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Broken Time  作者: うぃざーど。
第4章 時間(セカイ)の歯車
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4-4. 自然の洞穴




ウェールズ王城。

王国の象徴たる建物で、国民にとっての絶対的な存在。

この城が健在であるからこそ、国民は王国にいるのだと感じる。

それほどに心の支えとなっていたはずの王城が、今はもうマホトラスの手に堕ちている。

激しい戦いの末、王国の兵士団は甚大な被害を受け、王城を放棄することになった。

一方のマホトラスも多大なる犠牲を払って結果を貰い受けた。

お互いにお互いが疲弊した結果、両方の傷が癒えぬほど激しい戦火が巻き起こってしまった。

王城と城下町を巻き込んだ戦闘は、必然的に民をも巻き込み、無抵抗の国民が殺される事態となった。

誰がそのような光景を望んだことだろうか。

簡単に奪取できるとも思っていなかったが、よもやこのような悲惨な状況に追い込まれるとは。

そう思ったのは、マホトラスの人間たちであった。

マホトラスと名乗ってはいても、かつてのウェールズの同胞であることに変わりはない。

今は袂を分かつ存在となったとはいえ、言うなれば自国の領土を食い荒らしているともとれる。

だがそれでも、彼らは結果を導き出した。



今、ウェールズ王城の周囲、城下町にはちょっとした異変が現れ始めていた。

先の戦いで傷ついた城下町は、今も修復作業が占領民によって進められている。

マホトラスの人間たちは王城に、占領され支配下となったウェールズの国民は奴隷に。

国民が労働力となり、ありとあらゆるものの修理と建設をしなくてはならなかった。

その、ちょっとした異変というのも一つの結果だ。

城下町は、東西南北にそれぞれ通じる街道がある。一つの街道は王城が始発点で、それ以外は十字路でお互いが交差し、それぞれの方向へ進むことのできる広い街道だ。

街道には城下町の活気あふれる店たちが立ち並んでいるのだが、戦争はそれにさえ牙をむいた。

すべてがすべて壊された訳でも無いが、損傷を受けたものから店の主を失ったものもある。

酷い戦いだったのだ。

国民をも失わせる酷い戦いがそこにはあったのだ。

そして今、マホトラスは新たな方法でウェールズへの対抗策を作り上げつつある。

奴隷とされてしまった国民たちが、石や木材を運び続ける。

大人も子供も、人であるのなら皆がすべて労働力であった。

形を整えるためにはあらゆる力を行使してそれを完成させる。

今日も今日とて、日中は国民が使役され汗を流す光景が至る所で見られた。





「………もうすぐだな」





その様子を、王城の上層階でガラス越しに眺める、男の姿があった。

男の顔は愉快なものを見る不敵な笑みで覆われている。

心の中にある野心がもうすぐ完成するのではないかと、期待するような顔だった。

彼の名は、ゲーリング。

マホトラスの軍勢を指揮する指導者。

今はこの王城と城下町の復旧、整備を自ら指揮する身となっている。

