2-28. 絶対防衛線
「来やがったか………」
明確な目標、彼らにとっての「敵」は目前に迫っていた。
聞こえてくる不気味なまでの揃った足音。
足踏みが揃っているために、一つひとつの足音がとても大きく聞こえてくる。
重厚感ある戦列歩兵に、待ち受ける兵士たちには緊張がさらに高まる。
ウェールズ王国領中央部バンヘッケン郊外。
広大な農地の広がる町の外の、更に外。
大地の上に多数の兵士たちが布陣し、今にもマホトラスとの戦闘が始まろうとしている。
本来この地は自然に恵まれた美しい様相を見せる地。
だが今は、両軍が戦いの為に踏み荒らしてその姿は消えつつある。
これからの戦い、回避することのできない戦争によって、その姿はさらに変えてしまうだろう。
ウェールズ王国軍は、この地での戦いを自らの絶対防衛線と決めた。
このバンヘッケンを抜かれた後ろには、王城が待ち構えている。
王国の中心たる王城、城下町まで戦火が及ぶのであれば、この国とて今までのように無事ではいられない。王族も、民も、兵士も、皆が窮地に立つ。
そのために、何としてでもこの地でマホトラスの戦力を削ぎ、撤退させなければならなかった。
戦いに勝つのではなく、戦う相手を消耗させる。
長期的に戦いを行うことが出来ない状態になれば、相手もすぐには侵攻して来ないだろう。
自らの首を絞めることはしないはず。そのために――――――。
――――――――この地を決戦の地とし、嵐のごとくやってきた「敵」を討つ。
それこそが、ここに集まった者たちの意地、国の為に戦おうとする者たちの、共通した目的だった。
2-28. 絶対防衛線
歩兵の動きが止まる。
歩く度に巻き起こっていた砂埃も消え去る。
この戦いに相応しくも無い、憎らしいほどの晴天と白い雲の下で、静寂は訪れる。
流れるのは風と音。
向かい合うのは対照的な人間たち。
両者の間合いは僅かに100メートルほど。
最早語ることも無く、掛け合うこともない両者。
互いに握られたその武器を、後は相手に向け振りかざすのみ。
ウェールズ王国軍の上士たちも、敵が接近したことを知り戦場に出てきた。
ほかの兵士たちが戦うのであれば、上士であれ自分たちも戦うのは当然のことだろう。
そう思う人が幾人。
後方で指揮をしながら全体の戦況を見極めるべき、と思う人が幾人。
その両方を兼ね備えながら、それでも自身も戦うべきだと思う人が、ただ一人。
それが、最前線までやってきた、アルゴスという男であった。
兵士たちの中ではその姿にやや動揺する者もいた。
上士が戦場に出て戦うという機会そのものが、そう多くある訳ではない。
しかもアルゴスが王族と王城の直属であるということを知っている兵士からすると、彼の命は取られてはならないとまで考えていた。
だが、アルゴスは思う。
結局この戦いは混戦になる。
両軍入り乱れてしまえば、指揮など出来なくなる。
ならば自分も兵士の一人として戦う方が良い、と。
「突入せよ!!」
「攻撃開始!!」
戦場に両軍の司令の声が響き渡り、そして一気に静寂が破壊されていく。
お互いに開いていた間合いが音を立てながら狭まり、急速に死地が形成されていく。
兵士たちは両軍ともに目の前の明確な敵を殺すために、声を上げながら突撃していく。
重装甲の部隊で迎え討つウェールズ王国軍前衛と、ほぼ全員が同じような配色の武装と防具を身に着けて突撃してくるマホトラス軍。
もとは一つであった両者による、否定の連鎖。
争いでしか解決を見出し得なかった、彼らの意思が、今ここでぶつかり合う。
数で圧倒しようと集められたウェールズ王国軍と、同じように部隊の集結を知り大部隊を向かわせたマホトラス軍。
バンヘッケンの郊外、本来美しい大地であるはずのその地域が、死地により踏み荒らされていく。
もはや、そこに自然の美しさや景観の良さなど語ることは出来ない。
