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Broken Time  作者: うぃざーど。
第4章 時間(セカイ)の歯車
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4-9. 状況確認




「あの戦い以降、上士と呼ばれる連中もかなり減ってしまった。今部隊を統率する任務を得ているのは、アルゴスとフェデラーの二人、そしてフリードリヒ王妃だ。あとはまぁ、生き残った部隊長とか、そういった奴らはいるが………」




カークス町に無事辿り着いたアトリとフォルテ。

一週間という行程を経て、アトリは本来自分がいるべき場所へ戻ってきた。

前線から離れてから、一ヶ月。

まだほとんどの兵士に会ってはいないが、カークス町駐留部隊詰所では、彼の帰還を驚きつつも喜びに変える者たちがいた。

今、彼が目の前で話している基地司令バーグマンも、そのうちの一人だ。

彼はあまり知らなかったが、アトリという男の存在は彼が思う以上に必要とされている。

その名前を知っている者もそれなりにいるし、死地の護り人として幾多の戦場を越えてきた事実もある。

彼がいれば、間違いなく戦争そのものに好影響をもたらす、とまで考えられていた。

そう思うのは勝手だが、自分がその器に満たせるほどの純度を持った人間ではないし到底及ばない。

彼自身はそのように考えていた。

だが、それが今の自分にとってすべきことであるのなら、それに応える努力はしなければならないだろう。

アトリは、基地司令のバーグマンと現況を確認していた。

兵士としての立場を確立させている彼に、バーグマンは上層部と同じような動きを取って欲しいと依頼し、彼はそれを承諾する。

同時に、バーグマンはアトリが連れてきた彼女(フォルテ)を兵士待遇として、彼の傍に置くことを提案した。

一人の人間として戦うことに変わりはない。

だが、その立場が義勇兵か、それとも兵士待遇か、とでは差が生まれる。

義勇兵は、兵士たちよりも更に立場が下になることは想像できる。

彼は彼女という存在を傍に置いておきたいと考えており、その辺りの配慮を願ったのだ。

兵士待遇などという階級や身分は基本存在しないし設けられるものでもない。

しかし、もし戦の人材として彼女を扱いたいというのならば、その戦力に心配はいらないだろう。

配慮については、バーグマンから各々に伝えるそうだが、アトリも自らの口で言わなければならない。





「総合的な戦力を言えば、かつての半分以下だろう。だが、悠長に構えている訳にもいかん」



「そうですよね。相手も黙っている訳ではない」



「あぁ。それに、私たちは防戦が苦手なようだしな?」





バーグマンとの会話はまだ続く。

彼の口から今後のことが告げられる。

現在、町の至るところで義勇兵と呼ばれる有志の兵士が訓練を受けている。

彼らは正規兵ではなく、国の為に立ち上がろうとしている大人たちだ。

一部子供も含まれているというが、それでも国の為に協力してくれるという。

国民も危機感を覚えたのだろう。

王国の権威も実力も最高水準だ、と考えられていたが、そうでないことを知らされている。

命あるものいつかは命が失われることは、確実視されている。

それは国とて同じなのだ、と。





「一週間以内に、兵士たちはここを出立して奴らとの境界線付近まで行く。奴らが占領した土地を押し上げるようにして、攻め込むのだ」




「………!一週間以内に、ですか」






そこではじめて、国としての方針を聞かされたアトリ。

いや、予想していたことではあるが、行動に移す時期が分かり心拍数が上がるのが分かる。

何とか間に合ったという思いと、これから先への不安が波となって押し合うような気分だ。

現在、上士と呼べる者たちはそう多くは無い。

全体を統括し運営する立場にあるのは、恐らく10人といないだろう。

アトリが加わったところで、何かが変わるかどうかは分からない。

が、いずれにせよこのまま待ち続けても、相手からの侵攻を受けるばかり。

しかも自分たちは防戦になると弱い、という弱点まで晒されている。

今はマホトラスも兵員補充や物資の確保などを優先しているため、攻めてきていないだけだろう。

だがその気になれば、すぐにここへ駆けつけられることも考えられる。

攻められる前に攻め始め、相手を削っていく。

有利な状況を作っておきたいという考えのもと、侵攻を決意したのだという。





「しかし、アトリ殿が作戦案を見れば、また何か思い浮かぶかもしれない。是非今晩から、会合に出席して頂きたいのだが、いかがかな」



「会合………なるほど、毎晩行っているのですね」






そういうことになる、とバーグマンは言った。

つまりその会合に現存する上士たちが集まり、色々と打ち合わせをしているということか。

と、彼は頭の中で解釈をした。

この作戦案を決めたのも、その会合で話し合っている人たちによるものだろう、と。

