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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第13章 友情の光
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エピローグ:光属性の魔法使いたち

今回は途中で視点が切り替わります。

 ミラはギルド内の図書館を訪れていた。

 学校がないとき、彼女にとってはここが第二の学び舎になる。

 

 今日は級友のユキノも一緒だ。

 二人で一緒に試験に向けた勉強をするようだ。


 「試験日までに学校再開するかな?」

 「わかんないけど、勉強はしておいた方がいいよ」

 

 彼女たちは学校閉鎖の影響を全面的に受けている。

 いつ再開するかわからないが、その時に向けて自主学習を進めるのだ。


 「ほう、図書館で自主学習をするとは感心だ」


 ミラたちの後ろから聞き覚えのある声がかかった。

 声のする方へと振り向くと、そこには詠唱魔法の教師であるテオ・ソリウスが立っていた。


 「テオ先生!」

 「どうしてここに?」

 「私の研究室が閉鎖されてしまってな、退屈凌ぎにここを訪れていたまでだ」


 ユキノからの問いに対してテオは答えた。

 彼の研究室はメルクーア魔法学院の中にあり、学校が全面的に閉鎖されている関係で使用できなくなっている。

 

 「ここで教え子に会うのも何かの縁というだろう。私も暇を持て余しているし、ここで課外授業をつけてやろう」


 そういうとテオは懐から教典を取り出した。

 授業内容はもちろん『詠唱魔法概論』だ。



 「……今回の授業はここまでだ」


 授業開始からしっかりと九十分が経過した。

 テオは静かに教典を閉じ、その一言で授業を締めくくった。

 

 「先生」


 ユキノが恐る恐る手を挙げ、テオに質問を試みた。


 「なんだね」

 「先生は、どうして光属性が嫌いなんですか?」


 その質問にテオは表情を固めた。

 

 「あの……お答えしたくなければそれでもかまいませんので……」


 ユキノは控えめに言った。

 人の心を読むことができる彼女にはそれが言いづらい理由であるということが理解できたのだ。


 「昔、私の教え子にある光属性の魔法使いがいてな」


 テオはゆっくりと語り始めた。

 

 「彼は学校のためだ他の生徒のためだといってはいろいろと厄介ごとを起こす問題児でな。当時もいろいろと手を焼かされた」


 昔を語るテオに対し、ユキノはなにか思い当たるような表情を見せた。

 だが口にするのを抑え、じっと話を聞く。


 「ある時遠方の魔法学院の不良生徒がメルクーア魔法学院まで押しかけてくるっていう事件があった。その教え子は当然のようにたった一人、生徒として教師に混じって立ち向かったのだ。最終的には撃退したものの彼は重傷を負い、その左腕には今でもその時にできた傷が残っている。確か彼の名はなんといったか……」

 「ナオト・ルーチェ……ですか?」


 テオの語りを聞いて確信を持ったユキノがその名を答えてみせた。


 「なぜその名を……」

 「その人、私のお父さんです」


 ナオト・ルーチェ、ユキノの父にしてかつてのテオの教え子の一人。

 衝撃の事実に隣で一緒に話を聞いていたミラは目を見開く。


 「人一倍勤勉で、人一倍正義感が強く、そして人一倍無謀で命知らずの世話焼かせ。だから私は光属性の魔法使いが嫌いなんだ」

 

 それがテオからの答えだ。

 

