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Broken Time  作者: うぃざーど。
第1章 死地の護り人
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1-1. プロローグ




 普段は意識しないのかもしれない。ある時ふと、「何故だろう」と思う限りのことかもしれない。



 私たちの世界には、時間に満ちている。私たちの身体、心、物の動力、自然の流れ、言葉、あらゆる事象現象は時間と共に生きている。むしろ、時間によって私たちはこの世に生を受けているのかもしれない。時間が私たちの歴史を記憶し、私たち自身のライフストーリーを刻んでいく。1秒経てば後ろは過去。今を歩けば現在進行形。1秒先を見据えると未来の時間軸を見ることになる。性質は異なるが、根本は時間の流れによって生まれている。私たちがどのような過ごし方をしようと、時間という永続的な現象は消えることが無い。私たちが時間軸から飛ばされるということは、いずれやってくるその時、時間さえ感じられなくなる状態になることだろうか。それを定義づけるのは少々難しいだろう。そう、私たちの生活には時間が満ちている。事あれど常に流れ続ける永続的な現象。そんな時間という概念は、いつ生まれたのだろうか。世界の標準時や時差を考えたのは確かに人々だろう。では、時間という存在は一体何が生み出したのか。何となく想像はつくのだろうが、確たる答えは用意できない。少なくとも、この物語にある世界の中では。



 ところで。人々の周りに流れている時間の中で、人々は実に様々な経験を積み重ねてきた。生き物としてこの世界に定着するため。幸せを得るために努力すること。目的を叶えること。生涯を安泰させること。一人ひとり形は違えど、あらゆる経験が人々を世界の台頭者として確立させていった。常に動き続ける時間の中で、人々は世界を支配するようになった。人々が、世界の基準となった。

 その過程には、争いが生じた。己と相容れない者たちを排除しようとする争いが。自我と欲求を埋め尽くすために相手を潰しにかかる、争いがあった。人々の歴史は戦いの歴史と言っても過言ではない。それは、この世界とて同じことである。世界の支配者として確立された人々は大勢いる。だが、その過程には上下が発生した。常に人々すべてが同じ立場で世界の支配者として君臨することなどあり得なかった。必然的に争いが発生し、それによって上に立つ者、下に降りる者が現れた。上は下を支配し、下は上に従う。世界の中心となった人々と言えど、そこには誰もが平等で自由で権利あるものとは言えなかった。勝者が正義、とはよく言ったものである。争いに勝てば上に立ち、負ければ下に落とされる。そのような成り立ちが、やがて世界の支配者として大きく強大な勢力を形作っていく。たとえ上に立つ者が堅実者であっても、暴君であっても、形あるだけは膨張拡大を繰り返した。だが、これもまた運命なのか。そのような状態がいつまでも続くかと言えば、そうとも言い切れなかった。大きな支配に対抗する者たちも当然現れる。中には下に蹴落とされた者たちが再起を図る者もいるだろう。そうすることで、再びその間に争いが発生する。


 争いが発生すればこれを鎮圧し、また発生し鎮圧し…その繰り返しである。人々の勢力、国と呼ばれるものは争いを絶えず行い、耐え、攻め込み、そして拡大と滅亡を繰り返してきた。たとえその勢力が少数であったとしても、仲間と共に立ち上がり戦おうとする集団の一種を、そう呼ぶ者もいた。人々の歴史は常に争いと共にあった。争いが無ければ平和ではあったかもしれないが、不毛な世界であったかもしれない。全く争いの起こらなかった時代が無かったのだから、結果を知る者はいない。争いの数々は、時間もまた記憶している。過ぎ去ってしまったもの、歴史の一部として。

