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Broken Time  作者: うぃざーど。
第3章 ボーイ・ミーツ・ガール
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3-26. “らしさ”とは





次の日がやってきた。

彼がこの世界に帰って来てから9日目……と言うのも、もういい加減というところだろうか。

あれほどの生死の分かれ目を行き来していたにも関わらず、ここでは落ち着いた穏やかな生活を送っている。

剣や魔術の鍛錬は穏やかというものではないが、今は人を殺すということから離れている。

死地で何人も、何十人も斬り殺してきたあの時間に比べれば、ここの時間はゆっくりとし過ぎている。

自分の求めているものでないと知っていても、今のこの時間は、今後の自分にとって必要なことなのだから。

朝起きたのは、時間にして6時過ぎ。

またいつもの夢を見るだろうかと思いながら床に入った昨晩だったが、何の記憶も無い。

一切の夢も見ずに朝を迎えたことだろう。




………一切の夢も見ず。

あれがただの夢であるのなら、それに越したことは無い。

そんな気がする。





「あれ」




パトリックがサウザンという南の町に行ってから、2日目となる。

アトリはいつものようにパトリックの本家で借りた自室に、彼女もまたいつものように夜は自分に与えられた離れの家で時間を過ごしている。

朝起きてこの時間になれば、彼は自然と居間へ行き食事の準備をする。

同じように、フォルテもこの時間には食卓の準備をしにここに来るのだが。

今朝は自分の方が早かったのか、彼女の姿はまだない。

一応、念のために、と彼は広い家の中を歩き回る。

相変わらずこの家は一人が住むには大きすぎると感じられる。

そのため探すのも一苦労だ。

彼はあらゆる部屋を回り、庭の倉庫も見て、昨晩危なげなことがあった風呂場も確認する。

どうやら彼女はこの家にはまだ来ていないらしい。

珍しい、と言えるのかもしれないが、彼女とて人間。

たとえどのような人間であっても、時間に左右されることくらい誰にでもあることだろう。

何の不思議なことでもない。




ただ。

彼女を探して見つけようと思う心があるということは、

彼女に対し何らかの思いを抱いているということ。

もし何かあったらその時はどうしようか、どうするべきか、と考えているということ。




いつからだろう。

あのような姿を見て、このように意識するようになったのは。






―――――――私は、この町の人たちを放っておくことは出来ない。







あの日のことが、思い出される。






「こちらに居ないのなら、後は………」




特に意識していた訳でも無いが、三度の食事くらいは共にしたい。

彼は自然とそのように考えており、やはりいつものようにフォルテが食卓の準備をしていないというのは少し気になることでもあった。

彼女にそこまで規則正しい生活を求めていた訳じゃない。

あるいは、こうやって何にも縛られずに毎日を送ることが、他の人の当たり前の生活なのだろうか。

彼は着替えた後、歩いて彼女が住む家までやってきた。

今日の天候はやや曇りが目立つが、それでも晴れ間はある。

少しだけの風が吹き、心地よい天候になりそうだった。

家の前に立ち、木製で出来たドアをノックする。





「………」





彼女ならドアをノックすれば気付くだろうと彼は思っていたのだが、そうでもないらしい。

ということは、まだ寝ている……?

