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第二十四話 後始末

「今日はこれくらいにしておこうか」

「そうですね」


 エリュシオンを手に入れた私達は、それから迷宮アハトの第十七階層付近の魔物を狩り続けていた。この辺りは冒険者も殆ど来ないし、誰にも邪魔される事無く魔結晶が稼げるので良い狩場だった。

 そんな場所で連日魔結晶を集めていると、いつの間にか冒険者組合で換金した魔結晶の金額は金貨百枚を超え、他の冒険者からも注目されるようになっていた。いや、元から注目はされていたけど、最近は怯えた目で見られる事の方が増え、あまり声もかけられなくなった。

 まあ、その辺りは私にとって喜ばしい事なのでよしとしよう。ただ、他の人間が話しかけてこない分、アメリアが私を絶賛するので、同じくらいのランクの冒険者には憎しみと嫉妬が込められた目で見られる事も多くなってきた。

 今はまだ何も問題は起こっていないけど、そろそろ何か対策を考える必要があるかもしれない。


「それじゃあ、私はノイシュタットの図書館に行って来ます」

「分かった。それじゃあいつもの時間に迎えに行くから待っててね」

「はい、お姉さま」


 最近、アリスはノイシュタットの図書館に通う事が多くなり、私はその間、魔結晶を作ったり、新しい魔法の実験をしたり、一人で辺りをうろついたりしていた。

 どうやらアリスは今後の事を考えて、図書館で様々な知識を勉強しているようだ。口には出さないけど、たぶん守護者との戦いで何も出来なかったのが悔しかったんだと思う。

 因みに、図書館は入館料が銀貨十枚という結構なお値段だったけど、私がアリスに渡したお金は既に金貨八十枚を超えているので、問題ないようだ。


「サヤちゃん今日も可愛いね。どうぞ見ていってよ」

「はい、おじさん」


 私が今いるのは、お世話になっている壁紙や絨毯を売っているお店だ。

 最初は自分達の部屋だけでもコーディネートすれば良いと思っていたけど、お金に余裕が出来ると、色々な部屋の壁紙も変えたくなって、相当な量の壁紙や絨毯を購入していた。

 買っている物は高級品ではないので、一つ一つの金額は高くないけど、量が量なので、私はすっかりこの店のお得意様になっていた。

 因みに最初は各部屋とかの掃除が大変だと思っていたけど、エリュシオンにはお掃除ロボットもいて、絨毯を傷付けたりせず自動でゴミ掃除をしてくれる事が分かった。なので、何の心配もしなくて済んでいる。ああ、エリュシオンは本当に楽園みたいな場所だ。


「今日はこの花柄の絨毯を一つお願いします」

「あいよ。大きいけど今日も一人で運ぶのかい?」

「はい、力には自信がありますから」


 本当は異空間収納(アイテムストレージ)に入れるので、いくらでも買えるのだけど、あまり一度に買うと変に思われるかもしれないので、持ち運べる量に抑えて、適当な所で収納している。

 店員のおじさんは、私が頼んだ絨毯を丸めると、おまけと言って花柄のハンカチをくれた。私はお金を渡してお礼を言ってから立ち去ったけど、後ろの方ではおじさんが奥さんらしき人に、勝手な事をするなと怒られていた。可哀想に。


「サヤさん今日も綺麗ですね」

「そこのお嬢さん、ちょっとお茶でも」

「君、可愛いね――」

「すいません急いでますので」


 最近気が付いたのだけど、冒険者からは恐れられるようになっているけど、他の人からは前よりも声をかけられるようになっていた。その声をかけてくる時の目が、私でも分かるくらいに下心がにじみ出ているので、とても不快だった。