これよりこの地は死地。
多くの死体が転がり無残な光景を生み出すものにしかならないからだ。
「はっ!!」
集められた兵士の中では年齢が低い分類に入る、グラハム。
各地を転々としながら兵士としての任務をこなしていた彼が、ここに集結するよう命令され、そして戦うことを言い渡された。
兵士としては当然のことだが、今までとは違い相手がマホトラスという、ウェールズ最大の脅威と戦闘することになる。
そのことに対して、グラハムが全くの意識をしない訳が無かった。
確かに等しく敵であることに変わりはない。
自分はアトリのように自治領地同士の戦闘を止めさせるようなことは、殆どしてこなかった。
戦闘経験などそう豊富ではない。
だから、もしこの戦いで自分が相手に勝てないような状況が一瞬でも生み出されたとしたら、それは自身の命の危機であることは明白だ、と思い込んでいた。
「チッ、やるな……!!」
しかし、出来ることなら戦い尽くしても生き残りたい。
生きるための努力はするし、何より自分の命は何物にも代えられない、最も大切なものだ。
兵士としての目的は果たすが、自分を生かすということも考えなくてはならない。
戦いの中に雑念など持ち込むべきではない、そう分かっていながら、相手と戦う時は常に考え事をしてしまうグラハム。
戦闘開始から僅か5分後に、死地全体が混戦状態となってしまった。
はじめから予想していたことだが、ウェールズは前衛、つまり真っ先に敵と対峙する位置に重装甲の部隊を配置した。
重装甲の兵士は当然動きが制限されるが、剣の一太刀では中々破れない厚い防具を身に着けている。
そのため、この防具を破るには何度も防具に有効打を打ち続けるか、相手の身体を突き刺すしかない。
そうなった場合、マホトラスにとっては著しく攻撃のペースが下がることにも繋がる。
なので、マホトラス軍は両軍入り乱れる形の戦闘形式をあえて強行し、重装甲の前衛を前衛でなくした。
右も左も敵だらけ。
だがそれ故に混戦は兵士たちの間隔を広げる役割を新たに見出す。
出来るだけ一対一での戦闘を行い殲滅したい心理が強く働き、戦場は一気に広範囲へと拡大していく。
グラハムも出来るだけ多人数を相手にしないように立ち回りながら、確実に敵を殺すために戦闘を展開させていく。
はじめ対峙したあの時から、恐らく両軍の数の差はあまり無いか、ウェールズが僅かに多いか、というような判断をしていた。
だが、それもマホトラスの兵士たちの技量にかかればひっくり返せるほどのものなのかもしれない。
しかしながら、今まで数の差で撤退を繰り返していた北西部などの状況とは異なる。
限りなく対等に近い数で戦闘が行える分、今まで以上にウェールズにも勝機はある。
受け取った情報と今の状況を照らし合わせ、そのように考えながら戦闘を継続する。
「がっ……!!」
しかし、考える以上に身体は思うように動かないのか。
自分の思う以上の力が出て身体が制御出来ていないのか。
グラハムは敵兵士一人に対しても苦戦を強いられる。
周りの兵士たちも気迫を込めて戦う姿が見られ、その光景にもやや圧倒される。
自分本来の動き方ではない、というよりはまるで硬直しているような感覚。
このような状態を味わうのはそう無いことだろう。
一撃一撃が重く感じられ、剣を握る手、それを支える腕に衝撃が加わる。
相手の表情はよく見えない。だが敵も恐らくは一人殺すのに必死なのだろう。
一撃にかかる力の強さがよく伝わる。
それを受け止める度に腕に稲妻のように衝撃が走っていく。
戦わなければ自分が殺されると言う状況は、たとえ敵といえど同じ。
ならば、退き続ける訳にもいかない。
こういう時は考えばかりが浮かぶもの。
それでも、全力を以て敵を倒すのみ。
元より戦いとはそのためのもの―――――――!!
