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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第2章 オズのホームステイ
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初めての給料日

今回はタカノ視点の話です。

 ついにこの日がやって来た。

 そう、ついに俺の異世界生活で初めての給料がやってきたのだ。


 「先の戦いではよく頑張ってくれた。その功績を評価して少しばかりボーナスを足しておいたよ」

 「おぉ……ありがとうございます」


 ギルドマスターから分厚い封筒が手渡された。

 銀行の口座振り込みという機能が存在しないとやっぱり給料は手渡しになるのね。

 

 就職した時の契約で最低でも十二万ルートは約束されている。

 そこにボーナスが上乗せされているから初任給としてははかなりいい稼ぎではないだろうか。

 想像するだけで思わず口元が緩みそうになる。


 さぁ、今日の仕事は終わりだ。

 懐が温かくなるとつられて気分がよくなる。

 このお金はまず何に使おうか。


 「ただいまー」

 「おかえりー!」


 家に帰るとミラがいつものように出迎えをしてくれた。

 これだけのために仕事を頑張れそうなぐらいの至福のひと時だ。


 「どうしたのよ。アンタ妙に嬉しそうな顔してるけど何かいいことでもあった?」


 脇からオズ様が入り込んできた。

 さては金の匂いを嗅ぎ付けてきたな。


 「ああ、今日給料が入ってな」


 しまった、俺はなんて迂闊なことを。

 よりにもよってオズ様に給料の所在を明かしてしまうとは。


 「へぇー、給料日ねぇ」


 それ見たことか。

 オズ様が目を爛々と輝かせている。

 ヤバイ、集られるぞ。


 「まさかとは思うが俺の給料を使って何かをしようとか考えてねえよな?」

 「ははははは、まっさかー」


 おい、なぜ目が泳いでいる。

 それじゃ説得力皆無だぞ


 「念のために言っておくがこれは我が家の生活のために使う金であって、お前が好きに使っていい金じゃねえからな?」

 「チッ……」


 その舌打ちはなんだ。

 さてはくすねるつもりだったな?


 「ところでいくら貰ったの?」


 そういえばまだ確認していなかったな。

 どれぐらい入ってるんだろう。

 俺は封筒から紙幣をすべて取り出し、指でめくって枚数を確かめた。


 「二十一万ルートだった。」

 「へぇ、アンタって思ったより高給取りなのね。」


 まさか豪邸持ちの大魔法使いに高給取り扱いされるなんて思いもしなかった。


 「そりゃそうだ、俺はスカウトされて今の仕事やってんだからな」

 「知らなかったわ……」


 そりゃ教えてないし、知ってたら逆に怖いんだが。


 「よし、景気づけに飯食いに行くか」

 「やったー!」

 「いよっ、太っ腹!」


 なんでオズ様の方が喜んでいるのかはわからないがたまにはこういうのもいいだろう。


 そんなこんなで俺たちがやって来たのはちょっと小粋な雰囲気が漂う飲食店。

 俺とミラはそんなに食べないからいいとして……


 「さー、何食べよっかなー」


 メニューを眺めながらオズ様が舌なめずりをしている。

 問題はコイツだ。

 どれだけ食うかも想像できないし、下手に酒で悪酔いしようものならさらに面倒臭いことになる。


 「悪酔いして服脱ごうとしたらマジでこの場でさようならだからな」

 「わ、わかってるし!」


 本当にわかってたのか?

 釘刺しとかないと無限に飲みそうなイメージしかないんだが。


 「これすっごく美味しいよ!」

 「そうかー、そりゃあよかったなあ」


 俺が作ることはないであろう小奇麗に盛り付けられた料理を頬張りながらミラが満面の笑みを見せた。

 いやあ、奮発した甲斐があったってもんだ。

 ここ最近は節約節約で隣の兄さんから貰った野菜とドラゴン撃退の時に有り余るほど貰ったワイバーンの肉ばっかりだったし。


 これは余談なんだが食料は魔法で凍らせてもらえば日持ちするということを発見した。

 いわゆる冷蔵庫と同じ要領だ。

 本人曰く『簡単なこと』らしいがミラたちの負担を減らすためにも、この世界での電力の開発と冷蔵庫の発明が待ち遠しい。


 「これ食べないなら貰っちゃうわよ」

 「食いたかったら自分で頼めばいいだろ」

 「そうしたいんだけどアタシ一人で食べきれる気がしないんだよねー」


 コイツもなんだかんだでちょっとずつ変わってきたよなぁ。

 勝手に家に住み着き始めた頃だったら勝手に追加で注文した上で半分ぐらい残していただろう。


 「まあいいや。麦酒追加でくださーい!」


 やたら酒を飲みたがるところも変わってくれればなあ。

 昼間は禁酒を守っているらしいがその反動が夜になると一気にやって来るらしい。


 「ちったあ俺のことも考えろよ。金払うの俺なんだからな」

 「いいじゃん。高給取りがけち臭いこと言わないでよ」


 この女ジョッキの麦酒を一気に煽りやがった。

 あと高給取りでも使い道考えないと本当に一瞬で底をつくからな。

 特にお前みたいな浪費家を一緒に養ってると。


 「お姉ちゃん、お酒って美味しいの?」

 「おっ、ミラも飲んでみる?」

 「おい、子どもに酒を勧めるんじゃねえ」

 「なんで?」


 なんでって言われてもな。

 その、アレだ。

 子供の発育とかによくない影響が出るんじゃないか?

 この世界での飲酒はどれぐらいの年齢から認められてるのかは知らないがミラに飲ませるのはいろいろとアウトな気がする。


 「あー美味しかったー」

 「また行けるといいねー」


 確かに飯は美味かった。

 少しばかり値は張ったがサービスもよかったし、俺も満足だ。

 あとは千鳥足のオズ様に右肩を貸して、眠そうなミラと左手を繋いでいるこの状態でさえなければ完璧だったんだが。

 脱いだりはしなかったがやっぱり悪酔いしてんじゃねえか。

 もう夜も禁酒してもらおうかな。


 さて、金の使い道を決めるとしよう。

 先月は食費諸々を含めても一万ルートあればなんとか一ヶ月はやりくりできた。

 そう考えると二十万ルート以上もあれば生活はかなり余裕が出るはずだ。

 前はガス、電気がないことを嘆いていたが今考え直せばそれらの利用料金を取られないというメリットになっているような気がする。

 現状の生活で不満があるとすればあとはなんだろう。

 


 そうだ、家のことだ。

 家そのものの大きさが少し物足りない。

 一人暮らしをするには問題ないだろうが、今の我が家には居候を含めて三人の居住者がいる。

 リビングに食卓を合わせたような部屋と浴室、あとは寝室だけという簡素な設計だと一人当たりが利用できる空間が狭い。

 それにミラが大きくなった時のために個室を用意してやりたい。

 その他の居候のことは知らん。


 よし、決めたぞ。

 家を改築しよう。

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