具体的な作戦案については、今この場でバーグマンに聞くよりも、本人たちに聞いた方が早いしその場で修正も行えるかもしれない。

そう判断したアトリは、とにかくも今晩の会合に出席することになった。

が、夜まではまだ時間がある。

取り敢えず当面の方向性は分かったし、今晩を迎えない事には具体的に動けない。





「ようし、分かった。到着して早々色々と無理を言ってすまないな」



「いいえ、こちらこそお忙しいところ恐れ入ります」



「なぁに、大したことないさ。昼間は皆義勇兵の訓練や外周警備に行っている。執務をすることなど、彼らの苦労と比較にもなりゃしないさ」





話は終わった。

バーグマンの時間をこれ以上奪うのも申し訳ない、ということで彼は退席することにした。

町に来てからまた少しの時間しか経っていないが、程度状況を知ることは出来た。

ここ一週間以内で、ウェールズ王城奪還作戦を実行するということ。

そのために、義勇兵たちが集められ、兵士たちはその訓練を行っているということ。

誰が生き残り、誰が戦いに赴くのか、というような情報は自分たちで集めなければならない。

すると、バーグマンは機転を利かせ、ここへ来たばかりの彼らに簡単な住まいを確保させると言った。

今までは野宿の繰り返しであったし、旅先での疲労も溜まっているだろう、と気にしてくれたのだ。

そこまでの待遇を受けられると本当に申し訳ない気分になるのだが、利用するものは利用するべきだ、というのがバーグマンとしての考え方だ。

何にせよこの先の展開が上手く運べば、一週間と滞在しない町だし、それにまた野宿に戻ることになる。

その前に休養も兼ねて、きちんとした家で寝泊まりする方が良いだろう、ということだ。

執務室から出て、隣の客室でじっと黙っていたフォルテを呼び、外の廊下に連れてくる。




「おぉ………貴方が、アトリ殿のパートナーですな?」




「はい。私はフォルテと言います」




「んん………」





執務室の中へ入ることは出来なかったが、すぐ外の廊下で二人は出会った。

お互いに初めて見る顔。バーグマンがそのように確認をすると、フォルテは真っ直ぐな眼差しでそう返答した。

やや、その場の空気が沈黙する。

今は二人が対応する空間、アトリが横から介入出来るような状況ではない。

どことなく緊張感を含むその空気ではあったが、やがてバーグマンの方から笑みを浮かべ、





「良い目をしておられる。これから、よろしく頼まれたい」





と、彼女に願い出たのだ。

まさかそのようなことを言われるとも思っておらず、驚きの色を見せたフォルテ。

彼女は戦争とか軍人とか、そういった関係のものを今まで経験してきたことはない。

それに、人との交流もそれほど盛んであった訳でも無い。

だがそれでも、相手が偉い立場にいて目的を持ちながら、自分にそう頼んだということを正確に把握した。

バーグマンからこのような話をしたということは、

自分の存在がこの男に打ち明けられたのだろう、と彼女は思いこむ。

事実その通りではあるが。

はじめてアトリという少年のパートナーとして行動を共にしていたとされる、彼女を見た男。

バーグマンは、フォルテという存在を見て初見で様々なことを思い浮かべた。

特に、彼女の瞳に映る彼女自身の気持ちというものを、感じ取ることが出来ていた。

もちろん一目ですべてを見通せるほどではない。

だが、彼女が持つ覚悟というものを、対面しただけで感じることが出来るほど、であった。

そのような存在は、珍しい。

義勇兵の中でも一目見ただけでそのような存在だと感じ取れる人は、そうそういないだろう。

彼女の何がそう思わせているのかは分からないが、バーグマンは思った。

この人の存在がどうであれ、アトリ殿がいれば彼女も立ち回れることだろう、と。





「はい。微力を尽くします」





そう、彼女は答えた。

バーグマンと共に再び受付に訪れた二人。

男は受付の眼鏡をかけた女性に、空き家に関する話を伝え案内するように伝達した。

彼らは兵士であるが、上士と同様である、と。

眼鏡をかけた女性はアトリがどのような存在であるかを知っていたし、バーグマンの言うことも理解できていた。

上士だから住まいを与えられる、という訳では無い。

ここにやってきた兵士たちの多くは、詰所以外に空き家を利用してその時を待ち続けている。

何も二人だけが特別な扱いを受けているという訳では無い。

だが、上士と同様だというのは、バーグマンなりの配慮だったのだろう。

指示を受けた女性の受付が、二人を案内することになった。

バーグマンとは一度そこで別れる。




「アトリ。無事に話はついたのですか」




「程度は。だが、今晩会合が開かれるとのことだ。フォルテもそれに同席してもらいたい」




「はあ。それは構いませんが………兵士でも無い私がそこへ訪れても良いものなのでしょうか」




「フォルテの立場は少し特殊なものになる。あの人が上士たちに掛け合ってくれるそうだが、俺から言わない訳にもいかない。だから今日は、彼らにフォルテのことを紹介するくらいはしないと」