家の正面のドアは当然施錠しているだろうが、いつも鍛錬に使用している道場の方は閉まっていないはず。

そもそもこのような地域に人が往来することなど無いのだから、あまり人目を気にすることも無かったのだが。

彼は道場の入口から、彼女の居住空間へと入っていく。

居間全体は整った姿をしていて、乱れた様子など一つも感じさせない。

いつもきれいに清潔にしているのだろう。

だが、今日は少しだけ変わった様子がそこにはあった。




「あっ………」




そして、彼は彼女のその姿を見る。

彼女はジャケットは着ていなかったものの、いつものスーツを着て椅子に座っていた。

だが、その彼女に意識はない。

本当に静かな、聞こえないといっても不思議ではないほど、静かな寝息を立てている。

彼女は椅子に座り机と向き合っていたようだが、その傍らには幾つもの本が並べてあった。

中には開いたまま置いてある本もあった。

彼は机の傍に来て、傍にいる彼女や本を見る。

あの彼女のことだから、近づけば起きるものだろうと思っていたが、彼女は気付かない。

深い眠りの中にいるのだろう。

その理由は、やはりこの机の上にあるものだった。

魔術本。一体誰がどこで手に入れ、誰がどのように記載したのかは分からない。

ただ、魔術師は魔術師であることを隠すが故に、ひっそりとこのように記録を残していたのかもしれない。

公にして世間を混乱に陥れる訳にもいかない。

そもそも、このような話を世間に流して信じてもらえるとも限らない。

彼女が見ていたのは、自分の型となる支援魔術の本。

そしてすぐそばには、アトリの型となっているであろう、防御魔術の本もあった。

いずれも使用者の少ないもので、かつ記録されている文書も少ないものだろうと思う。

それは既に分かり切ったことだ。

フォルテ自身そのように話していたし、パトリックも特殊なものばかりと言っていた。

だが、それでも彼女はアトリに鍛錬の師として教え続けていた。

自分に分からないことは勉強し、出来ることは実践し、それを彼に与え続けていた。




「………」




きっと、俺の見えないところで、夜な夜な学習していたんだろう。



彼女の献身的な性格が災いとなったのか、

あるいは今この時間は彼女にとっての休息と見て良いのか。

彼は傍にある防御魔術の本を手に取り、それを少し離れたソファーの上に置く。

椅子にかけられてあった黒いジャケットを彼女の背中に置くと、彼はソファーに座って彼女が眺めていたページを見始める。

書かれている内容は、彼が想像していたものとは違った。




「手記……?いや、架空の話か?」







―――――――――――――――――――――――――――――――





ボクの知り得る限りで、防御魔術に特化した魔術師は、幾人しかいない。

大体の人は攻撃魔術で事足りると言い、この魔術に挑む者もいない。

それに、魔術を伝承する人がいたとしても、防御魔術の型を会得している人がそう多いはずもなく、必然的に魔術師とは攻撃魔術を扱える者ばかりを示すようになった。

戦い方によっては、攻撃こそ最大の防御と呼べるようなものもあるだろう。



だが、ボクはそれに勝るものもあると思う。



かつて、どこか遠くの大陸では、国を護るために外敵と戦い続けた王がいるという。

ボクの知るところではない、遠く遠く離れた大陸の話。

決して国が栄えていた訳でなく、大きかった訳でも無い。

国の周囲は常に脅かされ、外敵に今か今かと侵略されそうな勢いだった。

いつこの国が滅んでもおかしくはない。

そんな国を見捨てる民とて大勢いたことだろう。

だが、それでも国王は国を信じてくれる、王を信じてくれる民たちの為に、戦ったという。



王は常に戦いに赴き、王である前に一人の人間として、死力を尽くした。