王城や城下町の修復を命じたのもゲーリングであり、更なる変化を求めたのも彼だ。

この地は必ず、再び戦地となる。

激しい戦闘が繰り返されるだろうし、場合によっては前以上に酷いものとなるだろう。

それを防ぎきることは恐らく不可能だ。

だが、せめて防衛できるほどの対策を整えておかなければならない。





「順調に進んでいるようですね。城塞都市計画」




「ん………イザベルか」






内部から外を眺めていたゲーリングの背後、5メートルほどの距離に現れた、その女性。

姿が確認出来るよりも前に声が届いているという、不可解な現象。

その声を聞いたゲーリングは浮かべていた表情をすべて消し、突然現れた女性に対し少しばかり驚きながら、窓から中の方を向く。

彼の目の前に立っていた女性は、真紅のローブを身に纏っている。

背は少し高いが顔立ちはどことなく子供の感じが残るもの。

髪は少しだけ長い程度でおさまっている。

丈の長いローブは地面につくかつかないかというところで合わせられているようだった。

彼女、名を『イザベル』。

マホトラス側につき、更に平然とこの階層に現れる女性だ。





「何用だ。態々こんなところに足を運ぶとは」




「いいえ、特にこれといった用事はありません。ただ妙に外を眺める貴方の姿が見えましたもので」




「妙、とはなんだ。これでも私は城塞の様子を窺っているのだ」





『城塞都市計画』

イザベルの口より放たれた、ゲーリングの打ち立てる計画。

文字通り王城や城下町を城塞化し、敵の侵攻を食い止めるための作戦の一つだ。

もっとも、彼らの侵攻があるであろうこの短期間で城塞など完成するはずもない。

望まれる城塞には程遠いが、それでも迎え討つための準備は整えることが出来る。

十字路の街道から南側、つまり王国領の南部へと通じる道に兵士たちが構えることのできる砦を設置し、

それ以外の場所からの侵攻を食い止めようと言うのだ。

もしこれが完成すれば、ウェールズ王国軍はその砦を通過して城下町まで入らなくてはならなくなる。

好き勝手に出入りすることも出来なくなるし、検問を設けて出入りに制限を設けることも可能だ。

更に砦には兵士たちが見張ることのできる高台を設け、敵の侵入があれば砦から迎撃できる仕組みを整えようとしていた。

接近してくる敵は、基本的にこの砦を通過しなければならない。

だがその姿が見えたのならば、砦から待機している兵士たちに命じて、弓でも岩石でも放てばいい。

そうすることで、相手に侵入される前に損害を与えられるし、それが防壁としての役割も持つ。

それが城塞都市計画の概要だ。

目的と役割がハッキリとしているために、作らされる国民もその意図を察することだろう。

マホトラスは、ウェールズの王城奪還を待ち構えている。

とはいえ、ここに辿り着く前に、既に占領地である南部の境界線で、幾度も戦闘が起こるのだが。





「お前は自分の役割に徹しているがいい。態々私のもとを訪れるまでも無い」




「存外な扱いですね………私とて人間です。持つべき時間はありますし、使い方も自由で良いと思うのですが」






“私とて人間。”

