第三夜〜道を往く〜
「フー、これでヨシっと。疲れたー!」
少年は大きな息を吐くと、巨大な皮張りのソファーに倒れこんだ。
ここは彼の部屋。彼が一人暮す部屋である。
テレビはプラズマハイビジョン、皮張りのソファーがあり、ベッドはとても広く、大の大人が3人寝てもまだ余裕のありそうな大きさである。そしてソレ以外にも少年の年齢での一人暮しに釣り合っていない高級そのものの家具が置かれているが、最もすごいのはそれ等の大きな家具を置いてなお余裕のある部屋の広さである。
彼のベッドには包帯の巻き終わった子猫が横たわっている。
「軽く俺の魔力を分けておいたし、後は・・・・体を冷やさないように暖めるか。」
そう言うと彼は子猫をそっと抱き上げ、寝床へ潜り込んだ。
「おやすみ・・・・。ふぁぁ。」
くー・・・・・
*** 「・・・・え゛?」
彼女は固まっていた。なぜならいきなり見知らぬ男に抱き締められて、見知らぬ場所で目を覚ましたのだから。
「ここ、・・え?何故?私は、生きているのか?」
少女は困惑気味に一人呟く。
己が何故生きているのか、ここは何処なのか、自分を抱いて寝ているこの男は何者なのか。
何もかもがさっぱりわからない。が、一つだけわかる事があった。
自分がこの状況を好ましいと思ってしまっている事。
そして、この腕の暖かさの中でもう少し、もう少しだけ眠っていたいと思ってしまっている自分がいる。
――たが、その思いは男の目覚めによって叶わぬものとなる。
「えっと・・おはよう?」少女は少年の声を聞いて思う、夢のなかで聞いた優しげな声を。
彼女は知らず、涙をこぼす。
初めて触れる人の暖かさ、やさしさに。
少年は戸惑う。
彼女があの子猫なのだと理解して。
しかしその不思議な在り様に、彼は戸惑い以上のものを抱かない。
そんなものは、関係ないとばかりに。
そうして、彼は出会う。
そうして、彼女は出会う。
少年は(少女は)少年と(少女と)、巡り会う。
それは、救済をもたらす人と悪魔の〜物語(辿る道)〜