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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第2章 オズのホームステイ
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おじさん、冬支度をする

 秋の終わりが近づいてきたとある休日。

 俺はミラたちを連れて商人ギルドへとやって来た。

 理由は簡単、冬用の備品を調達するためだ。


 「暖炉を作るのってどれぐらいかかるんだ?」


 ギルドの街道を歩きながら横のオズ様に尋ねた。

 我が家は二階の増築と暖炉の作成のためにオズ様の部下たちが工事を行っている。


 「どうだろう。半日もあれば十分だと思うんだけど」


 オズ派の魔法使いたちすごすぎかよ。

 マーリン派と比べて野蛮なイメージしか持ってなかったから完全に侮ってたわ。


 とりあえず暖炉ができるまではじっくり冬支度をするとしよう。

 まずは衣服から買い揃えていくか。


 うーん……俺としては厚手のコートとかがあると助かるんだが。

 なかなか思い描くような品が見つけられないな。

 おっ、この手袋なんかはなかなかよさそうだ。

 

 「お姉ちゃん、これどうかな?」

 「似合ってる似合ってる!超イイ!」

 「本当?」

 「本当よ本当。お姉ちゃんは嘘つかないし」


 あっちはあっちで楽しそうだ。

 所謂『女の世界』というものだろう。

 俺にはさっぱりわからない。


 ものの数分後、オズ様が何やら服の山を抱えてこっちに向かってくるのが見えた。

 見事に嫌な予感しかしない。


 「これどう?アタシに似合ってるかな?」

 「よく似合ってるぞ。まさに大悪女っていうオーラがにじみ出てる」

 「そう?ってか悪女ってなによ悪女って」


 言葉通りの意味だよ。


 「ところでさ、これ買って欲しいんだけど」


 そんなことだろうと思った。

 しかしまあ、よくこんなに派手な奴ばかり選んできたもんだ。


 「なあ。お前、ここに来た目的を言ってみろ」

 「服を買いに来たんでしょ?」

 「確かにそうなんだが……それ以上に一つ重要なことがあるだろ」

 「え?」


 まさか本当に忘れてないよな。


 「冬支度だよ!冬に備えてコートとかを買いに来たんであってお前の個人的なファッションのバリエーションを増やすためじゃねえ!」

 「むぐぅ……」


 なんでそんなに悔しそうな顔をする。


 「俺はお前の趣味には一切付き合わんぞ。そんなに買いたきゃ自分の金を使え」

 「わかったわよ!自腹を切ればいいんでしょう!?」


 そう言ってオズ様が腕を突っ込んだのは自分の魔法で作ったのであろう陣の中。

 何をするつもりだ?


 「はい、これで文句はないわね?」

 「お、おう……」


 すげえ、魔法陣から財布が出てきたぞ。

 しかもなんだか高そうだ。


 すっかり忘れていたがオズ様はこれでも魔法使いたちの頂点に位置する存在だった。

 本気でキレられたら俺では到底太刀打ちできない。

 これは今後の付き合い方を考え直す必要があるかもしれないな。

 

 「トモユキー。ミラはこれがいい!」


 ミラが持ってきたのはなんともポップな色合いの洋服。

 なんとも子供らしいチョイスだ。

 それはいいんだが……


 「それだけだとちょっと寒そうじゃないか?」

 「えー、そうかなあ?」


 この世界の冬がどれぐらいの寒さになるのかは知らないが日本的な基準で考えると少々不安だ。


 「上着も一緒に買ってやるから見てみようか」


 「ねえトモユキ」

 「ん?」

 「たくさん着ても首が寒そうだね」


 そういえば。

 ならマフラーも買っておくこうかな。


 「マフラーも一緒に買おう?」

 「そうだなあ。じゃあそうするか」

 「それならミラが選んであげるー!」


 ミラの提案に乗り、俺はマフラーを買うことにした。

 オズ様と違ってこの子は余計なことをしなくて助かる。

 