ゲーリングにも確かにそれは分かるし、彼女の姿を見ても誰もがそう思うことだろう。

歳は若くその顔にはほんの少しの子供っぽさと大人の美しさが備わっている。

だが人間らしいというのは外見のことを示しており、その中身はどうだろうか。

彼からみれば内外の違いで人間という認識も大きく入れ替わる。

彼女(イザベル)はマホトラスに所属する魔術師である。

女性としての見た目からはその姿を窺うことは出来ないが、背格好で普通の人間でないと悟られる。

もっとも、この女性は普段ずっと王城にいるために、外で誰かと会う機会など無い。

城内でさえ接触しないというのに、なぜか彼女はよく上層階の人のいないところに現れるのだ。

まるで亡霊のように。

人間であると認めてはいても、その事実を前に人間らしいとは思っていない。

それがゲーリングとしての彼女に対する考え方であった。




「………まぁいい、好きにしろ。それよりお前の蔵は順調なのか」




「はい。既に10名ほど出来上がっております。後はその時が来れば始動を命じるだけです。良い蔵を貰いました。広い空間でありながら、外界と遮断できる場所にある」




「そうか。行きたくも見たくもないが、それが役立つと言うのなら使うまでだ。お前含めてな」





ゲーリングの目は冷ややかで、まるで敵を見るような視線であった。

無論それはこの女性にも分かっているが、態々それに何かを言うつもりはない。

この人は、出会ってからこのような目つきを持つ人なのだから。

と、彼女は自分の中でそのように判断をしていた。

イザベルは魔術師であり、ゲーリングは普通の人間だ。

彼から見れば、先日ここを離れ南部の防衛に向かったリッターも、今どこにいるかも分からない野良犬のような槍兵オーディルも、普通の人間とは違う何かと判断している。

それが人間の姿を纏った魔術師という体なのか、それとも他の何かか。

ともかく普通ではないという認識を得て、その普通ではない者たちを扱っているのだ。

イザベルの扱いもゲーリングが一役買ってはいるが、彼女は他の者たちに比べ何か異なるものを持っている。

彼はそのように感じていた。

イザベルは戦闘に出るような人間ではない。

だが魔術師としての在り方は既に見せられている。

他の普通の人間たちと接触してはならないし、この秘密を知られる訳にもいかない。





「分かりました。蔵に戻るとしましょう。………そうだ、一つ追加です」



「?」



「先程、重傷のゼナさんが戻ってきたようですが」







――――――――――――――――。



彼はその報告ですべてを悟った。

もし、ただ「ゼナが帰還した」とだけ聞いていれば、このようなことを思わなかっただろう。

だが重傷という言葉にそれほどの意味があると、ゲーリングは読み取っていた。

ゼナも魔術師であり、魔術師らしからぬ暗殺剣を握る女性。

ひとたび戦いとなれば猛威を振るうことだろうと、そう思っていた。

彼女に任せたのは、アトリという少年を討つこと。

たかが少年一人の命を取るのに、魔術師一人を派遣する。

それさえ愚行とも呼べるし、態々手間をかけている阿保らしいことではある。

彼もそれを充分に承知していたのだが、そのゼナが重傷を負って戻ってきたということが、

危険な匂いを漂わせる。




ゼナは、敗れたのか。

戦いの末疲弊し傷を負いながら勝った、のではなく。





それが事実だとしたら、

その少年がどこへ向かったのかを問わねばなるまい。

今までウェールズ王国軍の本隊に少年がいなかったのは、ある時槍兵が少年の命を取り損ねたからだろう。もっとも彼本人は、致命傷を負わせた後は周りの兵士が追いかけて行ったと話していた。

だが、現にあの少年は生きている。

魔術師を撃退してしまうほどの腕を持っている、と考えて良いだろう。

あるいは………。





「話せる状態にあるのなら、色々と聞くまでだ。それとイザベル。もしかしたら、だが………お前も少しこの剣に関わってもらうやもしれん」




「………」






それがどのような意味を指しての言葉か、彼女にはすぐに分かった。

何故なら、今彼女が魔術師としてしようとしていることと、既に関わりがあることなのだから。

広い工房のような蔵と、外界から隔絶された(うてな)

