第17話 宴と出立
アガンが勇者の供に選ばれた2日後、冒険者ギルドの酒場では、真昼間から飲んだくれ共が増殖していた。アガンのための祝いと旅の無事を祈ってとの事ではあるが、気持ちの7割がたは、ただ飲みたいだけであろう。
アガンとしては、王都で教会に顔を出して勇者の供として行動する事を断ってしまおうと考えていたのだ。が、勇者や教会に魔王を発見する特殊能力のような物が無いらしいことから、変に勘繰りを入れられないためにも一応勇者パーティーに入っておこうか、という事になった。ちなみに、ミストの参加が認められなかった場合は即断る予定でもある。
「しっかしまあ、流石はアガンだよなぁ、勇者様のお供に選ばれるなんてよ。」
「俺はわかってたぞ!絶対にこうなるってな!」
「ミストちゃんまで行っちゃうのね・・・このままお姉さん達と一緒に此処に残らない?」
「いえ、結構です。」
「うわ〜ん、振られた〜。」
「まあ、もしもこいつがパーティーに入れてもらえなかったら俺も一緒に帰ってくるし、もしそうじゃなくても勇者様の訓練のためにどの道ここに来る事になんだろ。すぐまた会えるさ。」
「フゴォ!フゴォォ!!」
・・・アガンの足下でフゴフゴ言っているのは、勿論あの彼。そう、いつぞやの変態紳士であった。
酒場に入ってきた途端にミストを掻っ攫いそうになったので、アガン含む冒険者達に取り押さえられて簀巻きにされたのである。まあ、変態の事は置いといて
「よおっしゃあ!!!そんじゃあ恒例の飲み比べすんぞぉぉ!!!」
「「「うおおぉぉぉ!!!!!」」」
ノリの良いやつの音頭で飲み比べが開始される。そのまま深夜まで皆で飲み続け・・・
「ヒィック。もうムリだぁ。」
「嬢ちゃん・・・強すぎんだろ・・・ッバタム」
「グガァーー」
「アイアム ア ウィナー」
酒瓶を掲げるミストであった。
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宴の翌朝、アガンとミストは2人で馬車に乗って王都へと向かっていた。アガンが御者を務めており、その隣にミストが座っている。ちなみにこの馬車は
『2人とも、もし王都で困ったことがあったら冒険者ギルドに行って、僕の名前出せばそこのギルマスがなんとかしてくれると思うよ。あとこの馬車は僕からのプレゼント。』
『悪りぃなギルマス。世話んなって。』
『いやいやこれくらい。』
『ねえ』
『ん?』
『ギルマスの名前なんて言うの?』
『『あ・・・・・』』
といった事があったのだ。ギルマスの名前はレオル・フレイス。何気に王族である。
と、ミストがアガンに問いかける。
「ねえ、聖女と大魔導士ってどんな人?」
「そうだな・・・聖女様はシャロン・フレイスつって前に話した通り銀髪に青い瞳の美人。世界一の回復魔法の使い手なんて呼ばれてるが、お前には劣るな。
大魔導士の方はフレイアっていう赤髪の女だ。今いる魔術士の中で唯一無詠唱が使えたはずだ・・・なぁミスト、お前もできたりしねぇよな?無詠唱。」
「できるけど?」
「できるのかよ!なんでやらねぇんだ!?」
「だってカッコいいじゃん!詠唱!」
「普通は逆だと思うんだがな・・・」
全くもってその通りである。