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Broken Time  作者: うぃざーど。
第2章 混迷の戦時下
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2-9. 暗中模索




それからのこと。

ようやく体調が落ち着き本来に近い状態を取り戻したアトリは、今日の任務について上士から受けるために、アルゴスの部屋を訪れた。

相変わらず室内でデスクの前に座っているその男は完全武装姿。本当にいつ私服になっているのだろうか、と思ったほどである。それも何度も。

昨日城に戻ってきたばかりの彼がすぐに任務を求めて部屋に来る、と予想してはいたが、それはそれで驚きもあったアルゴス。

彼の表情に疲れは見えないが、それは恐らく彼がポーカーフェイスとして隠しているからなのだろう、と予測していた。

その予測は的中していたのだが、徐々に回復傾向にある。

アルゴスは彼に昼頃から城外の警備を言い渡し、それを今日の任務とした。

時間は日が暮れるまで。行動に制限はさせないので、自分が思うように任務に取り組むように、といういつもの流れであった。



「そういえば、言い忘れていた。お前が伝令に渡した情報を受けて、2日ほど前に南東部に調査部隊を派遣させている」


「南東部……?」


「奴らが攻めてくる可能性が無い、とは言えない。『キエロフ山脈』周囲までだがな」




王城から南東に向けた地方。

東部から北東部のように、進めば進むほど地形が荒れ高低差が激しくなる、というような地方とは少し違う。

確かに起伏の激しい地域もまた存在しているのだが、比較的平野部がなだらかに続いていくのが、南東部地方の特徴だ。

だがそれも、馬で快速4~5日かけて進んだ先に、南東部から北東部にかけて連なる山々の一部、『キエロフ山脈』が見えて来て、平野部からは変化していく。

山脈地帯に向かっていくと、徐々に土地の傾斜が上がり始め、緩やかな上り坂を上がり山々へと向かっていく。

そのため、キエロフ山脈地帯の山麓は平野部よりも標高が高い。当然と言えば当然のことではあるが。

王国は比較的東側地域に直轄地を持っていないために、外部からの侵入はまず東側からと見て判断している。

そのため、事態を素早く正確に捉えるための偵察活動が必要であった。

今ホットな地域である東部と南東部は、遠く離れているとは言っても全くの無関係とも言えない。



「しかし、確かあの山麓は荒廃が進んで…」


「そうだ。あまり人はいないと前から言われている。だからこそ付け入る隙は幾らでもある。調べておくことに越したことは無い」




この王城と城下町がとても栄えた町、華そのものだとすれば、キエロフ山脈周囲の麓に位置する村は、いずれも錆びた鉄のようなもの。

とても王城や城下町などと比べるほどではない、とまで言われるその地域。

キエロフ山脈の周囲は荒廃が進み人の手が付けられないほどの森や湖畔がある、と言われている。現にそれを地図で確認することは出来る。

この城の周囲や丘や田園の広がる中部地方とは違って、ひと気のない地域が南東部である。