ある一つの目的の為だけに、あるものたちを用意する。

もしかすると、そのうちの一つになってしまうのではないか、と。

若いなりにこの道を踏んできた彼女の感覚が、そのように思わせていた。






………。



時間は少し巻き戻り、彼らが旅路に出てから4日目の夕方のことだった。

その日はマホトラスの兵士であり魔術師であり暗殺者であるゼナの襲撃を退けた後、

順調な足取りで道を歩き続けていた。

ゼナの襲撃以降、道を阻む敵が現れることはなかった。

マホトラスの占領地内にいる間はずっと警戒を続けていたが、寧ろ最大の敵となるのがゼナだったのだろうか。

アトリとしては難なく退けてしまったために、それ以上の強敵が現れないことに少し安心していた。

彼らは夕方頃には、地図上でマホトラスの占領地であろうところを抜け出していた。

ウェールズとマホトラスの領地の境目は、必ずマホトラス軍の兵士がいることだろう。

だから彼らは、昼間から領地を抜け出すまでの間は、出来るだけ人がいない道なき道のようなところを歩き続けていた。

マホトラスの兵士たちと接敵して勝てないことはないだろうが、普通境界線というのは相手の防衛も強化されていることだろう。

その分相手の数も増える。

数が増えれば二人で戦う負担も大きくなるし、勝つために手段を行使せざるを得ないこともある。

それは今は避けたかった。

そのために道なき道を行き、夕刻辺りはまるで谷にいるような川沿いを歩いていた。

地面には石ころが混在しており、地面はとてもじゃないが荒れている。

川の流れのすぐ近くを歩いていたが、自分たちの視界の両脇は大きな壁があるようだった。

元々この川は何も無かったのかもしれないが、長い月日を経て谷間を作るようになったのだろう。



そして。

そんな道なき道に追い打ちをかけるように、強い雨が降ってきた。





「………はぁ、はぁ………」




「………」






先程までは川沿いにいたということもあり、別の意味で身の危険を感じた。

雨も急に降り出してきたもので、その勢いは強くなるばかりであった。

その兆候が見られたとはいえ、降り出すことは確定していてもその時間を正確に読み取るのは難しい。

とにかく川辺に居ては濁流となり飲まれるかもしれないということで、少しでも高いところに行った。

途中まるで崖のような急斜面に出くわす機会があったが、そこではアトリの会得した魔術が役に立った。

崖を登っても良いが危険が生じる。

自然というものはいつ人間に牙をむくか分からないものだ。

この崖とて例外ではないだろう。

そんな時。




「………登りましょうか」




「いや、考えがある。………その、フォルテが了承してくれるのなら、ということだが………」







………。







「っ………!?」




「ああいや、変な意味は無い。曲解しないことだ………!」




「………そ、そうです、ね!確かに、こういう時にも使える魔術だっ」






正直疲れた。

いや、一週間も歩いていればそれくらいあり得る話だとは思うが。



崖とは言うが、自分たちは川沿いを離れてもなお低い土地にいた。

目の前に立ちはだかる壁のようなそれは、登るくらいは出来るだろうが少し高い。

その間に足場が崩れたら落ちて怪我どころの話ではなくなるだろう。

そんな時アトリが提案したのが、魔術行使で力を増幅させつつ、瞬発的な脚力を増加させてこの崖を飛び越えてしまうことだった。

つまり、彼女を背負って魔術により人ならざる高さを飛び越えようというもの。

アトリが足などに強化を入れて瞬発力を上げたりすることが出来るのは、フォルテも知っていたし鍛錬している間に見ていたことでもある。

だから、アトリの魔術であれば容易く飛び越えられるだろう。その確信はあった。

だが、彼女は戸惑った。

理由は意外というか、違和感というか。

彼が彼女を背負う、という行為に対し、彼女は驚きの色を示したのだった。

彼が他意のないことくらい分かっているはずなのに、なぜかそれに反応してしまった彼女。

あまりにも素直な反応ではあったが、すぐに自らを取り戻そうと強制させ、アトリの提案を受け入れた。

難なく飛び越えた壁だが、いまだ亀裂の中にいるような土地であることに変わりはなかった。

荒れた土地、大自然の中に埋め込まれた傷跡のような土地。

とても人が近くを通りかかるとも思えない場所。

自然の恐怖を知るには充分だろうという大きさの谷は、外界から閉ざされた異世界のような場所にも思えた。

そんな場所に、忽然と一つ現れたのが、洞窟だった。





「酷い雨だな。だがここなら川の心配はいらないだろう」




「そうですね。少し高いところには来ましたから」





とはいっても、通るべき道とは言い難いこの辺り。

既にマホトラスの領地は脱しているだろうから、この後は地図を読み取りカークスの町へ向かう道へ戻るだけ。

だが、雨はとても止む気配にない。

彼らが辿り着いた洞窟は、大きな壁に埋め込まれたようなもので、普段ここを人が通らなければ全く気付くことの無いだろうものであった。

壁に穴を作ったようなもので、出入り口付近は広いが奥には暗闇が続いている。

二人はその入口付近、明かりが何とか届く辺りで雨宿りをすることにした。

雨が降り続いては道中進むことにも支障が出る。





「今日は、ここから動かない方が良さそうだな。安全を第一にしよう」



「ですね。………あぁ、その、アトリ。先程はありがとうございます」



「お気にせず。少し強引だったかな」





と、彼が少し笑みを浮かべながら彼女の方を見ると、

彼女はその言葉に対して「いいえそんなことありません!!」と、半ば焦るような姿で言葉を返した。

それがアトリには少しだけ嬉しかった。

何にせよ彼女の豊かな表情の一つを見られている、と。

洞窟の中に入った彼女は、全身が濡れた服装のうち、既にジャケットは脱いでいた。

雨で重さも圧し掛かることだろう。





「あ、アトリ………あの、一つお願いが」




「?」




「その、着替えたいのです。全身がずぶ濡れですので………」





そ、そういうことか!