 ただ、アリスと一緒に過ごすうちに、そういった人間のあしらい方も学ぶ事が出来たので、今では一人でも問題なく街中を歩く事が出来ていた。

 そうして必要な物を買いながら街を歩いていると、一つの噂話を聞いた。


「聞いたか? またあの山賊共が出たらしいぞ」

「若い女ばかりを狙っている奴らだろ。困ったものだ」

「冒険者組合にはもう依頼が出されたらしいから、大丈夫じゃないか?」

「そうだな。依頼を受ける冒険者がいなければ、一週間で国が請け負ってくれる決まりだし、しばらくの辛抱だな」


 どうやら、この世界にも山賊というものはいるようだ。しかも、冒険者組合に討伐依頼が出されているらしい。

 今まで冒険者組合では魔結晶の換金ばっかりしてきたので気が付かなかったけど、討伐系の依頼があるなら、試しに請けてみるのも面白いかもしれない。

 最近は様々な魔物と戦うのにも慣れてきているけど、対人戦に関してはまだまだ経験不足だから戦っておきたい。

 ただ、今日はアリスとの約束の時間が迫っているので、受けるとしても明日かな。そう思いながらアリスの待つ図書館に向かうと、図書館の入り口にアリスと、見覚えのある女騎士の姿を見つける。


「お姉さま……」

「やあ、サヤ君。待っていたよ」


 その女騎士は、冒険者組合で出会ったマルグリットさんだった。

 そして、その横には二人の騎士が控えている。何かあったのだろうか。


「君に話を聞きたくて待っていたんだ。そうだね、エレノア教会で起こった事についてと言えばわかるかな」

「エレノア教会……」


 私にとっては完全に終わった出来事だったので忘れていたけど、あの出来事の後始末がまだ終わっていなかったようだ。

 そして、どんな事を聞かれるのかと警戒して身を硬くした私の手を、近寄ってきたアリスが優しく握ってくれる。それだけで私の不安は吹き飛んでいた。


「それで、どんなお話ですか?」


 うまく言い出すことが出来ない私に代わって、アリスが口を開く。それを見て、マルグリットさんは微笑を浮かべるが、他の二人の騎士は少し驚いた表情をする。


「実はね、エレノア教会のレコア司祭からの報告で、教会がオークの大群に襲われ、そのオークを撃退したサヤという娘が、その報酬としてアリスという少女を無理矢理連れ去り、奴隷の様な扱いをして苦しめているという訴えがあってね。その確認に来たんだ」

「奴隷って」

「……あの……司祭が」


 その話を聞いて、私よりも不快感を顕にしたのはアリスだった。まあ、アリスからすれば切り捨てたどうでもいい相手が、しつこく付きまとって来ている様に感じるのだろう。それは嫌にもなる。


「私はこの報告を聞いて、そのオークを撃退したのは間違いなく君だと思ったのだが、後半の話がどうしても納得が出来なくてね。事実確認をしたいんだ」

「我々はここであった事を正確に報告する為に控えている。真実を語ってくれる事を願う」


 どうやら後ろの騎士は、警察官さんとか刑事さんみたいな役割があるみたいだ。その辺の役割については私にとってどうでもいいので、あまり気にしない事にする。


「マルグリット様は、私がサヤお姉さまに奴隷の様な扱いを受けている様に見えますか?」


 アリスは見せ付けるように私の腕に自分の体を擦り付け、マルグリットさんを見つめる。この構図はなんというか、二人が私を取り合って口論しているようにも見えて興奮する。


「いや、全く見えない。君達はなんというか、本当に仲の良い姉妹の様だし、たまたま街中で見かけた時も、アリス君は幸せそうにしているように見えた。だから、エレノア教会で何があったのかを教えて欲しいんだ」


 そう言いながら、マルグリットさんは私を見つめる。マルグリットさんはきっと私の口から事情を聞きたいのだろうけど、正直私にはうまく説明できる自信が無かった。

 そうして私が困っていると、アリスが代わりに口を開く。


「マルグリット様、お姉さまはお優し過ぎて言い難い様ですので、私の口から説明してもよろしいでしょうか?」

「うむ、当事者である君が話す内容なら信用できるだろう。話してみてくれたまえ」

「ありがとうございます」


 アリスは礼儀正しく頭を下げ、その上でエレノア教会での出来事を語った。


「まず、百を超えるオークの大群からお姉さまがエレノア教会を救ってくださった事には間違いありません。ただ、その時のレコア司祭様の行動は許せるものではありませんでした」