 「これとかどう?」


 そう言いながら持ってきたのは赤一色のシンプルなマフラー。

 けっこう温かいな、それに手触りもなかなかいい。


 「俺にはちょっと派手すぎないか?」


 けっこう目立つんだよな、これ。

 流石に三十の俺に派手な色の衣服は身に余る。


 「そうかなあ。遠くから見てもわかりやすくていいと思ったんだけど」


 俺は目印か何かなんだろうか。

 まあ、本人がいいと思っているならそういうことなんだろう。


 そんなこんなで冬用の服を何着か買った。

 これだけあれば数週間分は着回せそうだ。

 当然のように俺は荷物持ちだ。


 「お前も手が空いてるなら少しぐらい持てよ」


 オズ様が完全に手ぶらでいるのが個人的に納得できない。


 「はぁ?このアタシに荷物持たせようっての?」

 「俺の負担が明らかにデカすぎるだろ見てわかんねえのか」

 「それがどうかした?」


 この女ド畜生かよ。


 「ミラも荷物持つー」


 ミラは優しいなあ。

 オズ様にも少しは見習ってほしい。


 「重いから気を付けろよー」

 「うん!おっとっと……」


 前見えてなさそうなんだが大丈夫か。


 「お姉ちゃんもトモユキにばっかり任せちゃダメだよ」

 「そうだそうだ」


 俺はミラに便乗してオズ様を煽った。

 嫌そうな顔をしながらこっちを見るな。

 言い出したのはミラだぞ。


 「わかったわよ。アタシが買った分ぐらいは自分で持ってあげる」


 最初からそうしてくれれば済む話だったんだよなあ。


 さあ帰ろう。

 きっと我が家に暖炉ができているはずだ。


 「もう出来てるかなー?」

 「出来てるといいな」

 「アタシの部下が手掛けてるのよ。今頃作業を終えてアタシたちの帰りを待ってるぐらいじゃないかしら」

 

 買い物を終えて帰宅すると玄関前で数人の魔法使いたちが俺たちが来るのを待っていたかのように立っていた。


 「タカノ様、お勤めご苦労様です!」


 いや、俺は買い物に行ってただけなんだが。

 別にヤの付く人でもなんでもないぞ。


 「暖炉はできた?」

 「もちろんですクラリス様」

 「我々が造り上げた逸品をどうぞご覧あれ!」


 俺たちは玄関を開けて我が家の新たな装いを確かめた。


 「「「おおー!」」」


 俺たちは口をそろえて歓喜の声を上げた。

 リビングの壁にこれまでなかった立派な暖炉が新たに造り上げられていた。


 「どうです。なかなかでしょう」

 「まさか本当に半日で作ってしまうとは……」


 魔法使いにもこういうのが得意な奴っているんだなあ。

 

 早速使い心地を確かめてみよう。

 薪をくべて点火して……


 「おお、コイツはいいな」

 「そうでしょうそうでしょう」


 確かに温かい。

 これさえあれば家の中は問題ないだろう。


 いや、ちょっと待てよ。


 「なんか煙たくない?」


 オズ様が俺の考えていたことと同じことをそっくりそのまま指摘してきた。

 その通りだ、なんだか妙に煙たいぞ。


 「ゲッホゲッホ!!」


 これはヤバい。

 家中に煙が充満してきた。

 煙が染みて目が痛い。

 このままだと一酸化炭素中毒になるぞ。


 「とりあえず外へ出ろ!」


 俺たちは慌てて外へと非難した。


 「痛いー、目が痛いよー!」

 「そのままにしてて、アタシが治してあげるから。」


 煙で目を傷めてしまったミラにオズ様が回復魔法をかけている。

 そういうのは俺じゃどうしようもないから実に助かる。

 それにしてもどうしてこんなにも煙たくなったのだろうか。


 原因を考えてみよう。

 普通の暖炉ならこんなになることはないはずだ。


 待てよ、普通なら煙を逃がすための何かがあるはずだよな。

 それがないから煙が充満したんだ。

 足りないものってなんだ……

 

 「あの、タカノさん。何の騒ぎですかこれは」


 近所の兄ちゃんまでやって来た。

 こっちに訪れてくるなんて珍しいな。


 「騒ぎ?」

 「ふとあなたの家の方角を見たら黒い煙が昇っていたもので……」


 思いっきりボヤ騒ぎになってるじゃねえか。

 俺は事の経緯を兄ちゃんに説明した。


 「なるほど、そういうことでしたか」

 「煙を逃がすための何かがないからこうなったと思うんスけど、何がダメだったんスかね」


 兄ちゃんは家の外観を見回すとポツリと一言呟いた。


 「この家、煙突付いてないですよね?」

 「えっ」


 兄ちゃんに指摘されて屋根の様子を確認してみた。

 そうか、煙突だ。

 それがないから煙が昇って行かなかったのか。

 原因さえ分かれば話は早い。


 「というわけで煙突も作ってくれないっスか?お金なら出すんで」


 多少出費が増えることになるがいい暮らしのためには出し惜しみはできない。


 「なんとしても今日中に作り上げなさい!それ以上時間かかったらタダじゃ済まさないから!」

 「ハイッ!」


 オズ様に脅しをかけられてオズ派の魔法使いたちも大変だなあ。

 よりにもよってトップから直々に無茶振りをされてるようなものだ。

 落ち度はあちらにもあるとはいえ、少しばかり同情できる気がする。


 さて、俺たちの冬はどうなることやら。

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