 この物語に登場する人々も、ある意味でこの歴史を引きずりながら生き続けている。それが本意でなかったとしても、起きてしまうものもある。防げないものもある。自分たちと相容れない者たちを排除しようとするのは、過去も今も変わらないこと。その都度争いが発生し、無関係の人々も関係者として扱われ、仕舞いには巻き込まれることもあった。これもある意味、不毛な歴史の継承を現代でも行っているのかもしれない。飽くなき人々の争いを過去、現在、そして未来でも人々は続けるのだろう。人々の飽くなき争いの行為、その根底にある人々の思いは、宇宙の広がりよりも果てしないものであったかもしれない。



 戦う理由はある。

 戦う意義もある。


 ただ、望んでいた結末とは違ったかもしれない。予想していた状況とも異なっていたのかもしれない。



 それでも、争いが絶えることは無い。

 人々の命ある限り。





 ――――――。




 この世界には、一つ大陸が存在する。

 人々は、その大地のうえで人生を営んでいる。


 広大な大陸の中には、大きな山々や広い川、灼熱の季節に覆われた地域や樹氷に覆われた地域もある。もっともそれだけでは説明しきれない。村もあれば森もあり、町もあれば集落だってある。あまりに広すぎる大陸の中には、その地域相応の暮らし方というものがあるだろう。そのすべてを知り尽くし、表現することは容易ではない。この世界に存在する一つの大陸を示した地図がある。あるにはあるのだが、あまりに広すぎるためか、その地図とて信憑性が薄い。地図を作った者ですら、すべての地域を回ることなど出来なかった。出来たことと言えば、複数人が協力して大陸の外枠を描いた程度。その中身のすべてを知ることは無かった。ある意味その方が都合が良いという人もいるだろう。中には冒険心に駆り立てられ、世界のあらゆる地域を渡り歩く人もいるかもしれない。あるいは、そういう人たちによって地図は埋められていくのだろうか。



 とにかくも、世界には沢山の地域が存在する。地域に具体的な定義は無く、僅かな人数で構成されるものもあれば、大規模な人数で営まれるものもある。そう、人々が「国」と呼ぶような、大規模なものもある。


 この世界では、そうした地域を大雑把に「自治領地」と呼ぶ。その地域に住む人々によっては国と呼ぶ者もいるのだろうが、国とはまた別に存在している。自治領地では、その土地の旧来の管理者か、あるいはその土地を支配する者が、あらゆる施政権を握っている。自治領地によって地域の特性や性格が異なり、その姿を数えることは難しい。自治領地に暮らす人々は基本的に施政の管理者の方針に従いながら、自分たちの生活を毎日営んでいる。そして、自治領地には自分たちの領土を護るために警備部隊が置かれていることが多い。警備部隊は、どれほど小さな自治領地であったとしても、地域を護るために必要な力の一つである。この世界にはまだ見ぬ自治領地が多く存在している。いつの日か、彼らは自主的にそうした警備部隊を組織するようになった。他人の侵略から自分たちを護るために。兵力など作らなければ、毎日もっと平穏に過ごせただろうが、何故こうなってしまったのか。それは前述の通りである。人々の歴史は争いによって刻まれている。それは、昔のみではなく、今も。自治領地の中では、資源を求めて他の地域へ出征することもある。建前は「もしもの時に」ということで兵力を率いるのだが、事実上侵略行為であることに間違いはない。


 そもそも、自治領地との境目はどこにあるのか。それを決めるのは誰か。その辺りも誰かが定義している訳ではない。その土地に住む者たちが穏便に話を済ませられるのなら、このような事が起こることも無かったのだろう。だが、時が経つにつれて自治領地の間で争い事が発生する。あの資源は自分たちが発見したのだから、譲ってほしいのであればこちらの契約に乗るべきだ。いや、あれはこちらの領地に跨っている。はじめから主権はこちらにある。結局、相容れない者たちの意見など交わしたところで喧嘩にしかならず、呆れて交渉にもならない。