「どういうことだ?」


 アリスは悲しそうな表情になりながら語る。


「レコア司祭様は、たまたま通りかかったお姉さまに、報酬を支払うので騎士様を救った上でオークを殲滅する様に依頼をしました。その時の状況を考えれば、教会に避難した生き残りを逃がす手伝いをして欲しいというのが妥当な依頼ではありましたが、お姉さまはお悩みになった上で、依頼通り戦う事を選びました」

「その時はまだ冒険者ですらなったというのに、勇敢な行動ではないか。それに比べてレコア司祭は……、通りすがりの一般人にそんな依頼をするとは……」


 アリスの話し方はうまい。事実を語りつつ、特定の人物の心象を悪くするような言い回しを選んで、自分達が有利になるように話を進めている。絶対に敵に回したくないタイプだ。


「勇敢なお姉さまは無理なその依頼も見事こなしました。正直言ってお姉さまはその戦いで死んでもおかしくない様な状況になっていましたが、私達の為に、命を懸けて戦って下さったのです」


 そう語るアリスは、まるで祈りを捧げる人間の様に清らかな雰囲気を纏っていた。その雰囲気に、後ろに控えていた騎士達も飲まれていく。


「しかし、レコア司祭様はそんなお姉さまに、全てが終わってからいきなり報酬は払わないと言い出したのです」

「何!」

「それは本当か!」


 アリスは私と司祭の会話を聞いていたのだから、その事も知っている。しかし、改めて聞いてみても、あの司祭のした事は本当に許せないと思う。だから私は無言で頷いた。


「それだけではありません。レコア司祭様はお優しいサヤお姉さまが、教会の人達が無事なら報酬は要らないと伝えると、今度は無償でエレノア教会の警護をしろと命じてきたのです」

「何だと……!」

「これは許される事ではありませんよ!」

「そうだな……」


 マルグリットさんはまだ冷静さを保っているようだけど、後ろの騎士達は怒りを顕にしつつ、私に同情の目を向けてくる。なんだか言いようの無い罪悪感を覚えた。


「その事を知った私は、このままではお姉さまが好き勝手に使われてしまうと思い、お姉さまの手を取り、一緒にエレノア教会から逃げ出す事にしたのです。正直、その日初めて会った方の為にそこまでするのは不安でしたが、お姉さまは本当にお優しくしてくれて、私は自分が間違っていなかったのだと思えました」

「それは……」

「なんと……」


 もはや後ろの騎士二人は、感動話で涙を流すタレントの様に話を聞き入っている。こんなので騎士が務まるのだろうか。

 私はこの国の将来が心配になった。


「では何故その事を予め報告しなかったのだ。訴える機会はいくらでもあっただろう」


 その状況でもマルグリットさんは冷静に痛い所を突いてくる。

 これがもし私に向けられた言葉なら、私は忘れてたとかお馬鹿な答えしか出来なかっただろう。でも、アリスはその問いにも冷静に返す。


「はい……、マルグリット様にでも訴えれば、お姉さまは正当な報酬を受け取り、全てが解決するのは分かっていました。でも……、でも……」

「アっ、アリス……!」


 そう話しながら、アリスはポタポタと涙を流す。突然の出来事に、騎士だけでなく私まで慌ててしまった。


「でも、正当な報酬が支払われてもっ……、教会から無断で逃げ出した私は……、私はその後、教会に連れ戻される事になって……。そうしたらもうっ、お姉さまに会えないって……ひっぐ……思って……。だからお姉さまに……言わないでって……ひっぐ……それで……」