その受付の女性に確認したところ、空いている家はもう殆どないが、郊外の離れに一軒こじんまりとした家がある、とのことだ。

カークスの中心部から歩いて20分から30分程度離れた土地。

住宅地の中でも特に離れに位置する。

方角的にはカークスよりも更に南へ向かったところだ。

その道へ歩いている最中、フォルテが小声ながら彼に聞いてきた。

彼女の心配はもっともだった。

自分は兵士でも無いし、アトリとは全く立場が異なる。

だが、そんな自分が上士と呼ばれる階級の高い者たちの参加する会合に、出席しても良いだろうか、と。

アトリはまず自分と共にフォルテという存在がここへ来てくれたことを知らせなければならない。

それと同時に、彼女の口から自らの紹介をする必要がある。

そのように考え、そうするようにあらかじめバーグマンには伝えておいたのだ。

彼女もそれ自体に了承はしたが、不安はある。

しかし、これもアトリを支えながらこの道を進んでいくための第一歩だと思って、受け入れることにする。

もうすぐその家に到着するというところ。

彼は、驚くべきというか、懐かしい者の姿が近づいてきていることを、確認した。





「………!」




「アトリ?」







その顔は、嬉しそうだった。

暫く前線から離れ、状況も変わりこれまでとは違った環境の中で生活していかなければならない。

そんな中でも、何か希望を見つけられたかのような、少年に近い顔というものを彼女は見た。

自分たちは郊外へと向かう方向で道を歩いているが、前に見えてきた彼は真っ直ぐと町の方角、こちらへと向かってきた。

受付担当の女性もその存在に気付いたようで、背筋を伸ばして歩いている。

一方、こちらへと向かってくる男も彼らの存在に気付いたのか、走ってきた。




「アトリ!!!」




「グラハムか!」





二人とも笑顔だった。

それだけでなく、その場にいた受付の女性も、フォルテも笑顔になっているのが分かった。

一目で、この二人が何か信頼を置く友人関係というものを築いていると思わせるような。

混迷の戦時下、あらゆることが立て続けに起こり、喜びや嬉しさというような気持ち、感情が薄れてしまうこともある。

特に、アトリの場合は死地での経験が自らを強くする一方で、人間的な感情だとか気持ちだとか、そういったものを遠ざけてしまう傾向があった。

そんな余分なものは、自分が持つべきものではない、と。

だが、今のこの光景を彼女が見た時、それはそれで安心した、と思えたのである。

二人は互いの無事を確認すると、堅い握手を交わした。





「生きているとは思わなかったぞ!」



「同感だ。ここで会えるとは思ってもいなかったよ」



「ははは、ようやく会えたな………再会できて嬉しいぞ………!」





正直、バーグマンの言葉や彼に仕える兵士たちの言葉だけでは、何か実感が湧かないものもあった。

だが同じようにグラハムもそのように言っていた。

生きていると思わなかった、と。

アトリが行方不明になり、恐らくは死亡したであろうという報告は、かなり多くの人が知る現状なのだと彼は改めて理解した。

たった一人。一人の人間がいなくなることで噂されるほど、自分は何かをしてきたという実感は無い。

だが現実に自分の存在が噂され、凶報が兵士たちの間に広まってしまっていたことも、理解する。

アトリにとってもグラハムが生きている、ということは喜ばしかった。

戦時下で名を知る者と出会ったということより、一人の友人としてその生存を確認出来たことが、何より嬉しかった。少年らしい気持ちの表れであっただろう。




「実は先程この町に辿り着いたばかりなんだ。基地司令のところで話をして、今離れの空き家に案内してもらうところだよ」