たとえ周りの兵士たちが音を上げていたとしても、王は決して斃れなかった。

敵を前にして王は王であり続け、その強靭な精神は敵を前に決して崩れることが無かった。

その王が持っていたのが、剣と盾。

戦うために必要な物であるのだが、王の持つそれは訳が違った。

普通の兵士が持ち得るようなものではなかった。

何も王だけがそれを持つことを許された訳では無い。

だが、王がいつまでも斃れない理由が、その剣ではなく盾にあったと言われている。

その盾には大地の(ルーン)の加護があり、あらゆる攻撃にも耐えられるほど強固な硬さを有していた。

たとえ相手が弓を放とうが、槍を穿とうが、鉈を払おうが、それらの斬撃、攻撃に盾は決して負けることが無かった。

王の側近には忠実で有能な魔術師が何人かおり、その王の装備に魔術を施して強化し続けていた、というのが強固な盾の正体だった。

王の力だけが幾多の戦場を耐え抜いた訳では無く、魔術師の精巧な強化行使により生み出した結果だった。

結局国は滅びを迎えることになったが、王は決して戦いの中で武人としての生き様を棄てることが無かったという。




ボクは思う。

あるいは、このように伝説や伝承のように伝えられるあらゆる物を、魔術によって再現できるのであれば、それは時に攻撃よりも有用的になるのではないか、と。

魔術師にはあらゆる型や適性が存在しており、その可能性は未知数。

同じ型や適性を持つ魔術師を探し出すのは苦労するくらい、魔術の世界は広いものだろう。

隠匿されなければならない存在であるが故に、裏では魔術師という一団体の中で魔術世界が広がっている。

かの王が持つ盾を魔術行使で再現し、その効力を現実に出現させることが出来たら、それはどれほど強固な防御となるだろうか。

担い手の居ない防衛魔術の真の強さに並ぶものとなるだろう。





―――――――――――――――――――――――――――――――






彼女が見ていたページに記されていた、言い伝えのような文章。

かつてどこかの国で戦い続けた、王なる者の話。

その王が所持していた盾があまりに強く、戦いにおいて決して打ち破られることが無かったという代物。

一連の内容を見て彼は思った。

魔術とは現実にそれを行使するためにイメージという過程を必要とする。

効力を発揮させるためのイメージを頭の中で発生させ、それを具体的に表面化させるために必要な魔力を発動させる。

もし、この盾にかけられた魔術の効力と盾の強さが分かり、それに見合うだけの魔力量と高純度の質を発動させられるのなら、その盾をイメージして現実世界に行使することで、強固な防衛手段を身に着けることが出来るのではないか。

恐らく、この執筆者はそのように言っているのだろう。

確かに、前にフォルテも少しだけ話していたことがある。

魔術師の中でも防御に特化した人物で、より優れた者は盾と同様の効力をもたらす魔術を発動することが出来るらしい、と。

それにはどの程度の魔力が必要で、どの程度の質を高めなければならないのだろうか。

考えるだけでも先の長い話だ。





「………」





彼が読んだ本を元に戻して、すぐのこと。

時間はもうすぐ7時になろうかというところだが、彼女が少しだけ動いた。






「っ………」





彼は、彼女の顔を見る。

普段は中々見ることの無いであろう、その顔を。

じっくり見ようとすると、こちらが少し緊張してしまうかのような、そんな顔。

人の寝顔というものは、普段から目にするものではない。

まして、彼女が彼やパトリックにそのような姿を見せるとも思えない。

だから、この時間は少々貴重なものだろう。




確かに、普段は見ることのない状況だ。

だが俺は一瞬でも、この顔が「彼女らしくない」と思ってしまった。

                                ’





