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Broken Time  作者: うぃざーど。
第2章 混迷の戦時下
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2-2. 国王との謁見




「…いや、良いのだ。顔を上げて欲しい」



その姿、その光景。青空を背景に、何人かの兵士に周りを囲まれてはいたが、その真紅のマントが揺れ動く王の姿を見て、彼は立ち止まった。

見上げる形で王を見る。王は王の丘にて、その石碑を見ていた。

この国が出来上がった、その礎となった証明となる歴史の遺産。

今日、エルラッハは民たちに呼びかけることはせず、ただ公務の間ののひと時を使って、こうして王の丘を訪れていたのだ。

城からはわずかな距離しか離れていない。この丘そのものが、城下町のシンボルの一つとも言える。もっとも大きなシンボルは、その名前から城であることに変わりはないのだが。

ただ。民たちも王の姿を見て、その姿を見ようと集まっていた。

全員ではない。忙しい民も中には居る。王から民に集まるよう呼びかけた訳でも無く、ただ私的に動いた王の姿を見ようと集まっただけのことである。


アトリは、ハッと何かに気付くように、その腰を下ろし片膝を地面につき、頭を下げた。国に仕える兵士として、いや一人の人間として、王に忠を尽くす礼儀の一つである。

何を思ったのか、その動作が遅くなった彼は非礼の限りとにかく頭を下げ続けた。が、それもたったの十秒程度。

エルラッハ自身がアトリに頭を上げるよう言い、彼もそれに従う。

片膝はついたまま。王の丘に風は吹く。



「アトリ君の帰りを待っていた。ここで話すのも何だ、城へ戻ろう」


「しかし、王よ。もうこちらはよろしくて…?」



それはアトリではなく、王のすぐそばにいた警備兵の一人がそう言った。

王に直接使える兵士、近衛兵と呼ばれる者である。

近衛兵は、アトリのような王国正規軍の兵士とは扱いが全く異なる。

彼のように各地を回る兵士も大勢いることだが、近衛兵に所属するものは基本的に王のそばを離れない。

いかなるときも王の命を護るために尽くす、というのが近衛兵の役割である。

そのため、王に一言入れたその男も完全武装。鎧に太腿、両膝を護る防具もしっかりとつけてある。頭の防具は身に着けていなかったが。



「大丈夫。今日はこのくらいで良い。他の者も、今日はこれで良い」



そう言ったエルラッハの表情は、微笑んでいながらもどこか寂しそうな、そんな表情をしているように、アトリからは見えた。

王が他の兵士たちに手をあげ、それが礼の印であることを伝えると、そこに集まっていた他の兵士たちは王に深々と頭を下げる。その中に、アルゴスも含まれていた。先程城の中で召使に聞いた通りの情報であった。

近衛兵の二人が前を歩き、その後ろに王が続いて丘を下っていく。



「アトリ君。ついてきてくれ」



そういうと、アトリは短くはい、と返事をして、立ち上がる。

周りを少しだけ見渡したが、後ろからやってきた近衛兵の一人、まだ若そうだが風貌濃く良いひげ面の男性が、肩を叩いて笑顔で手を出した。先に歩いてほしいということである。

アトリは王の後に続いて、丘を下り城下町へと戻っていく。

その道の途上。民たちが何度も王に声をかけていた。王は一人ひとりに反応することは出来なくとも、出来るだけ民に目線を合わせながら、そして笑顔を見せながら手を振っていた。

それが、王としての務めでもある。

民たちに不安を煽るような姿は見せない。王は常に王としての存在感を求められる。彼が見たその後ろ姿は、今も昔も変わらぬ、王としての背中であった。



「此度の出征もご苦労だった。無事な姿が見られて嬉しいよ」


「はっ。ありがとうございます」


「そんなに畏まらないでくれ。ここはもう外ではない」


「あ、はぁ…」



王の使う客間の一つに、アトリは招かれた。

部屋全体に大そうなカーペットが敷かれており、足音が一つひとつ鈍い。高級感溢れる見栄えだ。机や椅子、壁にかけられた絵や彩る装飾品の数々まで、とても綺麗である。客間だけあり、このように格好を整えているのだろう、とアトリは頭の中では思っていた。