 突然泣きだしアリスは、私の体を強く抱きしめて来る。そんな様子を見ているとこっちまで涙腺が緩んでしまう。どうしよう、泣きそうだ。


「お願いします! 私はお姉さまが大好きなんです……! 離れ離れになるなんて嫌……ひっぐ……嫌なんです……。許してください……。連れ戻さないで下さい……。お願いします……ひっぐ……一緒にいさせて下さい」

「アリス……」


 私は泣きじゃくるアリスの体を抱きしめて、一緒に泣き出していた。よくよく考えてみると、この話は捏造されたもので、少なくとも私が泣く内容では無いのだけど、完全のその場の雰囲気に飲まれていた。


「キルヒアイゼン様……」

「くっ……レコア司祭め! 許せん!」

「ふむ……」


 後ろの騎士二人は完全にこちらの味方をしてくれているようだ。こうなると、あとはマルグリットさんがどういった行動に出るのかが問題になってくる。そう思っているとマルグリットさんが口を開く。


「私はこの話に嘘は無いと判断し、レコア司祭の方は騎士団の方で厳しく処分をすると約束する。そして、アリス君については、君が望むなら国から正式に身柄をサヤ君に譲るよう進言しよう。これでどうだ」

「マルグリット様……! ありがとうございます……! ありがとうございます……!」

「アリス……! 良かった……。本当にありがとうございます。マルグリットさん」


 どうやら後ろの二人はついて来ただけで、決定権はマルグリットさんにあったようだ。ならあの二人はいらないのではないかと思うけど、きっと色々と細かい決まりがあるのだろう。

 まあ、その話はともかく、こうして私とアリスは正式に仲間として認められ、これからは後ろめたい事無く一緒に過ごす事が出来るようになった。

 その後、マルグリットさんと別れた私達は、そのままエリュシオンへと帰る事にした。そして、他の人間がいなくなった所でアリスが吐き出すように語り始めた。


「クソッ! あの腐れ司祭が面倒な事させやがって……です。ああ、久しぶりに嘘泣きなんてした所為で疲れたし、目が痛くなってしまいました。お姉さま、ちょっとマッサージしてくれません? 私は少し寝るんで」

「うっ、うん。分かったよアリス」


 私は自分も女だけど、女って怖いなと心から思ってしまった。


   ◆◆◆


■女騎士マルグリットが見る世界


「以上が報告となる」


 私はサヤ君とアリス君の話を聞いた後、その内容をノイシュタット騎士団長であるヴェルナーに報告していた。随伴していた騎士二人については、あの場でした内容で決着をつける事を約束して下がらせた。全く、こういった時に相手に感情移入してしまうようでは、今後この様な仕事はあの二人には任せられないな。


「それでマリーはどう思う」


 マリーというのは私の愛称だ。目の前にいるヴェルナーという男は私の幼馴染であり、二人っきりの時だけこの呼び方をしてくる。それが私には心地よく、いつも報告の際は一人で向かうようにしていた。


「まあ、全てが真実ではない事は確かだな。そもそも連れ戻されたくないなら、身分を偽るだとか、遠くの都市を拠点にするだとかやり様はいくらでもある。あれは不測の事態に遭遇して、その場で思いついた言い訳か何かだろう」

「そうなるとそのアリスという娘はよく頭が回る子だな」

「そうだな、私もそう思った」


 例え見え透いた嘘であろうとあんな風に話されては、なかなかその事を指摘し辛い。あれは演技のはずだが、私でさえ思わず流されるところだった。


「それで、マリーは何故二人を逃がしたんだ」

「それは我々に与えられた特別任務の関係上、そうするしかなかったからだ」

「なるほど。まあ、正しい判断だ。特別任務の事を考えたらそれ以上の手は無い。それでは、エレノア教会の司祭様には犠牲になって頂くとしようか」

「はっ!」


 我々に与えられた特別任務、それは異世界人と呼ばれる存在を発見し、観察する事にある。

 異世界人というのはこの世界において、様々な事件を巻き起こす中心人物であるが、その異世界人に干渉した国は、目覚しい発展を遂げるか、滅びるかのどちらかの結末を迎える事になっている。