「そうだったのか!いやいや、恐らく遠路から来たのだろうが、お疲れ様だな」



「ありがとう。なんとかね」



「あれだな、立ち話もなんだから、俺も案内されても良いだろうか?」




と、グラハムはアトリと受付担当の女性に向けて話す。

グラハムもその女性を知っているし、その逆も通じているようだ。

女性は笑顔を向けてグラハムに返答した。

フォルテは、二歩後ろから二人のその様子を見ていた。

今は、旧友との再会なのだから、新参者の自分が割り込むものではないだろう、と。

思えば、彼女はここではじめて、アトリを知る友人とアトリとが話している姿を見たのだ。

普段彼女の知っている彼は、たとえば鍛錬をし続ける姿や一緒に農作業をしていた姿、

ここまでの道のりで言えば、魔術師と戦闘する時の姿も見てきた。

だが、自分とパトリック、それ以外の人たちとの交流する姿を見たことは無かった。

なので、彼女から見ればグラハムという男性と話すアトリの姿は、新鮮なものであった。

二人とも容姿は大人びているし、会話自体も年齢相応のものでは決してない。

だが、友人と話している時は、何となく心の霜が少しばかり晴れやかになっている気がした。




「ところで、アトリ………」




「?………うぉっっと!?」





受付の女性も快諾し、久々の友人と話が出来る時間が作れそうだった。

この時、グラハムは任務を終えてこれから町へ戻るところだったという。

日中すべきことは終わったとのことで、時間を取っても問題ないということだった。

そしてグラハムもついて行こうと、案内される前のこと。

彼は突然アトリの首に腕を回して、ぐいっと引き寄せた。

その構図、明らかに不審ではあるのだが、グラハムが小声でアトリの耳元で囁く。

フォルテに、背を向けて。





「な、何だ………」



「あの人は一体誰なんだ?とーんでもない美人じゃないかっ………」



「え………!?」





………グラハム、そういうところはあまり変わっていないな。




何も彼が女たらしだと言っている訳では無いが、やはりグラハムはグラハムで女性に目を向け、またその逆もいまだに存在していることだろう。

フォルテは、アトリからグラハムの存在を既に聞かされている。

城で女性との交友が広い彼の存在を知り、中々に面白い人だと話してくれたことがある。

そのため、フォルテからすれば、ああこの人があの時話していた………というような心境だ。

確かに女性たちが目を引く、アトリ以上に格好のつく人間だ、と彼女は思った。

これが女性たちの注目を浴びる理由なのだろう、と。

フォルテが見てもその人は格好良いと思うほどであったが、彼女は特にそれ以上を気にすることは無かった。

そんなことよりも、二人がとても人間らしく友人である姿が、少し微笑ましい。





「お前の連れなのか?ん?」



「連れ………というか、彼女は俺の命の恩人だ。あの人がいなければ今頃俺は死んでいる」



「なっっ………彼女だって………!?お前、いつの間にそんなことが出来るようにっ………」



「いや、だから注目すべきはそこではなくて、だな………」





ここで話してもどうしようもない、という彼の判断は正しかったようだ。

とにかくその場にいた4人は離れの宅地まで移動し、空いているという家を見せてもらった。

グラハムはグラハムで別に借りている家があるのだが、今の時間は自由に過ごしても大丈夫だろうという独断であった。

家としては小さなもので、それでも二人が生活をするには充分な大きさだろう。

一階建てに幾つかの部屋があり、生活に必要なものは大体が揃っているという。

もとより数日間しか居ないであろうこの家に、それ以上の何かを求めるものはない。