王は王一人の椅子に座り、彼は机とセットに置かれた長椅子に姿勢よく座っている。王と対面するように彼が座っており、彼から見て右手には別の長椅子にアルゴスが静かに座っていた。

まるで普通の民が兵士に話しかけるように、彼に声をかけるエルラッハ。

その姿に慣れていないとはいえ、初めてではない経験である。



そう。

国王エルラッハとアトリは、お互いがお互いを知る存在である。

王も彼を記憶しているし、アトリも当然王のことを慕って尽くしている。

彼は各自治領地で様々な民たちの姿を見てきたが、臣に忠を尽くす従者の関係が一方的であることは多い。つまり、領主たるものが部下のことを覚えていない時もあり、道具としてみなしていることもある、ということである。

その関係が良いか悪いかなど、アトリが判断するものではない。それはあくまで個人の見解が含まれる。

一方で、この二人の関係は相互に行き交う矢印のような関係を示している。もっとも、二人が仲の良いと言うか、話し合える存在である理由の一つに、王の娘の一件が絡んでいるからなのだが。



「死地はどうだったか」


「はい。申し上げるのも心苦しいですが…多くの民を、仲間を失い帰って来てしまいました」


「…ふむ。伝令から話を聞いた時に嫌な予感はしたが、それでも誰か生存者が帰還出来ただけでも、よしとしよう」




―――――誰かを助ける前に、まずは自分だから。




いつぞや、そうそれこそ娘さんがそのようなことを話していた。

王の放った言葉のそれも、またそういった要素の含まれる言葉であっただろう。

誰かを助ける前に、護る前に、まずは自分のことを優先する。

言われてみれば確かにそうなのだろう、と思う。

結局今の自分は、何度も戦っては生き残ってここまで辿り着いている。

誰かを護れない心苦しさを感じながらも、生き残った者は生きているなりにすべきことがあるのだ。



「兵士の立場や配置は替えられるが、人の命には敵わない。生涯でただ一つだけのものだからな」


「…はい。それで陛下、状況というものは…」


「あぁ、そうだな。詳しくはアルゴスから話してもらおう」



ここでアトリは自ら封書の内容を確認するべく、王にそう言葉を向けた。

それに対し、エルラッハはアルゴスに詳しい状況の説明を求めた。既にこの二人では状況把握が行き渡っているのだろう。

しかし、専門的な話は王より現場の統括をしているアルゴスの方が詳しいと王は判断したために、任せたのだ。



刻一刻と状況が悪化しつつある。

その言葉の意味が語られる。



「奴らの存在については、既に分かっているな。まぁ改めて再確認するのもありだとは思うが…資料であれば図書館にあるだろう」



と、アルゴスはまず一言付け加えたうえで、本題に入る。



「お前の派遣された地域でも、マホトラスの兵士と遭遇したというのは良き情報の一つだった。おかげで、そちらに向けて部隊を向けることが出来ている。今までは我々でも感知し得ない場所から、奴らがこの城目がけて侵攻を続けているという情報ばかりであったが、これで他の者たちも確たる実感も掴めたことだろう」



奴らの所在も大方検討がつく、とアルゴスは話す。

今までマホトラスの兵士たちが侵攻を続けている、という話は、すべての地域に行き渡った情報ではあったが、その詳細まではハッキリとしていない部分もあった。

戦った兵士が次々と殺され、その情報を伝える人が少ないというのも理由にある。各地に現れては、自治領地ごと制圧してしまう。占領下に置きながら勢力を拡大し続けている。

しかし今回、アトリが派遣された地域で奴らの存在が確認できたことで、奴らの行動ペースや所在などの検討が付き始めていたのだ。

アトリの行った偵察というものが効果を発揮していると言ってもいい。具体的な行動にも移すことが出来た。アトリが帰還するタイミングで、彼からもたらされた情報を基に、王城に勤める正規兵団を派遣することが出来ている。