「見る範囲が広すぎるのは分かっているし、兵力が足りないのも分かっている。だがこうする他、直轄地に正確な情報をもたらすことが出来ない」


「………」





俺にだって、よく分かる話だ。

―――――――――明らかに今の王国は兵力を分散し過ぎている。



北西部、北部、北東部、東部。

王国の直轄地がある領地をすべてカバーするために、あらゆる地域に多くの兵士たちが派遣されている。

何もそれはマホトラスの連中が来る前から同じ状況であった。

直轄地を防衛するために、ありとあらゆる直轄地に兵士たちが駐留しているのだ。

場所によっては拠点基地なども設けている。



思えば、直轄地の防衛部隊がいるにも関わらず、彼という存在が死地に城から派遣される、という状況は、少しばかり奇妙なものである。

もちろん、死地での戦闘を彼がすべて担当している訳ではないので、彼の与り知らないところで戦闘が起こっていても、何ら不思議ではない。

だが、彼は今までかなり多くの地域を回ってきた。

直轄地から近い自治領地であれば、直轄地を防衛する人間にその任務をすべて任せてしまえばいい。

そうしていた時もあったのだろうが、彼が派遣される理由はまた別にある。

それは彼の内なる信条と、それを知る者の事情を照らし合わせる必要がある。



とにかくも、彼はこの状況を好ましく思っていない。

いまだマホトラスの侵攻手段が謎に包まれている部分も多いが、奴らは各地から包囲網を布こうとしている。

そうなれば、王国とて傷一つではいられない。



「ところで、話は変わるが…」



あくまで、南東部への派兵は「調査」だ。

今すぐに兵員が多数必要となる状況にはなり得ないだろう。

もっとも、南東部…特に山脈周囲は人がいるかどうかすら、怪しいところだ。

今は大して重要視する必要は無いだろう、と彼は思っていた。

すると、アルゴスが急に話の内容を変えてきた。

彼も南東部の偵察任務は、あくまでアトリに伝えるだけのことで、特に意識しろというものでもなかったのだろう。



「また、剣を無くしたようだな」



「…面目ありません」




仕方ない、と言える部分もあったかもしれないが、彼は一切言い訳はしなかった。

結局のところ、兵士に支給される剣がどれほど脆いものであったとしても、剣を折られるというのは兵士としては情けない限りの話である。

アトリは、先日黒剣士との戦いで、再び剣を失った。

あの時は躯が落とした剣を拾って何とか凌いだが、自分自身の剣ではない。

幾度も死地に派遣されては、幾度も剣を無くしている。

そんな生活ばかりが続いて、それも上士の耳に届くのだから、アルゴスも呆れない訳がない。

が、その話を聞くたび、アルゴスの表情は少しばかり穏やかになる。

まるで子供を見る目で「まだまだ修行が足りないな」と訴えているように。





「一人前の兵士は数多くいるが、剣は支給品か自分で購入する者が多い。誰かに作ってもらった剣で納得するのなら良いが、自分が一番使いたい剣を自分自身で作り出す、というのが本来の姿であるべきなのかもしれない」