「こいつ………!!」
周りに大量の敵がいて、幾ら間隔があるからとは言え悠長に一人相手に長引かせる訳にもいかない。
そう決断し行動しようと覚悟したその直後から、グラハムの動きは見違えるほどに変化した。
まるで自身にスイッチでもあったかのように。
歯車が身体とかみ合い高速で回転するかのような、キレの良い動きで相手を翻弄し始める。
終始押されていた彼が急に優劣の立場で優位に立つ。
思わず敵の兵士が言葉をこぼすほどに。
お互いの技量はあまり変わらないのかもしれない。
しかし戦いは剣だけで行われるものではない。
剣は武器、身体は資本、だが負けてはならないのは、自身の内なる思い。
右に左に、と剣戟を繰り出し相手を揺さぶる。
更に、強靭な足腰とバネのごとく跳躍するその大胆な戦い方で、グラハムは敵に間髪入れずに剣戟を放っていく。
防具に直撃する一撃、剣と剣が交わる一撃、無防備な一部の皮膚を狙いすまされた一撃。
確実に相手の息の根を止めるべく、全身を使った攻めの一手を繰り返し出し続ける。
ただひたすら間合いに入り攻撃を続けるのも疲労してしまうため、何度か間合いを開けながら移動し、その中で相手の兵士に更に攻撃を入れて行く。
結局攻撃を受ける側のマホトラスの兵士は、間髪入れずに向かってくるグラハムに対処するのが精一杯であった。当然彼もそこで発生する隙を見逃さない。
「やぁっ!!!」
気迫の籠った一撃が相手の心臓部を貫き、長い剣戟からの一瞬の一撃で絶命させた。
剣に血が塗られるが、今はまだ払っている余裕はない。
彼はすぐ後ろで交戦している味方の兵士の援護をするために、背中を見せていた敵の兵士に続いての一撃を放る。
相手は前面には厚い防具を着ていたが、背面にはその防具が無かった。
そのため、彼は瞬時に剣を振り下ろして、右肩から左の脇腹にかけて太刀を入れる。
突然背後から攻撃を受けたことで、痛みを感じる暇も無くその場に倒れかかり、そこを味方の兵士が身体の前面を突き刺して絶命させる。
グラハムは、短時間で5名の敵兵士を斬り殺したが、そこで――――――。
「グラハム殿か!生きていて何よりだ」
「貴方は………!」
背後で戦闘をしていたのは、これは偶然と言うべきか、つい数日前に知り合ったばかりのヒラー。
元々北東部の一部の部隊長を務めていた男だが、彼も自分と同じくしてこの地に派遣された兵士。
そしてまさかこの近距離で戦闘をしているとは思わずに、顔を見たグラハムは驚いた表情をする。
一方のヒラーは、既に頬に傷を負い少量の血を流してはいたが、髭の生えた濃い目つきと鋭い眼光、そして少々の笑みから見るに、その男も健在であった。
「敵も中々手強い。グラハム殿、頼みがある」
「………?」
「ここは共闘だ。戦闘が長引いて疲弊する前に、出来るだけ敵を減らそう」
「………もちろん……!」
既にヒラーも多くの兵士を斬り殺していたのだろうが、彼は冷静に戦況を分析していた。
当然兵士というものは身体を資本にして戦う者。
戦い続ければ疲弊するし、それは基礎能力の低下につながり満足に戦えなくなる。
隙が多くなれば殺される危険性も大いに高まる。
この戦いはもとより大部隊がぶつかり合うもの、すべてが終わる頃には太陽も西に沈んでいることだって考えられる。
ならば、出来る限り相手の戦力を短期間で減らしておきたい。
多寡が二人の攻撃だが、それを敵から見た脅威と認識させることが出来れば、相手も焦るだろう。
二人は隣り合わせになり、二人で多数の敵と向かい合う。
先程までの硬直じみた感覚は抜けている。
身体が戦いに適応したということなのだろうか。
目の前の、数多くの敵を討ち倒すために、彼らは再び剣を構える。
「やれ!!!」
誰だかも分からないがそのような怒号が飛んでくるのが分かる。
