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第9話 冒険者登録とオカン

酒場でのトラブルを乗り越えて(主にアガンが)漸く食事にありつけたミスト。ミストは満腹だ。そのまま昼寝でもしようかとウトウトしていた。・・・ちなみに場所はアガンの膝の上である。見た目的には微笑ましいが、年齢的にはアウトだ。



「おいミスト、そこで寝るなよ?あと、寝るにしてもせめて身分証作ってからにしてくれ。」

「ん?その子身分証持ってないのかい?」

「ああ、こいつが言ってることを信じるとしたら、そうとうな田舎から来たんだろうな。フォレストウルフのランクも知らなかった。」

「成る程ねぇ。」

「そういえばまだ依頼(クエスト)達成の報告してなかったな・・・。ギルマス、俺が戻ってくるまでこいつのこと頼む。」

「言動が既に保護者のそれだよね。」



まったくもってその通りだ。



「身分証が無いということは、教会に連れてくのかい?」

「ああ、勿論だ。」

「そうか・・・。ねぇ君、冒険者ギルドに入る気はないか?」

「冒険者?」

「そう、冒険者。それなら教会に入ったときみたいに面倒な戒律に縛られないし、美味しいご飯も安く提供してもらえるよ。」

「入ります」

「早え!?」



こうしてミストの冒険者登録が決定した。どの道、【魔王】なんて称号を持っているから教会に行くのは避けるつもりだったので、願ったり叶ったりな提案だ。

ギルドとしても、教会に所属していない治癒士しかも実戦で使えるレベルの人材を手に入れるチャンスを逃す手はない。素性や何やに少々問題があるかもしれないが、それを考慮しても有り余るほどの利益が出る。なんせ高い金を出して教会の治癒士を派遣してもらわずに済むのだから。常識が欠けているらしい点も、アガンをつければ問題ないだろう。懐いてるし。

お互いにウィンウィンな取引であった。ついでにアガンの苦労人ルートが確定した。



「それじゃあ、ギルドカードを作るから一度ロビーに行こうか。ああ、アガンの依頼(クエスト)報告は僕が直接聞いたってことで処理させとくよ。」

「ミスト、いいのか?冒険者ってのは命の保障なんて無い、いつ死んだっておかしくない仕事だ。お前の腕なら教会でも高い待遇で迎えられるはずだ。それに「ねぇ僕の話聞いてる?」

「この辺のモンスター程度なら問題無いよ。さっきおばさまから聞いたけど、せいぜいBランクのワイバーンがたまに出るのが1番強いんでしょ?あれならソロでも倒せる。」

「君本当に治癒士なのかい?普通は戦えないはずだよね?」

「まぁ、確かにお前の実力なら問題ねぇんだろうが・・・」

「あれ、僕空気?」



ちなみに、アルカディアへの道中で軽く手合わせしたので、ミストが強いのはアガンも知っている。



「仕方ねぇな。暫くは俺が色々と冒険者としての知識ってもんを教え込んでやる。拾った手前、最後まで面倒見ねぇと目覚めが悪いしな。」

「宜しく。」

「・・・」



ギルマスは最後まで放置であった。そして3人はギルドロビーへ向かう。今度のミストの位置は、アガンの腕に座る形となっている・・・所謂抱っこ状態である。抵抗感が全くと言って感じられないのは、ミストの中でアガン=オカンなイメージが固定されたからだろう。ーーー後に【父娘(おやこ)コンビ】なんて見たまんますぎるネーミングをアルカディアの住民から呼ばれるようになる。


ロビーでは、利用者がいないうちに休もう、ということらしく、2人しか職員がいなかった。その内、カウンター業務を行っている受付嬢の方へ向かう。

「ようこそ冒険者ギルドへってギルマスに・・・アガンさんと女の子!?」

「ああ、こいつの冒険者登録にき「ちょとアガンさん!?いつの間に子供なんか作って」ねぇよ!」

「あはは〜。そうだよねぇ、さっきまで幼女誘拐事件だったのが今は親子にしか見えないんだから不思議だよ。あ、ミストちゃんは17だよリアちゃん。」

「え?」


受付嬢ーーリアが固まっている間に、ギルマスがミストに銅板の様なカードを手渡した。


「はい、これに名前と、できれば種族、ジョブも書いてほしいかな。最後に血を一滴垂らして登録完了。」

「わかりました。ステータスとかバレますか?」

「いや、ステータスは基本的に本人が見せない限り他人にバレることは決して無いよ。ギルドの信用問題になるからね。」

「確かに」



ミストは名前、種族の欄まで書いてーーージョブのところで迷った。このまま治癒士として書くか、正直に【賢者】として書くか。流石に目の前で書いたらバレるだろう。だが、なんとなくアガンがどうにかしてくれそうな気がしたので、正直に書くか、と決めた。



「って【賢者】ぁ!?これ治癒士の上位職じゃねぇか!まじかよ!?」

「ははは。いや〜、思わぬ拾い物をしたねぇアガン。」

「笑ってる場合かよ!?ギルマス、ミストにもう一枚ギルドカード作ってやってくれ。【賢者】なんてジョブ300年前の【聖母】以来出てねぇんだろ?バレたら大騒ぎになる。」

「なるほどね、公式に使うのと本物で使い分けるわけだ。確かにその方がいいだろうし、特例だけど認めてあげよう。」



本当にどうにかしてくれた。全くもって頼りになる(オカン)である。何故ミストが【賢者】であると信じてもらえたかというのは、ギルドカードに嘘の情報を記入すると、自動的に書いた文字が削除される様になっているからだ。結局のところ、正直に書いて正解だった、ということになるのだろう。



「となると、ランクも考えた方がいいね。取り敢えず僕の権限でCまで上げとくよ。折角の戦力を遊ばせておくのももったい無いしね。」

「ああ、ミストの戦闘力なら問題無いだろう。」



こうしてミストはギルドカードを2枚手に入れ、ランクC冒険者となった。ーーー受付嬢は、何がそんなに衝撃的だったのか最後まで固まったままだった。

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