「…なるほど…」





アトリが「自分の武器を自分で作る」ということに関心を持ったのは、この時だった。言われてみれば、自分が納得いく剣を自分で作り使う、というのは理に適っている。

今までは誰かに剣を作ってもらい、それを使うというのが当たり前であった。

だが、その剣は自分が望むものでない時もある。

重さ、強度、刃の長さ、柄の持ちやすさ、グリップの効き目…数を上げれば剣の種類は行程一つで大きく変化する。

下士に与えられる兵士支給用の剣は、汎用的な性能を持っていてある程度の戦闘にも耐えうる、優秀な剣ではある。

だがそれは大量生産大量消費を目的とした剣で、生産工程もほぼ固定化されている。そのために作るのは容易だが、そこに剣ごとの特徴は存在しない。

彼は自分の実力が無い故に剣が折られてしまうと考えているのだが、実際のところは汎用性に優れた剣と、彼の腕とがマッチしていない可能性がある。

それに、アルゴスは昔から気付いていたのだ。

剣の持ち主と剣との間には、相性が存在している。




「当座をしのぐなら、支給品で充分とも言える。だがそれで満足に戦えないのであれば、剣を購入するのも一つの手だ。高いがな」




結局会話はその後すぐに終わり、彼は部屋を後にした。

自己管理がなっていない、と自分の中で厳しく反省しながら、その足で工房の方へと向かっていく。

彼がいなくなった後、アルゴスはデスクに立てかけてある銅色の剣の鞘を横目で見る。

兵士として長い間使い続けてきた、自分を証明する物の一つだ。

それを見ながら、険しい表情を浮かべつつ溜息もついた。

あれは真面目に仕事もしているし、考えもしっかりしている。

だがそれ故に相反する事態が訪れた時のギャップで彼は調子を崩しかねない。

素直な心を持っているが、その手でどれほどの善行が叶うかどうかなど、今もこれからも分からない。

その果てに悲惨な結末を迎えなければよいが、というアルゴスの漠然とした不安が彼に向けられていた。彼の知らないところで。



「アトリか。剣は並べてある」


「あ、はい。どうも…」



鍛冶工房。

城内の内部と外部にそれぞれ隣接する、武装造りの空間。

外界とは雰囲気も空気も温度も変わるその場所。

今日も一人、レイモンは剣と武具を作り続けている。

アトリが工房を訪れた時、レイモンは右手に刃の長い剣を持っていた。

刃先がとても綺麗であるために、まるで鏡のような美しさが後ろからアトリが迫ってきたことをすぐに察知させたのだ。



「レイモンさんは、誰か特定の人の為に鉄を打つことはあるのですか?」


「………何故それを聞く」




当然そう返されるだろうと思いながらも、アトリはそのまま踏み切った。

特段理由などないはず。ただ純粋に己の気持ちが疑問を知りたがっている。

だというのに、レイモンは次の瞬間―――――。




「打って欲しいのか?」


「あ、いえそういう訳では……」


「なら何故聞く。聞かずとも分かっていることを何故聞くのだ」




「………」




参ったな。

相変わらずこの人は抜け目がない。


そう。

アトリも自覚している。

確かに剣が折られ毎回のように剣を無くしてしまうのは、己の力量や技量が不足していることもあるだろう。

決してレイモンの作る剣が悪いものではない。

だがあくまで兵士支給品となる剣には限度があることを、アトリも常々感じ続けてきた。

レイモンが他の、例えば上士のために鉄を打っていることなど、随分と前から知っている。直接確かめたわけではないし聞いた訳でも無いが、明らかに普通の兵士とは違う剣を持つ上士はいた。

それを見れば普通誰にでも想像できるはずだ。

社会は上下関係の存在する規律正しいところであるはず。

だとすれば今の状態も当たり前のものと思い、今までは何も気にすることは無かった。

アトリが武器となるものに強い興味を示すようになったのは、この時から。

要因は想像に容易いだろう。

彼がつい数日前までどのような相手と戦ってきたかを思えば。





「俺には分かる。お前は焦っている」


「え…?」




その答えが、あまりに意外だったもので、アトリは思わず口を開いた。

この流れであれば「欲求が不満を呼んでいる」みたいなことを言われるものだと思っていた彼。

次に出てくる回答を予想するほどであったが、いざ予想が外れた時にはやや驚くものであった。

レイモンは戦場に出ることの無い、王城に仕える兵士階級の一人。

兵士とは言うが厳密には兵士の役割を何一つ成し得ていない。

彼はそう、兵士という立場から兵士という存在を支える存在なのだ。



「戦いを前に自分の実力を見失っている。違うか」


「実力…?」


「焦りは迷いを生む。迷いは躊躇いを作る。躊躇えば相手の先は取れん」






………何?



驚きの連続。

それはレイモンの言葉に対するものではない。

彼が次に取った行動に対してだ。

レイモンは、硬く厚い岩で覆われた炉の傍から立ち上がり、剣が立てかけてある木製の柵のところへ行き、剣を二本取り出した。

鞘を抜き、抜き身の刃は音を立てる。そして次に、レイモンはその剣をアトリに向け投げた。

この場では考えられない出来事。剣は彼に向けて少し回りながら向かって良き、彼はその軌道を瞬時に読みすぐに剣の柄をつかみ取った。

レイモンの右手にも、同様に剣が握られている。



「レイモンさん、まさか……!」


「いいか。これは打ち合いだ。殺し合いじゃない」





―――――少しばかり、確かめさせてもらおうか。






刹那。

外の工房内の空間、決して広くはないその場所で、レイモンは左手に持っていた鞘を投げ捨て、右手で剣を持ったままアトリに向かってきた。

その瞬間何と早い動きか。まるで疾風のごとく襲い掛かってきたレイモンの攻撃。これは打ち合いだ、とあらかじめ予告しているとはいえ、身体に向かってきているであろうその剣戟を防がない訳にはいかない。