すべての兵士が一対一という状況で戦っていた訳ではない。故に、こうして自分たちを数倍の人数で取り囲むことだって想像に容易い。
もとより混戦でそうなる可能性は見えていた。
そこにヒラーという、年上の男が加勢に入ったのは、グラハムにとって都合が良かった。
一人で相手をするよりは遥かに心強い。
そう思えるだけで、相手に対し一方的に恐怖することは無い。
「生憎と他の部下に会うことも出来なかった身だ、付き合わせてすまないな……!」
「いいえ、だとすれば、自分は貴方の部下のようなもの……かもしれませんね……!」
「っ……!!」
戦闘の最中だったが、それを聞いたヒラーは驚いた。
声こそ出さなかったがその表情は驚愕の色に包まれている。
だがそれをグラハムが見ることは無かった。
彼は目の前の戦闘に集中していた。その過程で出たその言葉。
ヒラーは、散り散りになっていた部下を探していた。
たとえこの戦争のために派遣されたとはいえ、部下がどこで何をしているのかは、気になるところ。
純粋に一人の年長者として、若い部下が無事にやっているかどうかを、確かめたかった。
だが、実際は確認できなかった。
せめてすべての人がどこに配属されたのかを確認出来れば、その可能性も無い訳では無かった。
が、ここは既に死地。
死地とあらば人の命に名など、要らないのかもしれない。
そう思い、諦めた後での、グラハムとの出会い。
ああ、何故こうも若者は立派なのだろうか。
あの男と同じように。
だが、これだけは変わらない。
このようにしてしまったのは、戦争なのだと。
「……そう、だな」
そう静かに言い、ヒラーも戦闘を継続させる。
一方。
戦場は混乱を極めるが、その後方では戦闘指揮を行う者もいる。
ウェールズ王国軍の上士たち数名が、度々報告される状況を聞き戦況を分析する。
ほぼ同数か、こちらが僅かに数で優勢の状態で始められた戦闘。
思うようにはいかないとはいえ、今までより悲観したような状況でも無い。
「なるほど、均衡しているか」
「はい。敵も敵で中々強く……」
「うむ、状況は分かった。……それにしても、アルゴス氏もよくやる……」
本来上士が最前線に出て戦いをするものではないのかもしれない。
兵士とはいえ兵士の上に立つ者、全体を見て指揮を執り戦況を掴んで隙を突かせる、そうして指示したほうが上士らしいとも言う。
だがアルゴスはそれを他者の上士に任せ、自身は最前線で今も戦い続けているという。
ほかの上士たちが見習うべきことではないにせよ、その姿には感服するほど。
兵士からの信頼も厚いのも、そうした彼の人となりが一つの要因なのだろう。
もっとも、常日頃の姿を見れば、常に武装した姿で執務室にいたり、城内と言えど完全武装で出歩いているなど、強面の印象がどうしても強いのだが。
「戦闘開始からもう2時間か……」
兵士たちの疲弊が気になる――――――。
上士の言うことはもっともで、2時間も多くの敵と戦闘状態になれば、両軍ともに疲弊するだろう。
あれほど憎らしかった晴天は徐々に色を変え始めている。
太陽が西に向かっていき、やがて夜が訪れるだろう。
夜間の戦闘、この辺りにたとえ月の灯りが照らしたとしても、暗い中での戦闘は避けたい。
時間の経過は戦っていようが戦っていなかろうが、今日はとても早く感じる。
いつもこの調子だっただろうか、と思いながらも、戦況を見つめる。
戦場は非常に広範囲に広がり、南はバンヘッケンの農地まで広がっている。
農地は畑作や田園があって、戦えるようなしっかりとした足場のないところも多々ある。
だが両軍の戦いは狭い細道でさえ繰り広げられている。
こうなると状況を掴んだとしても、収拾を付けられる訳ではない。
しかし、手の打ちようがないという訳でも無い。
「……そろそろか」
戦況が膠着し、互いに疲弊し消耗するばかり。