再び城の護りは手薄になり始めているが、今は脅威が迫って来ていないという状態から、この手数で維持する方針となっていた。



「だが、更に厄介な事態が発生している。まるで時を同じくして、北部や北西部の直轄地でも、奴らと思わしき存在が確認できたのだ」


「……!」




この話には、王も深刻な表情を見せながら頷く。

ウェールズ王国の領地は広大なものであるが、幾つかの特徴がある。それがこの世界とウェールズ王国という領地の接点、「自治領地」と「直轄地」に当たるものだ。

王国は城から向かって東部には、直轄地が少ない。山岳地帯に向かっていくほど大地の形状は変化し、行き辛い地域となる。そのため、自治領地で発生する戦闘で派遣される多くは、東部の地域となる。

もっとも、その限りではないのだが、一方で北部や北西部は直轄地として認定している領地が多数存在している。もとは自治領地であった場所も、王国が認めたうえで王国の規範に沿った自由な行動と生活が保障されている地域だ。隣接する直轄地は当然王国の領地内となり、内紛は禁じている。また、直轄地には土地を護る正規兵団も派遣されているため、安全の状態が保たれている。

その直轄地を脅かす存在が、紛れもなく奴らということになる。



「今現在、自治領地の持つ力で王国に対抗できるのは、マホトラスの連中しかいない。民や自警団の者からすれば、我々王国正規兵はプロ集団のようなものだ。勝てるとは思っていないだろう…だが、奴らなら話は別だ。先日、北西部の直轄地に派遣されていた兵士たちが戦闘に遭遇し、14名いた兵士全員が惨殺された。町の外で警備にあたっていたとのことだが、それを発見したのは貿易商人だったそうだ」


「北西部でも奴らが…?」


「あぁ。現在その直轄地は別の部隊の者が管轄している。しかし民たちはその事実に震え上がり、逃げ出す者も出ているそうだ」



「…」




北西部…といえば、この大陸の海岸沿い。

この城も海からそう遠く離れた地域とは言えない。ただ、最北西部の直轄地から城までは長い距離を有している。馬で移動したとしても、一週間以上はかかるだろう。

奴らもこの城の所在地は知っているはず。今回俺が遭遇した東部地域…山岳地帯手前という立地も、城からは遠く離れている。馬で行けば一週間以内の距離だが、兵士たちが全員馬で攻めてくるかどうかは、分からない。


奴らは、王城から遠い地域で事を起こし、徐々に近づいているのか。

だとすれば、いずれ北部でも……。



「そこでアトリ君」



彼が思考を巡らせている間に、今度は王がその口を開ける。

彼はすぐに王の方へ視線を向ける。その真剣そうな表情から、何を言われるのかは既に分かっていた。



「北西部の防衛部隊に入り、民たちのそばで防衛してもらいたい。マホトラスの存在は民たちも知っている者が増えている。王国に匹敵する脅威だとするのなら、民たちの動揺も心配される。直轄地は国の領地であるために、護らねばならない重要な場所だ」


「かしこまりました」


「…とはいうものの、今すぐという訳ではない」



兵士である以上、国に仕え国の為に尽くすのは当然のこと。

ハッキリと「かしこまりました」と言葉を返したアトリだったのだが、次には王はそのような言葉を言い、思わずアトリも疑問の顔を浮かべてしまう。奴らが現れたのなら、すぐにでも対処する方が良いだろう。しかし、その限りではないということも、二人は話す。



「アトリ君はまだこちらに戻ってきたばかりだ。それに、奴らの存在を感知してからは部隊も送り込んでいる。アトリ君が入れ替わるようにこちらへ戻ってきた、数日前のようにね」