黙っていれば攻撃は命中するが、そう簡単に攻撃を入れられては困る。

レイモンは何かを試そうとしている。ならば自分はそれに応えるのみ。

思考の回転が混乱から加速へと切り替わる。歯車が高速に回転し始める。

そして驚愕の速度で打ち放たれた剣戟を、アトリは即時反応して受け流した。

とても年を取った老体が放つ一撃とは思えない。

俊敏かつ強力な一撃。だが見えない訳ではなく、受け止められないこともない。

その一撃をかわすと、すぐにレイモンからの二撃目がやってくる。



「………!」




だが、彼にはその攻撃が見えている。

確かに驚愕に値する剣戟なのだが、ハッキリとその軌道が見えている。

まるで剣の先端が線を引くように、角度、速度、長さが見て取れる。

アトリの戦闘時の基本姿勢、防御にて攻撃を受け流し、隙を突いて強力な一撃を相手に与える。

殺し合いであればそれも胴体に目がけて放たれるものであるが、レイモンの意図が分かった以上、それをする必要は無い。

三度、彼は剣戟を受け流した。

確かな感触と強い衝撃を両腕に感じながら、四撃目に対応する。

レイモンの今までの三撃目と次に放たれている四撃目の速さは異なる。

前者と比べて後者のそれは速度が低下した。

受け続けるだけだったアトリの様子が瞬時に変化する。

状況が死地とは全く異なるが、それでも彼の攻撃はそれと同じようであった。

ただ、狙う先が相手の身体ではなく相手の持つ剣であったこと。




「……!!」




アトリは防御から一転、ただ一度の攻撃に走る。

彼を悩ませる事態がこの現場でも起こっていなければ、更に二撃目、三撃目と続けることも出来たのだろう。

だが、たった一度の一撃は容易く弾かれた。

というよりは、その剣ごと破壊されてしまった。

その時点で次の攻撃を放つ手段は消え、またレイモンも剣を退いた。

レイモンは息一つ乱さずにアトリと対していた。

本当に自分よりも何十年も年上だとは思えないほどの体捌き。

その手に、その腕にどれほどの経験を積んだのだろうか。

とにかく成り行きであったものの、唐突に発生した打ち合いはわずかに30秒で終了した。

しかし、レイモンからすればその30秒だけでも十分であった。



レイモンさん……貴方は一体何者??

それが、アトリの心の声である。




「少し分かった。お前はその戦い方に合ったパワーバランスを持っていない」

「それは一体…」


「基本は防御。攻撃の隙を突いて反撃する…少しばかり変わったやり方にも思えるが…お前の場合、受け流す技術は文句なしだが、防御から攻撃に転じる一撃に力が入りすぎている」




そこまでアトリのためにレイモンが口を開いたことは数少なく、またそれも驚く要素の一つではあった。

僅かに30秒程度で相手の戦い方を見抜いてしまう。弱点が露呈すれば兵士としては失格に値する。

そこを突き崩されれば、今この場のように剣を折られ命を絶たれてしまう。

改めて再確認したところで、アトリは額に汗を流す。

よく今まで無事で生きて来られた、と。

この世界の剣と剣の戦い方は、ごく単純なもの。

相手を殺すために剣を振れば、相手も同じように振ってくる。

その剣同士がぶつかり合い、激しい打ち合いとなる。

レイモンがアトリの手法を珍しいと言ったのは、このご時世では攻撃こそ最大の防御、などという言葉があるくらい、兵士たちはお互いに攻撃思考が高いのだ。

兵士たちの間に様々な思惑はあるのだろうが、早めにケリをつけてしまった方が楽でもある。



「防御さえできれば剣が無事、というものでもない。攻撃を受ければ受けるほど、確実に傷を入れられる。基本待ちの姿勢でお前が敵と対した時、隙を突いて攻撃を入れたお前の剣戟が相手に封じられたら、お前はどう対処する」