そのような状況が長く続けば、本来数で優勢にし相手を殲滅、撤退させようとしていたウェールズの作戦が根本から潰れてしまう可能性がある。
マホトラスの数を減らす以上に自分たちの兵員の数を減らしてはならない。
今まで各地に兵力を分散させ戦っていたために、相手よりも不利な状況で殲滅され続けてきたのだ。
同じような状況を生み出してはいけない。
消耗戦を打開するための作戦、あるいは戦況を大いに変化させるための作戦が、まだ彼らには残されている。
それを実行するタイミングを窺い続けていた。
「…なるほど、良い頃合いだろう。進もうか」
相手に致命傷を与えられるほどの影響力は無いかもしれない。
しかし、この奇襲が相手に混乱を与え、その機に乗じて前線を押し上げることが出来るのであれば、それは大きな影響を与えられた、と言うことが出来るだろう。
もとよりこの作戦は相手の数を一方的に減らすのが目的ではなく、相手に混乱を与え本隊がそれに乗じて一気に攻め上げ挟撃するというのが目的である。
奇襲の部隊はそう長く留まることは出来ない。
万が一、彼らより更に背後に別の部隊が待ち構えているとすれば、奇襲部隊が逆包囲されてしまう恐れもある。
だからこその、馬を用いた作戦。
死地での膠着を打ち崩すための手段、「騎兵」の登場である。
「何……背後から敵!?」
「はい!騎兵に奇襲を受けています……!!」
「騎兵……だと!?」
両軍ともに広範囲で戦闘が継続されているが、まさかマホトラス軍の更に後方からウェールズ王国軍が奇襲に来るとは予想できていなかった。
というよりは、戦いに集中するあまり、マホトラス軍も周りの状況を上手くつかむことが出来ていなかったため、そこに騎兵が突入したことによって、部隊が一気に混乱してしまった。
奇襲部隊の突入は、味方であるウェールズ王国軍の兵士たちもすぐに分かった。
戦況すべてを見渡すことなど出来ないが、様子の一変は肌身で感じ取ることが出来る。
戦闘という一種の世界から隔絶された空間の中に居れば、そのような感覚も少しばかりは冴えるものだろうか。
動揺するマホトラスの兵士たちの姿を見て、その様子を予測することが出来た。
奇襲部隊の突入と混乱の発生、それによるウェールズの前線押し上げ、それらによる劣勢という状況は、マホトラス軍の後方で待機している、あの二人の男にも伝わる。
最前線として投入されず、後方待機をお願いされた二人の身。
だが、その二人のもとに戦況と奇襲部隊の存在が知らされると―――――――。
「ブレイズ。そろそろ我らの出番のようだ」
背が高く、容姿端麗。清廉で落ち着いた美声の男が立ち上がる。
「残念だが、そのようだな」
長さが等しい二本の剣を持ち、全身を黒づくめの服装に染めたその男も、立ち上がる。
戦況は変化を迎える。
戦闘開始から既に時間も経過しており、このまま戦闘が続行されれば太陽が落ち夜を迎えてしまう。
夜間の戦闘継続は消耗戦という心配だけでなく、味方の識別困難にもつながる。
そういった状況は相手のみならず、自分たちも好むものではない。
ウェールズはこの地、バンヘッケンの郊外を、マホトラスを止めるための絶対防衛線にしている。
だが、24時間、夜間の戦闘に彼らが耐えうるかどうかは分からない。
同じようにこちらも夜間の戦闘は出来るだけ避けたい。
このままでは戦闘が膠着状態となる。
であれば、元々戦わなければならないというのだから、望み通り「決着」を付けさせれば良い。
彼らがそう臨み、そう選んだここが、決戦の地なのだから。
『増援』
たった二人だけの増援が、今死地へと送られる。
二人だけにして強大な力を持つ。だがそれをほぼ誰も知ることのない、魔術師という存在。
戦闘開始から3時間以上が経過した今、ウェールズの長い一日に終止符を打たせるべく、出撃していく。
………。