 「ユキノ君、ミラ君、君たちは今回の事件の解決に協力したようだが」

 「えっ、あっ、はい……」

 「やはり、無謀で命知らずなのは親譲りか」


 テオは呆れるようにため息をついた。


 「じゃあ、先生の光属性嫌いっていうのは……」

 「別に憎んでいるわけではない。一部の連中が勘違いしてさも憎んでいるように吹聴しているようだが勘違いしないでもらいたい」


 事実を知ったユキノの表情がパッと明るくなった。


 「このことは言いふらさないように。私に『嫌われたくなければ』な」


 テオは冗談交じりに釘をさすと、そのまま席を立った。


 「どこへ行くんですか?」

 「今の教え子を見て回ることにした。課外授業は飽きるもではないのでな」


 足を進めながらテオはミラたちにそう告げた。


 「今日はありがとうございました」


 ミラたちからのお礼の言葉を背に受け、テオは無言で図書館を去った。

 彼の教師としての使命は尽きることはない。



 ――――――――



 メルクーア魔法学院のクーデター事件から数日が経過した。

 学校は校舎の一部が破損した影響で改修工事を行うことが決定し、それまでは学校が全面閉鎖されることになったらしい。

 まあ、あれだけ暴れればそうなるのも当然と言えば当然か。


 しかも事件の首謀者が首謀者であっただけに教師陣の再編もしなければならないらしい。

 ほとぼりが冷めるまで生徒たちは自主学習になるそうだ。

 突然影に飲み込まれたり、かと思えば大人の事情で学校そのものが閉鎖されたり、生徒たちも振り回されっぱなしで気の毒だなぁ。



 一方その頃、俺は今回の事件の賞与として少しばかりの休暇を取っていた。

 ボロボロのオズの看病、それとアリスの世話をするためだ。


 「わざわざ悪いわね。仕事休ませちゃって」

 「いいってことよ。賞与がもらえるから休んでても給料は出るし」


 今のオズは体力が底をついていて自力で歩くだけでも精一杯だ。

 いつぞやの魔力を使い果たしたときのミラを思い出す。


 「今回の件はありがとな。お前がいなかったら生徒たちの命を守れなかったし、黒幕を逮捕することもできなかった」

 「やめてよそういうの。アタシはただ未来ある魔法使いたちを守りたい一心でなんとか動いただけだから」


 魔法使いたちの頂点に立つものとして善良な魔法使いを守る。

 昔から一貫しているオズの中の正義だ。

 今回もその意思はぶれることはなかった。


 「でも、自分の頑張りを誰かに褒めてもらえるのってやっぱりいい気分よね」


 そう言うとオズは表情を崩して笑った。

 そうだよな、行動を評価されて嬉しくない人間なんていないよな。

 だから彼女の一番近くにいる俺が目いっぱい褒めてやらないと。


 「ところで、身体の調子はどうだ」

 「まぁなんとか自力で歩けるかなってぐらいかな。まだいつも通りにはいかないわ」

 

 逆に数日でそこまで回復できるだけすごいと考えた方がいい。

 この調子ならあと一週間ぐらいで完全復活できるかもしれないな。


 「メリルたちにも感謝しないとね」

 「そうだな。ドラゴンの獣人たちがいなければギルドにもっと大きな被害が出てたかもしれないし」


 オズ的には『ドラゴンにはドラゴンを』ぐらいの意識だったのかもしれないがメリルたちドラゴンの獣人のおかげで影のドラゴンが暴れる範囲を制限することができたし、本人たちも結果的に闘争本能を発散することができたようだ。

 またいつか会うことがあれば改めて感謝の言葉を贈ろう。


 アリスの声が聞こえる。

 どうやら目を覚ましたようだ。


 アリスも生まれてもう十ヶ月近くになるな。

 随分と早く時間が流れたものだ。

 体重も一回りほど増えている。

 魔力の影響で母体では異常に早く成長したが、生後の発育は健全に進んでいるようだ。


 「あー、うー」


 アリスがベッドの上から何かをアピールしている。

 最近は意思表示のために泣くということが少しずつ減ってきたような気がする。


 「はいはいどうした、ん……?」


 待て、アリスが何かをしようとしている。

 ベッドの柵を両手で掴んでいるぞ。

 これってもしかして……


 「オズ!アリスが立つかもしれんぞ!」

 「嘘!?」


 アリスが初めてつかまり立ちをしようとしているのだ。

 オズも今まで見たことがなかったらしい。


 「いいぞ、その調子その調子」

 「ほらあとちょっと!」


 俺とオズは夢中になってアリスのつかまり立ちを応援した。

 柵を掴んで立ち膝になった辺りから応援により一層熱が入る。


 「うー」


 立った、アリスが立ったぞ!

 ベッドの柵を支えにしてしっかりと自分の足で立っている。


 「やったあああああ!!」

 「すごいすごい!!」


 俺たちは本人以上にアリスの初めてのつかまり立ちの成功を喜んだ。

 我が子の『初めて』に立ち会えるのは何度あっても嬉しいものだ。

 アリスも俺たちの感情を理解できるらしく、一緒になって柔らかい笑みを見せる。


 「すごいぞ!お母さんに褒めてもらえ」


 俺はアリスの両脇を抱えてオズの方へと渡した。

 どうやらオズのことが恋しかったらしく、しきりに甘えている。


 「すごいわねーアリス。流石はお母さんの子」


 オズはアリスをひたすらに褒めちぎっていた。

 自力で歩けるようになる日も近いだろう。

 その時が楽しみだ。

今回で第十三章は終了となります。

次回からは第十四章を開始する予定です。

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