しまった俺としたことが。

そのくらいは考えて当然かっ………!





黒ジャケットを脱いだ彼女を見ている場合などではなかった。

あれだけの雨を浴びてしまったのだから、ジャケットを通り越して中のシャツにも浸透している。

彼は彼女がそうしたいことに気付くのが遅れ、しかも彼女のその姿を見てしまっていた。

フォルテがそのように言いだすと、アトリは慌てて目線を逸らし、「確かにそうだそうだ、うん」などと早口で言って、すぐに洞窟の外へ出ようとする。

だが、外の世界はいまだに雨が降り続けている。

先程よりも強くなったか、と思ってしまうくらい。





「あ、いえ………外でなくても結構です。後ろを向いて頂きさえすれば、私は何も………」




「そ、そうだな」





自分が女性のそうした状況に疎いということにまた気付いては、それに恥じるアトリ。

彼女は彼女なりに答えてくれているのだろうが、迷惑をかけていないだろうかと少し気にもなる。

アトリはフォルテと距離を取り、少し洞窟の奥まで行く。

決して後ろは振り返らない。

大きさの岩に腰かけて座りながら、彼女の声がかかるその時を待つ。







「………」






自然と視線は洞窟の奥の暗闇へと行く。

まるで寝る間際に目を閉じた裏に見える世界のようだ。

真っ暗ではあるが、徐々にその暗闇にも目が慣れて行く。






「………」






ただの、真っ暗な空間だろう。

どこかに行き止まりがあるはずだ。

咲へ進めば何があるか分からないが、今は気にするべきではない。

これは単なる雨宿りで、明日になればここを離れるのだから。



だというのに。





「――――――――――――――――」






………なんだ、この感覚は。




まるで、憶えがあるような、そんな感覚。

どこかで見たことがあるような、感じたことがあるような、そんな既視感を思わせる。

見た目はただの洞窟で、中身も空っぽの空洞だろう。

そう思いつつも、その妙な違和感に憶えがあると思ってしまう。

いつか見たものか。

それともただの空想か。

何もかも分からないが、ただこの空間になぜか注目してしまう。

凝視し、注視し続ける。

自然と空間そのものに目だけでなく、意識も持っていかれそうになる。

分かっている。

この先を知る必要は無いはずなのに。

この憶えがありそうな既視感、感覚、空間は何を意味しているのだろうか――――――――――。





「アトリ」




「っ………!?」






何故かは分からない。

だがこの空間に意識を持っていかれ、そのままどこかへ連れて行かれそうな気がした。

その時、彼女がすぐ後ろから声をかけてくれた。

それに思わず驚き勢いよく彼女の方を振り返ると、彼女は少し驚いたような顔を見せた。

あまりにも驚いたその反応が、彼女にとっても不思議なものだったのだろう。

彼はというと、失いかけていた自らの意識を取り戻し、その違和感を離すように頭を振った。

だが、それでも気になるといえば気になる。





「………フォルテ。この先、何か妙なものを感じないか?」




「………?いいえ、特には。敵ですか?」




「いや、違う。それとは………」





アトリは、再び洞窟の奥を見た後、またすぐに彼女の顔を見た。

彼女も洞窟の奥へ目を凝らして見ているようだったが、その姿に変化はない。

どうやら彼女は何も感じていないらしい。

ということは、やはり気のせいなのだろうか………。

しかし。

それでもアトリは自らの違和感を拭い去ることは出来なかった。

もしこれが、何かを意味するものであったとしたら、気になるものだ。

洞窟は恐らく奥へ繋がっている。

そこには、何かがあるかもしれない。





「………戻りましょう、アトリ。食事にして、少しでも疲れを取らないと」




「………ああ。そうだな、そうしよう」





違和感は消え去らないまま、

夜は更に深まっていく。





………。





4-4. 自然の洞穴





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