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死後につくる、新しい家族  作者: 火蛍
第1章 おじさん、異世界生活の始まり
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おじさん、新世界へ

 『死後の世界』について考えたことはあるだろうか。

 信じる信じないかはともかく、誰しも一度はその存在について考えたこと自体はあるだろう。

 俺はそんなものはまったく信じていなかった。

 少なくとも、ついさっきまでは。


 

 「……んん?」


 自分は何をしているのだろう。

 突然視界が真っ暗になり、目を覚ましたかと思えば、俺はよくわからない役場のようなところにいた。

 衣服はいつもの作業着のままだ。

 しかもここ、どういうわけか俺以外の人間が周りにいない。

 熱中症で幻覚でも見ているのか?


 「お待たせいたしましたー。タカノトモユキさーん」


 女の日との声が俺の名を呼んだ、今間違いなく俺のことを呼んだ。

 声のする方を見ると、スーツっぽい服を着たお姉さんが窓口のようなところから俺に手を振っている。

 恐らく彼女が声の主なのだろう。

 こちらから声をかけた覚えは微塵もないが呼ばれたからにはとりあえず行こう。

 俺は窓口へと足を運んだ。


 「はい」 

 「えー、厳正なる審査の結果、あなたの新世界への移民申請が受理されました」


 ……は?

 俺そんなことしてたの?

 何、新世界って。


 「あの、新世界ってなんスか?」

 「はぁ……一度死んだ人間が訪れる世界ですが」


 いや、そんな『何言ってんだコイツ』みたいな顔されてもなぁ。

 むしろ俺が声に出して言いたいぐらいだ。


 「っていうか嘘!?俺死んだの!?」


 俺いつの間に死んだんだよ。

 じゃあここって所謂『死後の世界』ってやつなのか!?

 大人になってからはまったく信じていなかったが


 「はい。二〇十七年、八月二十二日に確かに死亡していますね」


 今日の日付じゃん。

 じゃあ死因はなんなんだ。


 「俺がどうやって死んだかとか分かる?」

 「ええと…鉄骨が頭上から直撃したことによる頭蓋骨の粉砕骨折、頚椎損傷、脳震盪、内出血等々による即死です」

 「マジかよ」

 「はい、マジです」


 俺めっちゃエグい死に方してんじゃん。

 まさか三十歳で独身のまま死ぬことになろうとは。


 てかあの若い衆め、事前にあんなに注意したのに鉄骨落としやがったな。

 あと骨組みの上で作業してるなら高所作業中の警告ぐらいしとけや。

 もしこっちに来たときは覚悟しやがれ……


 「ちなみに、あなたの現在の様子をこちらから見ることができますがいかがなさいますか?」

 「それは気になる、ぜひぜひ」


 今の俺どうなってんだろう。

 同僚の一人や二人ぐらいは泣いてくれてんのかな。


 「はい。ではこちらをご覧ください」


 お姉さんから見せられたそれを見て俺は一瞬で言葉を失った。

 映ってんのもろに火葬場じゃん、俺の身体ががめっちゃ焼けてるんですけど。

 てか葬儀早くない?なにか隠滅でもしようとしてんの?


 「満足なさいましたか?」

 「もう十分っスね」


 うん、もういい。

 これ以上自分の遺体が焼かれてるところを見ても何も面白くない。


 「んで、新世界とかいうのはいつ行けるの?」

 「今からでも行けますよ。ここにサインさえいただければ」


 まあ、申請通ってるらしいしそれぐらいでいいよな。

 受付の指示通りに書類の端っこにサインをして……


 「はい。それでは新世界で第二の人生をお楽しみください」


 その言葉を最後にお姉さんは俺の目の前から忽然と姿を消してしまった。

 それとほぼ同時に周りの役場のようなところもすっと消えていき、俺の周りは真っ白一色に染め上げられてしまった。

 俺はこれからどうなるんだろう。


 今までとは全く違う世界での第二の人生。

 ちょっと楽しみではあるが、今はそれ以上に心配の方が大きい。

 なんかバイオレンスなところに飛ばされたりしたらどうしよう。


 果たして俺はどうなるんだろう。

 第二の人生とやらをうまくやっていけるか心配だ。

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[気になる点] 女の日との声が俺の名を呼んだ、 もしかして 女の人の声が俺を呼んだ、?
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