案内してくれた女性曰く、この家は今回の戦時下で空いたものではなく、もう何年か前に家主が亡くなってしまい、どうすることも出来なくなった家の一つなのだそうだ。

家主の血族に関係する人間が存命であれば、この家を壊すことも出来たのだろうが、不思議なことに家主はそれ以外に血族を持たない独り身で、亡くなって以降は軍がこの家を預かることになった。

取り壊すことも出来たのだが、あればあったでこのように役に立つこともある。

案内をしてくれた受付の女性とはそれでお別れし、三人は中に入って一番大きな部屋の居間で話をしていた。




「なるほど………じゃあフォルテさんがいなかったらアトリが死んでたってのは本当だったんだな」




「はい。偶然に通りかかって、彼を助けたので何とか」





ようやく事の真実を理解出来たグラハム。

それもそうだろう。

瀕死の人間を見つけて家まで連れて行き、10日前後もずっと看病し続けたというのだ。

その女性の気苦労も報われたといって良い。

彼ら正規兵たちが取得していた情報で、北西部の部隊が帰還せず全滅したというものは、ほぼ間違いなく正しいものであったことも証明される。

だが、アトリは何とか生き延び、一ヶ月ほどの静養を経てここへ戻ってくることが出来た。

正直グラハムでさえ諦めていたほどだ。

もう、あのアトリの力を借りることも出来なければ、友の姿を見ることも無いだろう。

部隊が全滅し、マホトラスが南下してきた事実を前に、期待など持つべきではない、と。

だが、これはこれで嬉しい結果の一つとも言える。

彼もアトリの噂や話を、他の兵士たちから聞く機会が多かった。

馬鹿正直に他所の地で人々を救うために戦い続ける音がいる、とかなんとか。

が、上士よりも、誰よりも戦闘経験が豊富なその存在は、期待値が明らかに大きかった。





「しかし、フォルテさんもまたどうしてこのようなところへ?正直ここに居ても危ない目に遭うだけだと思うが………」





グラハムからすれば疑問ばかりが浮かぶ。

このような戦場となり得る場所に来ても、何も良いことは無い。

しかも女性の身なのだから、と彼は心の中で思い続けていた。

確かにこの国にはクロエのように戦う女性というのも存在する。

だが、彼女のような存在こそ、国の兵士の中では珍しい者だろう。

それに、グラハムから見れば、彼女は彼の命を助けた恩人ではあるが、この地に来るということは、

少なからず彼と行動を共にすることになる。

何も良いことは無いのではないだろうか、と心配もしていたのだ。

彼は彼女を危険に晒している。二人にどのような関係があるのかは分からないが、ここに居させるべきではないだろうか、と。

アトリとフォルテは、グラハムの前で一度目を合わせた。

そして、彼女がこくりと小さく頷くと、彼もまたそれに反応して、再びグラハムのほうを向く。





「………そうだな。グラハムには、色々と話さなければならないことがあるんだ」




「ん?」




「彼女は、これから兵士待遇としてこの戦争に関わることになる。基本的には俺の傍に居てもらおうとは思うのだが………その前に、これだけはハッキリとさせておかなければならない」





まるで疑問符を浮かびあげるような顔をするグラハム。

一方、既にアトリとフォルテの意志は共有されており、確かなことが言える状況にある。

アトリは、真剣な眼差しをグラハムに向け、こう言った。










――――――――――――――グラハム。その力、どこで手に入れた?










………。





4-9. 状況確認






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