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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第14章 二人娘の成長
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アリスの一人立ち

 ミラの十歳の誕生日という一大イベントが終わった。

 大きなイベントは終わったが、その後も我が家ではイベントが続いている。


 「アリスー、そっちは行っちゃダメよー」


 そう、アリスが自分の足で歩けるようになったのだ。

 自力で移動できる範囲が広がったからか、彼女は自分の好奇心の赴くがままに歩き回っている。

 この活発さは母親譲りか。


 「アンタも目を離しちゃダメだからね」

 「わかってるって」

 「じゃあすぐにアリスを止めて」


 ふと見るとアリスは風呂場に赴こうとしていた。

 風呂場は足が滑りやすい、転ぶ可能性が高いし、石鹸を口に入れてしまったりしようものなら大変だ。


 「ほーらアリス、戻ろうな。ほら捕まえたー」


 アリスの脇を抑えて抱え上げた。

 生まれたばかりの頃に比べればずいぶんとずっしりとしたもんだ。


 「うー!やー!」


 どうしても風呂場に行きたいらしいアリスは俺の宙に浮いた身体をじたばたさせて駄々をこねてきた。

 なぜそこまでして風呂に行きたいのだろうか。


 「ただいまー」

 

 難儀しているところへミラが帰ってきた。

 すると一変、さっきまで駄々をこねていたアリスは何事もなかったように大人しくなってミラの方へ身体をよじった。

 もしやと思った俺はアリスを降ろして足を床につけさせてみた。

 案の定というかなんというか、アリスはミラの方に向かって一切の迷いなく歩き始めた。


 おぼつかないよちよち歩きではあるがアリスはまっすぐに歩いていく。

 そんな彼女を迎え入れるようにミラは腰を屈めて両手を広げる。


 「おいでおいでー。お姉ちゃんが待ってるよー。よーしえらいえらーい!」


 ミラは自力でたどり着いたアリスを褒めながら抱きあげた。

 アリスも大喜びだ。

 なんだかんだでアリスの扱いを一番ものにしているのは彼女じゃないだろうか。


 その一方、まだ一歳にも満たないにも関わらずシスコンの気があるという現実を見せつけられて俺は頭を抱えた。



 アリスが一人で歩けるようになって数日後。

 その日、俺はクロを駆って仕事で外回りをしていた。


 空を飛びまわり、いつも通りに予定より早く外回り業務が終わった。

 せっかくだし、もう一周ぐらいじっくり時間をかけて見回ってみるか。


 「ん……?」


 公園の上空から俺は見慣れた人影を見つけた。

 オズとアリスだ。

 所謂『公園デビュー』ってやつか。

 ここなら家の中より動き回れるし、新しい遊び場として申し分ない。


 クロを着陸させ、声をかけることにした。

 

 「すげー!」

 「ねえおじさん!ドラゴン触ってもいい?」


 着陸するなり子供たちが俺のところへ集まってきた。

 いまだにクルセイダーに竜騎隊という役職を持った人物が俺以外にいないというのもあってなぜだか子供たちに大人気だ。


 「いいぞー。でもあんまり触りすぎちゃダメだからな」

 「はーい」


 適当に子供たちをクロと戯れさせ、俺はオズとアリスのところへ向かった。


 「仕事中?」 

 「まあな。偶然通りかかったからひと声かけようと思ったまでだ」


 ベンチに腰を下ろし、アリスを観察しながらオズと会話を交わす。

 仕事中にこういうことをしても少しぐらいなら誰にも咎められることはない。

 やはりこちらの世界だからこそだ。

 

 「おいおい、転ぶぞ……あーあ」

 「うあああああああああん!!」


 言わんこっちゃない。

 前のめりになるがあまりにバランスを崩して転んでしまったアリスは大声で泣き始めてしまった。

 慌ててオズが彼女の側へすっ飛んでいく。


 「よしよし、痛かったねー。ほら大丈夫大丈夫」

 

 オズはアリスを抱き起こし、砂埃を払ってあやす。

 しかしアリスは泣き止まない。


 「参ったわねー。アンタなんとかできない?」


 いきなり言われてもなぁ。

 赤ちゃんをあやすのはどうも不慣れでなぁ。


 「ほーらアリスー。痛いの痛いのとんでけー」


 日本では定番のおまじないを試してみた。

 なぜか子供にはウケるのだ。

 一方でオズは呆然と俺の顔を見ている。


 「なんだよ」

 「そんなんで痛みがなくなるわけないじゃん」


 オズが冷めた目でツッコミを入れてきた。

 急に現実的になるな。

 普段はノリと勢いで動いてるようなものなのにたまにありえないぐらい冷静になるんだよなオズって。


 「気分の問題なんだよこういうのは。ちょっと一芝居付き合ってくれよ」

 「はいはい」


 でもなんだかんだいってこういうのに付き合ってくれるからいい奴だ。


 「痛いの痛いの飛んでけー」

 「うっ!?うぐうっ!?」


 俺からジェスチャーを受けたオズが足を抑えて地面を転げまわってみせた。

 確かに一芝居付き合えとはいったが痛みの演技が迫真すぎる。

 これじゃ恐怖心を煽って逆効果じゃないか。

 せめて『軽めに』と一言伝えておけばよかったな。


 「へへー。へへっ」


 俺の懸念とは裏腹にアリスは泣き止み、逆に笑っている。

 なぜウケた。

 そもそも何が面白かったのかさっぱりわからん。


 「なんかこう、いろいろ突っ込みたいところはあるけどアリスが泣き止んだならそれでいっか」

 「そうね」


 俺とオズは顔を見合わせて共に苦笑いした。

 子供の感性というのはどうも理解できない。


 なんだかんだしてたらいい具合に時間が経過していた。

 もうそろそろ仕事に戻った方がよさそうだな。

 

 「君たち、おじさんそろそろ仕事に戻るからドラゴンから離れてくれよー」

 

 子供たちに声をかけ、クロから離れさせた俺はクロの背の上に身を移した。


 「ありがとー!」

 「おう!またいつか会おうな」


 子供たちに挨拶をし、俺は再びクロを飛翔させた。

 地上からは子供たちとオズが手を振っている。

 俺は彼女たちに手を振り返し、仕事へと戻っていった。


 

 うちの娘は今日も元気に成長している。

 けれどもちょっと危なっかしくて、いろんな意味で目が離せない。

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