それは。

普段彼がそのような顔を見る機会が無い、というだけの話ではない。

「彼女らしくない」、それは彼女がそのような顔を見せるような人間ではない、という意味もある。

常に黒いスーツを身に纏い、表情は無く暗さと冷静さを感じさせるほどの顔。

いや、もはやそれは冷淡だと言っても良い。

それが彼女の姿だと、思ってしまっているから。

彼がイメージする彼女がそのような姿で固定化されてしまっているから。

だから、こんなにも穏やかで静かで透き通るような、美しい顔を見られるとは、想像もつかなかった。





そう。

彼は思い込んでしまっている。

いつも接しているあの姿が、いつもの彼女であり本当の彼女らしさなのだと。



だが。

同時に疑念を抱き続けてきた。

そんな姿をし続ける彼女には、必ずそうさせた原本となるものが存在する、と。





いつもの彼女ではないと思いながら、

本当の彼女の顔は必ずどこかに存在している、と思い続ける。





勝手に家にお邪魔して、しかも彼女の寝顔まで見てしまったというのは、恐らく普通の女性に対してしてはならないことだろう。

冷静に考えるとこの状況、少しばかりまずいような気もするのだが、彼は動かなかった。

机に突っ伏して寝ていた彼女の、心境はどのようなものだろうか。

きっと疲れているに違いない。だが彼女はそれを隠すだろう。

フォルテという存在は、人に自分の弱みを見せることが無い。それを躊躇う傾向がある。

だからこそ、自分だけの時間で自分をコントロールしているのだろう。

今のこの時間は、そんな彼女だけの時間に介入してしまっている。






「………」





だが、思う。

それでいい、と。

そういう時だって必要だ、と。

今の自分たちは、ただの鍛錬の相手という簡単な関係ではない。

共に生活をする、パートナーのような存在。

ならば、相手を気にすることに後ろめたさを感じることはない。




だって。

普段の彼女とは違い、こんなにも「普通」の顔をしている。

表情も無く、表面も暗く、性格も表に出せないような彼女だが、今は違う。

静かに、本当に静かに眠っていた。

その顔は、普段の彼女の顔には似合わず、とても穏やかなものだった。

何にも縛られることもなく、何にも囚われることのない姿。

もしこれが本来彼女の持っていた「素顔」なのだとしたら、彼女は一体どれほどの過去があって、

今を過ごしているのだろう?





