第15話 魔王出現と勇者召喚(教会&勇者sid)
「我らが神ヴィゾフニル様より、魔王の出現が告げられましたーーー。」
此処はアルカディアが所属する国、【フレイス王国】の王都にある教会本部。その大聖堂である。
祭壇には荘厳な雰囲気を湛えた黄金の雄鶏、彼等が神と崇める神獣【ヴィゾフニル】の像。そしてその前には、銀色の髪を腰まで伸ばし、全ての生あるものに慈愛を向ける青い瞳。幼さを残しながらも成熟した女性としての美しさを感じさせるその姿。聖女シャロン・フレイスその人が、たった今、教会の幹部たる敬虔な信徒たちへ、魔王の出現を告げていた。
「なんと・・・」
「しかし、前回の魔王出現から300年しかたっておらんのですぞ!?」
突然の御告げに、大聖堂内が急速に騒がしくなる。ありえない、と現実を受け入れたくない者。ただただ絶句する者。期待に満ちた目でシャロンを見る者ーーー
「静まれ」
威厳ある声に、幹部たちが一斉におし黙る。声の主たるシャロンの傍らの老人、教皇マクスウェルが語りだす。
「騒いでいる場合ではなかろう。既に魔王は生まれてしまった。こらは間違えようのない事実であるーーー故に、これより勇者召喚の儀式を執り行う。さすれば、此処にいるシャロンが【賢者】の職を賜ることとなろう。300年前の悲劇が再び起こるようなことは無いはずだ。」
ーーー300年前。この世界で4度目となる魔王の出現があった。その時も教会は直様勇者を召喚。それに伴い、世界はユグドラシルの民の中から3人、勇者の供を選出し、その者らを上位職へと至らせた。
それが【大魔導士ヘレナ】【聖母ミステア】【聖騎士ウィルヘルム】。しかし、当時の魔王のスキル【魅了】により、ウィルヘルムは魔王側に寝返ってしまった。勇者にまでスキルを使用されるのは防げたため、どうにか魔王を倒すことができたが、勇者の供の裏切りが民に混乱と絶望をもたらしたのは確かなのだ。
「未だ若輩のこの身ではありますが全身全霊をもって、勇者様の供として、魔王を打ち倒してみせましょう。」
シャロンが一歩踏み出し、凛とした顔で宣誓する。その姿は清廉で美しく、正しく聖女の名にふさわしいものであった。その姿に魅せられた幹部たちは皆黙して跪き、
「「「全ては世界の安寧のために」」」
こうして勇者召喚の儀式は開始された。
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勇者:高宮 夏樹sid
明里と話しながら下校してたら、急に俺の足下に光る魔法陣みたいなのがでてーーー気がついたら今、教会みたいな所にいる。周りを見る。ジジイ、ジジイ、ジジイ、ジジイ、超絶美人、偉そうなジジイ・・・俺が観察していると、銀髪の超絶美人が話しかけてきた。
「召喚に応じて下さり有難うございます勇者様。貴方には、これから私達と共に魔王を探し出し、打ち倒していただきたいのです。」
「ーーー勇者?俺が?」
成る程これが異世界召喚ってやつなのか。
「はい。私は我らが神ヴィゾフニル様に仕える信徒が1人、シャロン・フレイスと申します。此処はフレイス王家が治める【フレイス王国】の王都にある教会です。
いきなり呼び出した挙句、身勝手なことを言っていることはわかっております。ですが、ですがーーー「わかりました。」ーえ?」
「困っている人を見捨てるなんてできません!俺、勇者なんですよね?だったら俺が絶対に魔王を倒してみせます!」
「おお!素晴らしい!」
「召喚は大成功ですな。ははは!」
「ああ、勇者様・・・有難うございます!」
ヤバイ、こんな美人に頼まれて断れるわけないだろ。これアレだよな、聖女様ってやつ。しかも名前からして王女様だし。だったら魔王を倒した暁には結婚とかも・・・ククク、待っていろよ魔王!俺のために倒されてもらうぜ!
外見(と外面)は良いが内心は鼻の下が伸びきっており、詰まるところ台無しであった。