「……」


「だから、少しの間は休息を取ってもらいたい」



まさかエルラッハ王ともあろう人が、兵士に対し直にそう伝えてくるとは彼も予想していなかった。

彼の心の中は波立ちやや動揺を覚える。

思わず視線を逸らしてアルゴスに向けたところ、アルゴスも少しだけ笑顔を見せて小さく頷いた。上士としても認めているのだろう。

彼は自分の功績や評価というものをあまり気にしない人である。

しかし、それは集団社会においてはある意味で欠点とも言える。自分の頑張り、働きが組織という集団にどれほど影響を与えているのか、その視野が狭いということにもなりかねない。

決して悪いことばかりではないが、純粋に自分に対する評価というものを知り、それを理解することも必要なのだ。

アトリのそれは、休息を少しでも取って欲しいという相手からの申し出により、評価を受けていた。

もっとも、これも評価の一つだ、などとアトリは思っていなかったのだが。



「はは、そんな顔をしないでくれ。アトリ君の力は頼りにしているが、アトリ君以外にも頑張っている人たちもいる。彼らを信じて欲しい」


「…分かりました。具体的な出征時期などが決まりましたら、お知らせ下さい」



しかし、多少は自分のことを配慮してくれているのだろう、と彼は思い断ることはしなかった。王からの申し出なのだ、断れるはずもない。改めてアトリは座りながら深々と一礼をする。封書の内容は分かった。次に何をすべきかもわかった。いずれ大陸の北西部、沿岸地域に派遣されることも判明した。戦いは再び訪れるだろう。そのために、少しばかり準備をしなければ。

そのために、一つ。この二人には打ち明けておかなければならないことがある。



「閣下、一つお願いしたいことがあります」


「……?」



常に礼儀良く姿勢良く、と王にその姿を見せているアトリだったが、その表情や緊張感がより引き締まるような感覚を、王もアルゴスも感じ取った。室内の空気が入れ替わるようにして、アトリが主導権を握っていく。

そしてアトリは、先日のことを思い出して、ある一つの提案を行う。



「宝物庫にある、魔術本の開示を許して頂きたいのです」


「魔術本、だと…?」




その時だった。

王の表情が一気に険しいものとなる。それをアトリの横にいたアルゴスも見ていたし、アルゴス自身もそのような表情を見せていた。

空間内部に沈黙が発生する。僅かに十数秒。だが、アルゴスとエルラッハは互いを見て、頷く。

何か癇に障るようなことでも言ってしまったか、と思ったが、次の言葉でその可能性は消えていた。



「アトリ君。それはつまり、敵に魔術師がいる可能性がある、あるいは魔術師と遭遇した、とこちらは捉えて良いのか?」


「確証は持てません。私は魔術師でも無く魔力も持っていませんので…ただ、明らかに人並み外れた戦闘力というものを感じました」



そこで、アトリは二人に自分がこの派遣先の自治領地で経験したことを話す。二人の男についての話。

一人は、長槍の兵士。もう一人は、黒い剣を持つ兵士。

いずれもアトリの敵わなかった相手。特に後者、黒剣士に関して言えば、自治領地で防衛役を務めていた味方の兵士たちの数多くを、たった一人で斬り殺してしまった男である。

単純に彼が今までそのような兵士と遭遇したことが無いから、それを魔術師という理由付けにしているのかもしれない、とも自分の中で考えたが、王とアルゴスはその話を真剣に聞いていた。

自分の身が危険に晒されたこと。その力が圧倒的に強大であったこと。槍兵の槍に何かが宿ったような、そのような光景を見たこと。

それらを話していくうちに、王も理解した。何故正規兵たちが次々と殺されてしまうような状況が生まれるのかを。



「なるほど…魔術か」


「魔術師…と言うよりは、魔術の力を借りた兵士、のようですね…」



王が呟くように言うと、それにアルゴスが反応する。

その話はアトリも北東部の防衛部隊の一部を管轄するヒラー隊長から聞いている。魔術を行使するためには魔力というものが必要で、その魔力を持ち合わせている人は、ごく少数なのだと。