その背中に、その肩に、その心に、大きなものを背負いながら、

生きて生きて生き続けて、その果てにこの姿になったのだとしたら。

彼女の素顔は今も眠り続けたまま。

表舞台に立つことを許されない、陰でもう一人の自分を演じなければならない存在。

陰で本当ではない自分を演じていた自分が、あたかも本当の自分となってしまったような。




そして最後には、

本当の自分さえ、忘れてしまう。





そんなことはあってはならない。

どんなことがあっても、何があったとしても、自分は自分であることを止めてはならない。

あらゆる境遇があったとしても、自分という存在を棄てて偽物の自分を演じる必要などない。

偽物が本物になる必要など、どこにもない。

本物と偽物の顔が存在してもいい。

ただ、その関係を逆転させる必要は無い。

誰が何を言おうと、その人らしさという本質を消す必要なんて、無いんだ。

多くのものを見ながら、多くのものを経験しながら、彼女がこの姿に辿り着いたものだとしたら。

きっと、彼女の素顔は別にある。

周りに飲み込まれ、自分で押し込み自分を封じてしまっている。









「馬鹿な大人のせいで幸せを奪われた、感じられない悲劇の者たち。それを引き起こしたのは人間。それを正せるのも人間。だから、私は―――――」






――――――――――そんな人たちを護りたい。彼らがいつの日か幸せになれるように。








………ああ。



そうだ。

俺は、こういう人たちをこの手で護りたい。

そう願ったんだ。






これは、彼の中だけで囁かれたもの。

彼が彼自身に訴えたもの。

彼女の、そんな顔を見て彼が改めて思ったこと。

本当の彼女の姿がどのようなものかは分からないが、彼女もまた本当の姿、生活などを失った立場にいる可能性がある。

彼女の心象、姿かたち、そして過去を懐かしく思う悲壮な姿。

もし、彼女自身の素顔がそこにあるのだとしたら。

失ってしまったもの、見かけられなくなったそれを、再び見ることが出来るのだとしたら。




彼女が今も底の深いところで、苦しんでいるのだとしたら。







「っ………」




「………」




机に突っ伏して寝ていた彼女が、目を覚ます。

目を開けまず視界に入ってきたのは、すぐ近くで彼が彼女を見ている姿。

何故ここに彼がいるのだろう、という疑問は、彼女が起きた時間を確認した時にすぐに分かった。

背中を覆う何らかの違和感。

それは彼が彼女のスーツジャケットを被せてくれていたもの。

いつも後頭部で縛り下ろしているポニーテールの髪型は、この時は無くすべて下ろされた状態。

彼女は状況を理解した。

――――――――私は彼を待たせてしまっていたのだろう。

まだ一言も口にしていないが、はじめにする言葉など決まっている。

何時からここで待っていたかは分からないが、自分に落ち度がある、と彼女は思う。

だから、口にすることと言えば――――――――――。





「おはよう、フォルテ。朝だよ」



「………!」






だが、彼女がそんな言葉を口にする前に、彼がそれを阻止した。

視界もハッキリとしてきたし、思考も回り始めている。

朝が来て、これから朝食を取り、そして作業や鍛錬をし……今日も一日が始まろうとしている。

けれど、今日のはじまりは、いつもとは違う。

目の前にアトリがいることも驚きではあったのだが、アトリのその顔に彼女は驚いてしまった。

挨拶をして、少しの笑みを浮かべる彼の顔。

優し気な顔を彼女に向け、それでも何か珍しいものを見ているというような顔もしている気がする。

その一言で、何か自分の話したいことが飛んでしまった、フォルテ。





「お、おはようございます……」




「机で寝ていると身体が痛くなる。あまり無理はしないでもらいたいな」




と、それもまた優し気な声で少しの笑みを浮かべて、彼女に向けて話すアトリ。

彼女も心の中で理解していることだろう。

あまり無理はしないでほしい。

今、彼女の目の前に置かれている本の数々を見れば、彼女が魔術の鍛錬に使えそうな知識を夜な夜な集めていたということが分かる。

アトリも理解していることだ。

それらの知識は彼の鍛錬の為に使おうとしているのだ、と。





「けど、ありがとう」





アトリはそう言うと、もう彼女は彼に返す言葉に詰まってしまう。

何かを言おうとしているのだが、その何かが出て来ない。

喉元まで出かかっていたものが、急に体内に吸い込まれてしまったようなものだ。

彼はフォルテの背中に被せていたジャケットを取り、それを別の椅子にかける。

その感謝の言葉は、彼女が夜な夜な魔術鍛錬の知識を得て、それを彼に与えようとしていたことに対するものだ。

この状況下、寝坊もして起こされもしているにも関わらず、彼は彼女に感謝の言葉を伝えた。

本来の、リズムが分からなくなる。

彼女は次の行動さえも分からなくなり、彼から見れば彼女は動揺しているように見えた。

それもまた、普段の顔ではない彼女の顔、姿と言えるのかもしれない。

あえてそうさせた訳でも無く、それを狙った訳でも無い。




「さ、朝食にしよう。フォルテが良ければ、ここの調理台を借りても良いかな」



「あ……はい、構いません。私もお手伝いします」



「ありがとう。だが、まずは顔を洗ってくるべきだよ」





少し出しゃばったかな。

けれど……。




彼女はそう言われると、俯きながら小声で彼に返事をして、家の外にある井戸水を汲む場所へと向かう。

彼女の顔が乱れていたということでもないのだが、起きたばかりの思考を起こすのも、整えるのも、冷たい水に顔を浸からせることで出来ることだろうとアトリは考え、彼女にそう言った。

そして彼は彼女のその反応も見た。

普段は表情一つ変えない彼女であったとしても、その彼女に表情が無い訳では無い。

常に冷静を保っている彼女であったとしても、その一面がすべてということはない。

彼女は何かを恥ずかしがるように、微妙に赤面しながら家の正面の扉へ向かっていく。

それが彼には見えていた。

彼女のそんな姿を見て少々嬉しいという気持ちになる自分も、中々度し難いものかもしれない。




今まで、彼には持ち得なかったもの。

多くの女性と関わる機会はあった。

だが、その大半を彼は死地で過ごした。

最早数え切れないほどの死地を渡り歩いた彼は、あらゆる交友関係を経て今の自分が形成されている。

それでも、今日の生活と意識は、今までのそれとは違うものだった。





3-26. “らしさ”とは





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