 その為、我々は異世界人を迅速に発見し、尚且つ積極的に干渉せず、観察しやり過ごす事を選んでいる。だから、我々はサヤという少女が明らかに異常な行動を取っていても見過ごしているのだ。

 本当なら今回の件だって、適当な理由を付けて事前にもみ消したかったが、あのレコアという司祭はそれなりに発言力のある司祭だったので、当事者に事情を聞かずに終わらせる事が出来なかったのだ。

 まったく、こんな面倒な事はもうしたくない。こんな事なら初めて会った時に、適当な理由を付けて追い返せばよかった。まあ、それが出来なかったのは、その時に見抜けなかった私の責任であるから、仕方が無いのだがな。


「それにしても、トロイメライのキールから報告を受けた時は驚きを通り越して笑ってしまったよ。もう少しマシな言い訳があるだろうに」

「そうだな。恐らくだがサヤ君はあまり頭が回らないタイプなのだろう」

「それはバランスが取れていて良い事だ」


 ヴェルナーが話しているのは、サヤ君がトロイメライで、ある魔道具を買った時の報告だ。

 トロイメライの店長であるキールには予め、新人冒険者がいればそれとなく話を聞き、おかしな所があれば報告をする様に命令してあるのだ。

 そして、キールから報告されたのは、サヤという冒険者がとんでもない魔結晶を持っていたという話だ。

 まあ、それだけなら誰かから譲られた可能性があるので信憑性は低かったが、キールが魔結晶を無尽蔵に生み出せる力でも持っていない限り、絶対に使おうとは思えない欠陥品の魔道具を売りつけて様子を探ったところ、平然と使いこなしている事が確認出来たそうだ。

 そこに、尋常では無い速度で魔結晶の換金を行っているだとか、見た事もない魔法を使っているのを見ただとかの非常識な報告が入れば異世界人である事は間違いない。

 その為、騎士団でも上位に位置する人間には、既にサヤ君が異世界人である事が知らされており、積極的に関わらないようにと指示がされている。

 それにしても、彼女には自分が異質な存在である事を隠す気があるのだろうか。あれだけ派手に動かれては、隠す方も大変だ。もっと、自重して頂きたい。


「しかし、本当に干渉しないという選択は正しいのだろうか。もしかするとこうして干渉しないように行動している事自体が、干渉している事になるのではないか。いや、そもそも今回の事で干渉したとみなされてしまいもう手遅れなんて事も……」

「そんな事考えても俺達に分かる訳無いだろ。俺達は国に命じられた通りに行動するしかない。少なくとも何かが起こるまではな」

「ふむ、そうだな」


 まあ、他の国々が異世界人がいる事に気が付いていない状況で、我々はそれが誰で、どこにいるのかまで特定している。今はそれだけでも十分優位に立っていると思うべきだろう。


「んじゃ、報告は以上って事で、このあとはどうする? いつもの所に飲みに行くか?」

「いや、まだ仕事が残っているのでそちらに向かわせてもらう」

「了解。それじゃあ、先にベッドを暖めておいてやるから早く帰ってこいよ、マリー」

「ふふっ、分かった」


 そうしてヴェルナーへの報告を終わらせた私は、残りの職務を終わらせる為、冒険者組合へと向かった。その道すがら私はあの二人の事を思い浮かべた。

 異世界人、それは突如としてこの世界に現れ、災厄をもたらす悪魔とも、新時代を築く英雄とも呼ばれる存在。しかし、私の目にはあの少女がそんな大層な存在には見えなかった。


「さて、神は彼女にどんな試練を与えるのだろうな」


 私は、その試練にこの国が巻き込まれない事を願わずにはいられなかった。


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