王もアルゴスも、そのごく少数の人間が敵兵士にいることを伝えられ、敵戦力の強さの元を掴んだような気がしていた。

現実からはかけ離れたような世界観を持ってしまっている、魔術師という存在。それが敵にいる…確証はないが、その可能性があるということだけで、危惧すべきものだった。



「それで、お前は魔術の本を見て対策を考えよう、と?」


「はい、隊長。何も知らないより知ってから相手にした方が、まだ可能性はあると思うのです」


「…そうか。王、いかがなさいますか」




王は自身の手で顎に触れ、少しだけ考える。

宝物庫にある物は何も王だけの私物ではないし、国宝として迎えられた品の数々が納められている。

が、一方で魔術本や歴史書といった類のものは、一部民たちに公表しないように気を使っているものもある。

アトリは元々宝物庫の警備兵を担当しているし、彼のみに開示することに異論は無かった。しかし、別の要因がその悩みを発生させている。

これは、王とアルゴスの中で共有された悩みの一つ。

アルゴスも王が答えを出すまで明確な解答を示そうとはしなかった。

失礼ながらも王にその判断を委ねたのだ。

そして出した答えが…。



「…分かった。後でエレーナに同行させよう。彼女の力を借りるといい」


「王女様を、ですか…?」


「そうだ。一人で見るよりは頼もしかろう、私の娘は。それに、久々にアトリ君も城に戻ってきたのだ。顔を見せてあげて欲しい」




アトリには分かっている。

エルラッハ王が自身の娘、エレーナを気遣っていることが。

彼はエレーナの昔の姿をよく知っている。

同じように、王も二人の昔からの仲の良さを知っている。

無論、王自らが二人の姿を見たこともあるし、エレーナ本人から話を受けたこともある。

エレーナにとっては、アトリの存在は王族と庶民、というような関係ではない。同年代の本当に近しい存在だということを、王も知っている。

王族は王族としての教育を受けるため、人前に出る機会が少ない。

彼女であれば、王城から外へ出る機会が少なかった。

その過去を、エルラッハは今も気にしているのだ。

だからこそ、仲の良い二人を共に行動させることで、お互いが思考の助け合いが出来るものと考え、そのように提案した。



「かしこまりました。夕刻過ぎにでも」

「娘には私から伝えておこう」



そこで話は終了した。

アトリとしては、ヒラー隊長に言われた通りの手筈を組むことに成功した。

正直宝物庫の中身を、普通の兵士が閲覧するというのは通常ではあり得ないと言われるほどである。

宝物庫の警備兵も、本来であれば近衛兵や親衛隊などの上士階級の兵士が務めるものであるが、今は召使や他の上士に頼む機会がある。そしてその中にアトリも含まれている。

アトリが王城の上層階で仕事をする理由というのも、当然ある。

それも王族、特にエレーナに関わることであったが。



「では失礼します」



退出前、アトリは扉の前で深々と頭を下げ、二人の前から去っていく。

ドアが閉まっていく音。ガコン、というやや重たい音を立てて足音が消えた後、二人は同時に溜息にも似た動作をした。

アルゴスは膝の上で両手を組む。エルラッハはこめかみに触れた。

二人とも悩ましい表情のまま、言葉を交わす。







「…気付きましたね。彼は遂に」



「…あぁ」




いずれは気付くと思っていた。

だが教えることはしなかった。これまでも、そしてこれからも。




あの男が、そう言ったのだから。





アルゴスも、王も。

アトリという男の姿を見て、その姿が徐々に戦争の渦中に入り込んでいくその姿を見て、ある共通した一人の男を思い出すのであった。




2-2. 国王との謁見




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