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ここは異世界でした

1ページしかないのにブックマークしてくださった方がいました。

嬉しさでもう1ページ書き上げました、ありがとうございます。

励みに頑張ります。

どうやら私、普通の狼じゃなかったようです。


それどころか全くの別世界、いわゆる異世界に生まれ変わっていたようです。




事の始まりは、私が巣から出ようとしたことである。


『ルルルンルンルン~♪』


鼻歌を歌いながら、私は棲み処である洞窟の出口へと向かっていた。

月日が経ち、せっせかせっせかと歩く練習をしまくっていた私は、他の2匹の兄妹たちより早く歩けるようになった。

まだまだ覚束なくて、走ったりするとバランスを崩して転がってしまうのだけれど。


『ルゥル、外に出ちゃダメよ。眺めるだけですからね』

『わかってるー!』


母さんの言葉も分かるようになって、自分も簡単な言葉で話すことが出来るようになった。


狼のやり取りは人間とは違っていて、いわゆる“狼語”なのだが、前世の記憶がある私は頭の中でどうしても日本語に翻訳してしまう。

狼たちは、実際に耳に聞こえている音は「わぅ」「がぅ」などの普通の狼の鳴き声だが、発音やトーンに加え、目線や仕草によって意思疎通を行っているのだ。

まだまだ舌足らずとしか言えない話し方だけれど、言葉を交わせるようになったことは大きい。


私の名前はルゥルというらしい。

一緒に生まれたオスがロゥロ、メスがラゥラという名前であることも知った。

知ったけれど、パッと見だとどっちがどっちか全く分からない。


私は日ごろから覚えようと思って、母さんや訪問してくる狼のやり取りをじっくり観察しているから少し話せるようになったが、兄妹たちは全然だから、話してどっちがどっちか判断することもできない。

話しかけてみても、愛らしくきゅんきゅんと鼻を鳴らしてる。可愛いけれど、そうじゃないんだよ兄妹。

毎日見てたら見分けられるようになるだろうか。


ちなみに、私が気分良く歌ってた鼻歌は、私の中では『ルルルンルンルン~♪』って感じだが、実際は「きゅきゅほんほんふゅん~♪」って感じだ。

最初はうまく鼻を鳴らせるのだが、途中で空気が抜けるような鳴き声になっていく。

鼻歌を歌ってると母さんが凄い顔で凝視してくるほど下手なようなので、頑張って練習したいと思う。




『ルルルンルンルン~♪』


よいせよいせと出口のギリギリまで歩いてきて、ふぅと息をついてから巣の外を見る。

まだ視界が完全はっきりしていないから、少し遠いところはぼやけて見える。

それでも、一面に青と緑が広がる景色が最近のお気に入りだ。


青い空と、眼前に広がる緑は森なのだろう。

ヒュウと吹き抜ける風も心地よい。

前世では毎日会社に詰めて、真っ暗になってから狭苦しい高層ビルの合間を歩いて狭い家に帰って、朝早くにまた会社に向かう、みたいな病みそうな生活を送っていたから、なんかもう、爽快感が凄い。

今だから分かる、私は大自然に飢えていた。

マイナスイオン的なもので心が洗われるようだ。


足元を覗き込めば、鋭い小さな山がいくつも集まったようなゴツゴツの岩壁が見える。

下にいくほどぼやけて見えるから地面との境目が分からないが、赤ちゃん狼の私からしたら、ここはとんでもなく高いのだろう。

落ちようものならひとたまりもない。

背後から心配そうな母さんの視線を感じるが、まあ、元人間の私がそんな失敗するわけない。

近づきすぎなければ大丈夫だものね。




なんて調子に乗っていたのが悪かった。

私は今、本能が強い子狼だということをきちんと分かっていなかったのだ。


近くでバサバサッという音が聞こえたから何かと思って見回すと、私の左上から突き出た岩の上に、何かがいた。


「チュン、チチチ」


・・・鳥?

え、すごい、鳥じゃない!?

