない。


 ミラとオズはじっと俺の顔を見つめる。

 二人とも、俺が想像してたよりもずっと俺のことを大事に想ってくれてるんだな。


 「ありがとな。楽しみにしてるぞ」

 「絶対にお祝いしてあげるね」

 「めーーーーーっちゃ期待してくれていいわよ!」


 こうして、我が家のカレンダーの秋の四十日に印がつけられた。


 「アリスー、ペンは食べられないよー」

 「そんなもの飲み込んだら息できなくなっちゃうわよー」


 ふと気が付けばアリスがペンを口に入れようとしているのをミラとオズが食い止めている。

 迂闊に手の届くところに置くとすぐにこれだからなぁ。


 この世界での俺の誕生日、秋の四十日。

 今からまだまだ先になるけれど、二人は何をしてくれるんだろうか。

 楽しみだ。

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