 ではどのように解決を図るか。



 「戦争」である。



 分からぬのなら、分からせてやる。筋金入りの排他的思考者もまた、存在する。もちろん穏便に済ませようとする者もいる。が、この世界の多くの自治領地は、他の勢力との争いを経験してきた。どれほど小さな地域同士であったとしても、そこに戦いが発生すれば、彼らにとっては「戦争」である。ひとたび剣を抜けば、終わる頃には剣は刃こぼれしており、そして人々の悪性と悪臭、その体内を右往左往と動き回っていたはずの赤い液体がビッシリとこびりついているのである。剣は凶器。凶器であるのなら、その役割を果たさない訳にはいかない。どちらかが斃れるまでは。

 自治領地同士での戦いは後を絶たない。だが、負けてしまえば吸収合併されてしまう。それを恐れて負けた側の自治領地に住んでいた人々が、各地へ離散することも少なくなかった。あまりにむなしい現実がそこにはあった。しかし、そうした過程で自分たちの勢力図を拡大させていった自治領地もある。あっても不思議ではない。より強く、より高くを目指し突き進む者たち。それに押され消えて行く人々や、その生き様に共感し共に戦う者たち、人は様々であった。やがて大きな勢力が誕生すると、別の大きな勢力との争いが発生する。再び戦争が巻き起こる。周囲の自治領地は、自分たちの領地に近い大きな勢力を応援し、相手の勢力を打ち負かそうとする。その逆もまた、存在する。そのような過程が数多く繰り返されてきた。



 そして、今もそれは変わらない。だが、状況はかつてのものとは変化した。



 自治領地の争いは、確実に一般の民を巻き込んでいる。本来平穏であった日々を強引に奪われ、服従を命じられる。それに反抗すれば、待ち受けるのは非情な日常。そのようなことがあってはならない。誰もが自由であり、平等であり、そして共に生きる地域が必要なのだ、と。きれいごとを沢山並べた妄想者だとしても、それを現実にしてしまう者が現れた。カリスマの到来だったのかもしれない。妄想と思われてもそれを信条に貫き通したその者は、ある自治領地には戦い無しの交渉を。敵対してしまった自治領地には武力を持って、その諸悪の根源を叩き潰した。自由と平等を求める、正義の戦争。もちろん血は流れた。だが、その果てに待ち受けるのが、皆の求める理想郷であるのなら。


 こうして、長い月日に渡り続いた世界各地の争いは、その一部分だけが平穏を迎えた。自由と平等を得るための戦争。それに勝利を続けたその者たちは、新たに自由と平等を勝ち取った領地の中で暮らすようになった。そして、これを煽動し主導してきた者を讃え、その者は後に「王」と呼ばれるようになる。広大な大地の中に一つの巨大な国を作り、安定で豊かな生活を送れるよう努力した。その結果、その安らぎを求める民たちが領地にやって来て、より領地は活気溢れるものになり始める。ある自治領地はその恩恵を受けるために統合し、ある自治領地はその平穏を私たちにも保護して欲しいと契約を結んだ。そうして出来上がったのが、一つの王国。



 だが。人々の歴史の何と悲しいことか。それでも争いが絶えることは無かった。自由で平等な生活をしている人々がいる一方で、今も苦しみを一身に受けている人々もいる。さらに、そんな王国にも対抗しようとする者たちも現れ、その対抗勢力は徐々に拡大を続けていた。



 物語は、ここに始まる。人々の戦い。国同士の争い。人一人に与えられた時間さえ否定するほどの拒否と拒絶。排除しようとする思考は、今も昔も変わらない。そんな荒んだ世の中、平穏な日々を送る一方で、その平穏な日々を迎えさせようと、あるいはそんな日々を護ろうと戦う兵士がいた。






 1-1. プロローグ







皆さんこんにちは。

さてさて、新しく書き始めました小説「Broken Time」良ければ今後とも見てやって下さい。

更新の頻度がかなりばらつくかと思いますが、それでも書き続けようと思います。長編小説への、新たなる挑戦として。


どうぞ、よろしくお願いします。



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