この世界に生まれて初めて見た他の動物に自分でも驚くほど興奮した。

そのまま私は、身を乗り出してしまった。


私の存在に驚いた鳥が大きな羽音を立てて飛び立った。

音に驚いた私はビクッと足に力を入れた。

前足を置いた足場がボロッと崩れた。

上手く力が入れられなくて、身体がカクンと前に倒れた。

ふわっと身体が宙に浮いて、そのまま重力に引っ張られる。


眼前に近づく灰色。

さっき見た、鋭い岩壁。


『ルゥル!!』


死の恐怖に身体が硬直し、成す術なく落ちるしかない私の背後から母の悲鳴が聞こえた。


嫌だ、また、死ぬの?


頭が真っ白になって、景色の流れがゆっくりに見えた。


その瞬間。

ぶわりと下から強い風が吹き上がった。


『う、わあぁっ!』


軽い身体はいとも簡単に舞い上がり、風に吹かれるまま洞窟の中へと運ばれて、すとんと地面に下された。

明らかに自然の風とは違う動きに、頭がついていかない。


え、何が起きたの。


『ああ、良かった・・・!』


駆け寄る母さんにベロベロと身体を舐められて、フンフンと鼻を押し付けて臭いを嗅がれ、無事を確かめられる。

その間、私はただただ呆然としていた。

一通りケガがないことを確認して満足したらしい母さんは、その後に厳しい顔をした。


『ルゥル!! 危ないから気を付けなさいと何度も言ったでしょ!』


『あ、う・・・』


母さんが近くにいる。

足の下には地面がある。

死んでない。

私は、生きてる。


『ご、めんなさい』


死の恐怖と安心と、感情がごちゃ混ぜになってぼろぼろと涙が零れて止まらなくなった。

感情のまま何かを言いたくて、この気持ちを吐き出したくて。

母さんが怒っているから、しゃくり上げながらとにかく『ごめんなさい』と何度も繰り返した。

母さんはそれ以上何も言わずに私を銜えて洞窟の奥へ戻って寝転がり、私はふかふかの毛の中に顔をうずめて、暫く泣いた。




『落ち着いた?』

『うん・・・』


いつの間やら、異変を感じ取ったらしい兄妹たちにも慰めるように寄り添われていた。

涙が止まると頭が冷静になってきて、狼も涙が出るんだなぁ、不思議だなぁ、なんて考える余裕も出てきた。


『今度からは、もう少し手前で景色を見ましょうね』

『うん・・・』

『興奮しちゃう気持ちも分かるけれど、他の動物がいてもなるべく落ち着くよう気を付けるのよ』

『うん・・・』

『良い子ね、ルゥル』


残った涙を舐め取られ、そのまま撫でるように頭も舐められる。

本当に気を付けよう。

あんな不注意で死ぬとか、辛い。

風が吹いて洞窟まで運んでくれなかったら一体どうなってたか・・・。


そこまで考えて、いやおかしくない?と気が付いた。




『ねえ母さん、私が落ちた時におかしな風が吹いたんだけど、何だったんだろう。巣まで運んでくれたの』


風は普通、転がり落ちる子狼を救い上げてくれたりはしない。


『それは母さんが風魔法を使ったのよ』


・・・うん?


『ま、魔法?』


魔法ってファンタジー的な、魔女とかが使う、あの?


『そうよ。ルゥルももう少し大きくなったら、簡単な魔法を教えてあげましょうね』


にっこり笑う母さんに、私はなんとも言えない顔をしてしまった。


母さんの言う通りなら、私も魔法が使えるらしい。

何そのファンタジー、めっちゃすごい!

前世では魔法で空を飛びたいとか夢を描いていたものだ。

それが叶うのは嬉しいし、ワクワクする。


けれど普通に考えて欲しい。

私のいた世界では魔法なんてなかった。




つまりここ、異世界じゃね?




『・・・わぁ、マジかー』

改行の位置って難しいですね。

PCのメモ帳で文章を打ってから上げているのですが、実際のページで見た時と行間や1行の文字数が違っていてショックを受けました。

見やすいようにメモ帳で頑張ったのに・・・。

他の方の小説を参考にして、読みやすいようにしていきたいと思います。

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