無論、攻撃を加える側の剣も、剣戟一つひとつが積み重なればダメージを負うだろう。

だが、一方的に攻撃を受ける側の剣と、攻撃を与え続ける側の剣、果たしてどちらに分があるだろうか。

現に、彼が持った剣はその場で破壊された。

レイモンが持つ剣は多少の傷はあるものの、原形をとどめている。

全力でぶつかる剣戟と、相手の剣戟を出来るだけ避けながら受ける剣。

アトリは両方とも実行していた。その両方とも技量は確かなものだった。

だが、彼の放つ剣戟のパワーバランスが大きく乱れている、とレイモンは言う。

一撃にかかる負担が大きい。

相手に攻撃を与えられれば、十分な有効打になる。

しかし、同じ力でぶつかり合う勢いが相殺された場合にはどうか。

今のようなことが起こり得るのではないだろうか、と言うのだ。



黒剣士との戦いの情景が思い出される。

高速で放たれた一撃を、アトリは咄嗟に反応してしまう。

受け流し剣を失わないようにするという、本来の行動が実行できず、結果的に自分の剣を砕かれてしまった。



力押しで剣にダメージを与えるのであれば…それに代わる強みを…。




「………速さ………」



「悪くない解答だ。力押しではなく速さを以て力と成す。…さて、もういいだろう」




僅かに刃こぼれした剣を、レイモンは石で出来た棚の上に乗せる。

確かにダメージを負ったが、刃を研げばまたある程度は使えるようになる。

そして、レイモンは今度別の剣が立てかけている棚に向かい、それを取り出す。

一つは、兵士が支給されているものと大して変わらない大きさ。

だがもう一つは明らかに剣の幅が太く大きい。兵士が支給されるものの二倍にはなるだろう。いや、それ以上かもしれない。

持ち手となる柄の部分も大型である。

鞘に入れたままのそれを、アトリに一本ずつ手渡そうとする。



「その大剣を持て」


「はい。………!?」




少しばかり予想していたが、その剣はとても重たかった。

今まで彼が手に持ったことのない武器の重さ。

他の今まで使っていた武器の使用感覚を瞬時に忘れてしまうかのような、そんな重さの感触だった。

これで戦おうというものなら、満足に剣を振ることさえかなわない。

思わず鞘を地面につけて杖替わりにした。持っていたのは、僅かに十秒ほど。

次にレイモンは、もう一つの持っていた剣を手渡す。

その剣は、見た目こそあまり変わりないものの、鞘は少しばかり模様が入っている。

レイモンは彼がまだその手に兵士支給用の剣の重さを覚えている時に、その二つをあえて持たせ違いをハッキリとさせたのだ。




「これが、お前の解決策の一つ。その大剣を預ける。それで鍛えるがいい」


「こ、これで…ですか。そしてこちらは…支給品より重い感覚はありますが」


「そうだ。兵士にくれてやってる物よりも重量がある。大剣を満足に振るようになれば、その剣の効果も発揮されるというものだ。他の奴には渡しとらんから、思う存分試せ」




そういうと、レイモンは再び炉の方へ戻り、工房の支度をする。

また剣を作り始めるのだろう。大量生産の時間、毎日これと同じ作業を繰り返していると思うと、少しばかりゾッとする。

何故この道で何十年も生きていけるのだろうか、と。

だが、剣を作り自分の手に合うものを得る、という話は理解できる。

可能であればそういう道も模索したい、と今の彼は考えていた。




―――――これは、試しではない。鍛錬だ。





こうして、彼は思わぬ形でレイモンと打ち合わせ、彼の中で迷い続けているものに対してのヒントを得ることが出来た。



ここから、彼の戦闘に関するスタイルの模索が始まる。

何が自分にとって一番良いのか。

何を自分にとって取り入れるべきなのか。




その道に答えを見出すまでは、長い。

そして、この先思わぬ形でその答えを導くことになるのだった。




2-9. 暗中模索





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